コウテイペンギン

海鳥類

コウテイペンギンは、世界でいちばん大きなペンギンです。南極大陸だけにすみ、なんと真冬の氷の上で子育てをします。オスが2か月以上も飲まず食わずで卵を温めぬく、けんめいな子育てで知られています。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:ペンギン目 Sphenisciformes
  • 科:ペンギン科 Spheniscidae
  • 属:コウテイペンギン属 Aptenodytes
  • 種:コウテイペンギン Aptenodytes forsteri

和名・英名

  • 和名:コウテイペンギン
  • 英名:Emperor penguin

名前の由来

「コウテイ(皇帝)」の名は、その堂々とした大きさから付けられました。同じ属には、次に大きいオウサマ(王様)ペンギンがいます。皇帝と王様――大きさを競うように、りっぱな名前が並んでいます。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体長 約100〜130cm・体重 約30〜40kg(ペンギン最大)
分布南極大陸とそのまわりの氷上(固有)
生息環境南極の海氷・棚氷の上と、まわりの海
食べ物魚・オキアミ・イカなど(海の中で捕る)
寿命野生で20年ほど
保全状況IUCN:絶滅危惧(EN)※海氷の減少で2026年に引き上げ

世界最大のペンギン

大きな体と、首もとの黄色

コウテイペンギンは、立つと1mを超える大きさで、体重は30〜40kgにもなります。現生の鳥の中でも、とくに重い種の一つです。立った高さは、小学校低学年の子どもと同じくらいと考えると、その大きさが想像できます。頭から背中は黒く、おなかは白、そして首もとには橙色から黄色へと変わる美しいグラデーションが入ります。この気品ある姿が、「皇帝」の名にふさわしい風格を感じさせます。

南極のコウテイペンギン
南極の成鳥。首もとの黄色がわかる(Ian Duffy, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

−40℃に耐える羽と脂肪

コウテイペンギンがすむ南極の冬は、気温が−40℃を下回ることもあります。それでも生きられるのは、体をおおう短くびっしりした羽と、その下の分厚い皮下脂肪のおかげです。脂肪は体の中心で3〜4cmにもなり、寒さと、長い絶食にそなえた「たくわえ」にもなっています。

真冬の南極で子育てする

氷の上だけで暮らす

ほかのペンギンは岩場や巣穴で繁殖しますが、コウテイペンギンは氷の上だけで一生を送ります。繁殖地は、海岸から数十kmもはなれた氷の上にできることもあります。天敵の少ない氷の上は安全ですが、氷がとけたり割れたりすると、子育てが失敗してしまう危うさもあります。

コウテイペンギンの親子
親鳥とひな(スノーヒル島)(Ian Duffy, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

オスが2か月、飲まず食わずで卵を抱く

コウテイペンギンは、冬のはじめに繁殖を始める、世界でただ一種の鳥です。メスは5月ごろに1個の卵を産むと、すぐに海へ長い食事の旅に出ます。残されたオスは、卵を足の上にのせ、おなかの皮のひだ(抱卵嚢)でつつんで温めます。その間、約65日ものあいだ何も食べず、体重の4割以上を失う個体もいます。まさに命がけの子育てです。

みんなで温め合う「ハドル」

吹雪の中でオスたちが生きぬくために編み出したのが、「ハドル」というしくみです。数百〜数千羽が体をぴったり寄せ合い、大きなかたまりをつくって暖をとります。しかも、外側にいた個体と中心にいた個体が少しずつ入れかわり、みんなが順番に暖まれるようにしています。助け合って冬を越す、すばらしい知恵です。

7月ごろに卵がかえると、海から戻ったメスが、胃の中の餌を吐き戻してひなに与えます。こうして両親が交代しながら、きびしい南極でひなを育てあげるのです。

ひなはみんなで育つ

少し大きくなったひなは、親のおなかの下をはなれ、「クレイシュ」というひなだけの集まりをつくります。かたまり合って寒さと敵から身を守るあいだ、両親はかわるがわる海へ通い、餌を運びます。やがて灰色の綿毛が、水をはじく大人の羽に生えかわると、12月ごろにひなは初めて海へ入ります。数年たって大人になると、こんどは自分が親として繁殖地に戻ってくるのです。

泳ぎと潜水の名人

500mより深くもぐれる

コウテイペンギンは、鳥の中でもっとも深く、もっとも長くもぐれる種です。記録では、水深500mを超える深さまで潜り、20分以上も水中にとどまったことが確認されています。うすくなった空気でも活動できる血液や、心拍をおさえるしくみなど、体じゅうが深い潜水に合わせて進化しています。氷の下の暗い海で、南極の魚やオキアミ、イカをつかまえます。暗い深海でも獲物を見つけられるよう、目はうすい光にもよく反応するといわれます。子育て中は、繁殖地と海のあいだを何度も往復して、餌を運びます。

コウテイペンギンの潜水の深さの図
潜水の深さの図。500mを超える深さまでもぐる(Goran tek-en, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

せまる危機

コウテイペンギンにとって、いちばんの心配は地球温暖化です。繁殖には安定した海氷が欠かせません。その氷が早くとけたり、うまく張らなかったりすると、ひなが育つ前に流されてしまいます。実際に、世界で2番目に大きなハレー湾のコロニーでは、大きな失敗が起きました。2016年からの数年間、海氷が早くこわれ、数千羽ものひなが失われたのです。こうした心配から、IUCNレッドリストでは2026年、ランクが「絶滅危惧(EN)」に引き上げられました。南極の氷とともに生きるこのペンギンは、地球の変化をうつす鏡でもあります。

知っておきたい豆知識

氷の上をすべって進む

大きな体で歩くのは大変です。急ぐときは、おなかを氷につけて、そりのようにすべって進みます。これは「トボガン」と呼ばれる移動のしかたです。後ろ足とつばさで氷をけって、意外なスピードで進みます。よちよち歩きだけでなく、こんな移動の技も持っているのです。

日本でも会える

コウテイペンギンは、世界でも飼育している施設がとても少ない、貴重なペンギンです。日本では、和歌山県のアドベンチャーワールドと、名古屋港水族館で会うことができます。南極まで行かなくても、あの大きな姿を間近で見られるのは、とても貴重な機会です。

映画にもなった子育て

コウテイペンギンの過酷な子育ては、映画『皇帝ペンギン』(原題 March of the Penguins)などでえがかれ、世界じゅうの人々に感動をあたえました。真冬の南極を歩き、命をつないでいくその姿は、多くの人の心に残っています。

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参考

  • IUCN Red List: Aptenodytes forsteri(2026年に絶滅危惧ENへ引き上げ。海氷減少による将来予測)
  • Wikipedia「Emperor penguin」英語版(ハレー湾コロニーの繁殖失敗2016〜18年・潜水記録・IUCN評価の推移)

画像出典

アイキャッチ画像: Christopher Michel, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

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