ロドリゲスドードーは、インド洋のロドリゲス島だけにすんでいた、飛べない大きな鳥です。じつは、あの有名なドードーのいちばん近い親せき(姉妹のような種)でした。ドードーとちがって首も脚も長い、すらりとした体つきで、オスの翼には戦うための大きなこぶがありました。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:ハト目 Columbiformes
- 科:ハト科 Columbidae
- 属:ペゾファプス属 Pezophaps
- 種:ロドリゲスドードー Pezophaps solitaria
和名・英名
- 和名:ロドリゲスドードー(別名:孤独鳥)
- 英名:Rodrigues solitaire(ロドリゲス・ソリテア)
名前の由来
英名のsolitaire(ソリテア)は「ひとりでいるもの」という意味です。この鳥がたいてい単独で行動していたことから、そう名づけられました。日本語では「孤独鳥(こどくちょう)」とも呼ばれます。属の名前 Pezophaps は「歩くハト」という意味で、飛ぶ力を失い、地上を歩いて暮らした姿をあらわしています。ドードーとは属こそ違いますが、同じ祖先から分かれた、いちばん近い仲間です。いま生きている鳥では、美しいニコバルバトがもっとも近い親せきにあたります。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体高 約90cm・体重 オスは最大約28kg(メスはずっと小さい) |
|---|---|
| 分布 | インド洋のロドリゲス島だけ(固有種)※絶滅 |
| 生息環境 | 島の森や、やや乾いた林 |
| 食べ物 | 果実・種・葉など(胃石で消化を助けた) |
| 絶滅した時期 | 18世紀後半(1760年代ごろまでに絶滅) |
| 絶滅の原因 | 人間による狩猟、持ちこまれた外来動物 |
化石と、残された骨

骨は洞くつから見つかった
ロドリゲスドードーの骨は、ロドリゲス島で19世紀の中ごろから見つかってきました。とくに石灰岩の洞くつや湿地から、状態のよい骨が多く出ています。大腿骨や胸の骨、頭の骨など、いくつもの個体の骨が知られています。標本の多くはイギリスの博物館などに保管され、全身の復元骨格は、それらの骨を組み合わせて作られています。胸の骨や脚の形からは、地上で歩いて暮らす体にしっかり適応していたことがわかります。
散らばった記録を、集め直す
この鳥の研究でも、初めのころに集められた標本や記録の一部が、行方不明になったり非公開になったりしてきました。地元の人が見つけたまま記録されなかった骨や、個人が集めて流出した標本もあります。近年では、昔の文献と標本の情報をまとめてデジタルで保存する取り組みが進んでいます。これにより、系統や形、分布をもう一度くわしく調べ直せるようになってきました。
すがたと、オス・メスの違い

ドードーと違う、すらりとした体
ロドリゲスドードーは、ドードーと同じく飛べない大きな鳥ですが、体つきはかなり違います。首も脚も長く、すらりと立った姿をしていました。ドードーのようなずんぐりした見た目ではなく、もっと引きしまった体だったのです。体高は90cmほどで、ハクチョウくらいの大きさでした。脚は長くて力強く、まっすぐ立って歩くのに向いた骨格をしていました。
オスはメスよりずっと大きい
この鳥のおもしろい特徴が、オスとメスの大きさの違いです。ロドリゲスドードーは、オスがメスよりもずっと大きく、体重はオスで最大28kgにもなりました。メスはそれよりかなり小さかったのです。鳥の中でも、これほどオスとメスの差が大きい例はめずらしく、この差は繁殖やなわばりの争いと関係していたと考えられています。翼は短く退化していましたが、胸の骨は大きく発達していました。
翼で戦い、ひとりで暮らす

翼のこぶは、戦うための武器
マスケット弾ほどの大きなこぶ
ロドリゲスドードーのいちばんおどろく特徴が、翼にありました。オスもメスも、翼の付け根に、マスケット銃の弾ほどの大きな骨のこぶを持っていたのです。こぶはオスのほうが大きく、いちばん大きなもので直径3cmを超えました。
大きな音を鳴らして戦った
このこぶは、なわばりに入ってきた相手と戦うための武器でした。せまい島では食べ物や場所が限られていたため、たがいにはげしく争ったのです。戦うときには翼を勢いよく動かし、遠くまで聞こえる大きな音を鳴らしたと記録されています。
ひとりで歩き、木の実を食べる
ロドリゲスドードーは、地上を歩いて暮らす鳥でした。名前のとおり、たいていは単独か、小さな家族で行動していたようです。飛ぶことはできず、活動する範囲もあまり広くありませんでした。食べ物は、果実や種、葉などの植物が中心です。飲みこんだ小石(胃石)を胃の中に持ち、かたい木の実などをすりつぶして消化を助けていました。じょうぶで少し曲がったくちばしで、地面の植物を上手に食べていたと考えられています。
進化と、ドードーとの関係

ドードーの、いちばん近い仲間
ロドリゲスドードーは、じつはハトの仲間です。系統をたどると、モーリシャス島のドードーと同じ祖先から分かれた、いちばん近い種であることがわかっています。その祖先は、インド洋をこえてマスカリン諸島にたどり着いた、飛べるハトの仲間でした。いま生きている鳥では、ニコバルバトがもっとも近い親せきです。ドードーとロドリゲスドードーは、いわば「いとこ」のような関係の鳥なのです。
島で飛ぶのをやめた鳥たち
マスカリン諸島のように、天敵の少ない島では、飛ぶ力を保つ必要が弱くなります。食べ物が豊かで敵もいないと、鳥は飛ぶのをやめ、大きく育つことがあります。ロドリゲスドードーもドードーも、別々の島で、それぞれこの道をたどりました。属が違うのに、よく似た「飛べない大きな鳥」になったのです。これは、島という特別な環境が生き物の進化に強く影響することを示す、よい例とされています。
ドードーとの違い
見た目は似ていますが、ロドリゲスドードーとドードーには違いもあります。ロドリゲスドードーはより細身で脚が長く、地上で立って歩く暮らしに強く適応していました。いっぽうドードーは、脚が短くて、がっしりした体つきです。こうした違いは、ロドリゲス島とモーリシャス島の環境の違いから生まれた、それぞれの進化の結果だと考えられています。
なぜ絶滅してしまったのか
人間が来て、島が変わった
17世紀の後半、ヨーロッパ人がロドリゲス島にやってきて、住みついたり開拓を始めたりしました。森が切りひらかれ、火が入れられ、ロドリゲスドードーの暮らす場所は急に小さくなっていきました。食べ物になる植物も減っていきます。この鳥は人間という存在を知らず、こわがる本能もなかったため、かんたんに捕まえられてしまいました。
ネコやブタが、卵とヒナを襲った
人間といっしょに島に持ちこまれたネズミ・ブタ・ネコなどの動物は、地面に作られたロドリゲスドードーの巣をおそい、卵やヒナを食べるようになりました。外から来た植物が増えて、食べ物をめぐる争いも激しくなります。こうしたいくつもの原因が重なって、ロドリゲスドードーは子どもを育てられなくなり、短いあいだに絶滅へと向かってしまいました。
ドードーより、少し長く生きのびた
ロドリゲスドードーの最後の記録は、18世紀の初めごろにさかのぼります。ふつうは1760年代までには絶滅したと考えられており、ドードーよりも少し長く生きのびたようです。ただし、当時の記録は断片的で、正確な絶滅の年をつきとめる文献は残っていません。多くの情報が、島をおとずれた人の観察に頼っている点に注意が必要です。
観察記録と、その意味

ルゲーが残したくわしい記録
ロドリゲスドードーには、めずらしくくわしい観察記録が残っています。1691年から1693年にかけて、フランス人のフランソワ・ルゲーが、仲間とともにロドリゲス島に流れ着いて暮らしました。彼はこの鳥の見た目や行動、なわばり争いのようすまで、こまかく書き残したのです。当時の動物の記録として、とても貴重な資料になっています。ドードーが想像で大げさにえがかれたのと違い、ロドリゲスドードーは、この生きた観察のおかげで正しい姿が伝わりました。
記録は、骨で裏づけられた
ルゲーの記録は、長いあいだ「話を大きくしているのでは」と半分うたがわれていました。ところが後年、見つかった骨としらべ合わせたところ、多くの記述が正しいと確かめられたのです。オスとメスの大きさの違いや、翼で戦う行動についての記述は、骨からの推定とぴったり一致しました。ただし一部には物語風の大げさな表現もあるため、すべてをそのまま信じるのは避ける必要があります。
文化・教育の中のロドリゲスドードー
絶滅した鳥の象徴のひとつ
ロドリゲスドードーは、ドードーと並んで、絶滅した飛べない鳥の代表のひとつです。昔は知名度でドードーにおよびませんでしたが、近年は、島の進化や絶滅を学ぶ事例として注目されています。じつはこの鳥は、絶滅した鳥の中で唯一、その名がつけられた星座があったことでも知られます。「ソリテア(Turdus Solitarius)」という星座で、いまは使われていませんが、この鳥がいかに人々の記憶に残ったかを物語っています。
博物館の教材として
いくつもの自然史博物館では、ロドリゲスドードーの骨格のレプリカや解説が展示されています。生き物の多様性や、絶滅がどう起こるのかを伝える教材として役立っているのです。島という特別な環境での進化や、人間の活動との関係を学ぶうえで、とてもよい題材とされています。ドードーとくらべながら見ると、島ごとの進化の違いがよくわかります。
創作にはあまり登場しない
ロドリゲスドードーは、ドードーとくらべると、物語やアニメなどに登場する機会はずっと少ない鳥です。ただし、自然のドキュメンタリーや専門的な図鑑では、ドードーの仲間として紹介されることがあります。その独特の姿や生態が知られるようになれば、これからもっと有名になっていくかもしれません。知る人ぞ知る、魅力のある絶滅鳥です。
これからの研究と課題
骨をデジタルで残す
21世紀に入ってから、残された骨を立体スキャンや写真で記録し、デジタルで保存する取り組みが進んでいます。これによって、実物をいためずに、世界中の研究者が同じ資料を調べられるようになりました。貴重な骨を守りながら研究を続けるための、大切な土台づくりです。
ドードーとくらべて学ぶ
ロドリゲスドードーとドードーを見くらべることは、近い仲間がどう別々に進化したかを知る手がかりになります。骨の太さや、脚や胸の形、脳の大きさなどをくらべる研究が進められています。共通の祖先をたどることで、ハトの仲間の中での位置づけも、少しずつはっきりしてきました。まだ謎の多い鳥ですが、これからの研究が期待されています。



参考
- IUCN Red List「Pezophaps solitaria」(絶滅EX)
- Wikipedia「Rodrigues solitaire」英語版(ドードーの最近縁=姉妹種/現生ではニコバルバトが最近縁/ハクチョウ大で強い性的二形=オスは体高約90cm・体重最大28kg/翼にマスケット弾大の骨のこぶがあり戦いに使った/胃石で果実・種を消化/François Leguatが1691〜1693年に詳しく観察/18世紀後半に絶滅/絶滅鳥で唯一かつて星座になった)
- François Leguat『東インド諸島への新航海』(1708年)=ロドリゲス島で本種を観察した一次記録
画像出典
アイキャッチ画像: Frederick William Frohawk, Public domain, via Wikimedia Commons


