ケープペンギンは、アフリカ大陸にすむ、ただ一種のペンギンです。「アフリカペンギン」とも呼ばれ、南アフリカやナミビアの海岸で暮らします。ロバのような大きな鳴き声や、目の上のピンクの模様が特徴です。かわいらしい人気者ですが、今その数は急速に減り、ペンギンの中でもっとも絶滅が心配されています。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:ペンギン目 Sphenisciformes
- 科:ペンギン科 Spheniscidae
- 属:フンボルトペンギン属 Spheniscus
- 種:ケープペンギン Spheniscus demersus
和名・英名
- 和名:ケープペンギン
- 英名:African penguin / Cape penguin(black-footed penguin / jackass penguin)
名前の由来
和名の「ケープ」は、南アフリカの喜望峰(ケープ)のあたりにすむことに由来します。属名のSpheniscus(スフェニスクス)は「くさび」という意味で、細くとがったつばさの形をあらわしています。種小名のdemersus(デメルスス)は「もぐる」という意味です。英名では、足が黒いことから「black-footed penguin(黒足ペンギン)」とも呼ばれます。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約60〜70cm・体重 約2.2〜3.5kg(中型) |
|---|---|
| 分布 | 南アフリカ・ナミビアの海岸と沖の島々 |
| 生息環境 | 温帯の岩場・砂浜の海岸と、まわりの海 |
| 食べ物 | イワシ・カタクチイワシなどの小魚・イカ(海の中で捕る) |
| 寿命 | 野生でおよそ10〜20年 |
| 保全状況 | IUCN:深刻な危機(CR=近絶滅) |
アフリカにすむ唯一のペンギン
目の上のピンクと胸の黒い帯
目の上のピンクは「体を冷やす」しくみ
ケープペンギンの顔でいちばん目立つのは、目の上にあるピンク色の部分です。これは、暑さから体を守るための大切なしくみ。気温が上がると、ここに流れる血がふえてピンクが濃くなり、血を冷やして体温を下げるのです。あたたかいアフリカにすむペンギンならではの工夫です。
指紋のような胸の帯と斑点
胸には、逆さのU字を描く黒い帯が1本あります。おなかの黒い斑点は1羽ずつ模様が違い、人間の指紋のように、個体を見分ける手がかりになります。また、海水を飲んでも平気なように、目の上の腺から余分な塩を体の外へ出すこともできます。

フンボルト・マゼランとの見分け方
ケープペンギンは、同じフンボルトペンギン属のフンボルトペンギンやマゼランペンギンととてもよく似ています。見分けるコツは、胸の黒い帯の数です。ケープペンギンとフンボルトペンギンは帯が1本ですが、マゼランペンギンは帯が2本あります。ケープとフンボルトは、くちばしの付け根のピンク色の広さなどで見分けます。3種はすむ場所も違い、ケープはアフリカ、ほかの2種は南アメリカにすんでいます。どれもよく似ているので、まず胸の帯の数を見るのが、いちばんかんたんな見分け方です。
ロバみたいに鳴く「ジャッカスペンギン」
ロバのような大きな鳴き声
ケープペンギンは、とても大きな声で鳴くことでも知られています。その声が「ヒーホー」と鳴くロバ(英語でjackass)にそっくりなことから、英語では「ジャッカスペンギン」とも呼ばれています。この鳴き声は、仲間どうしの合図・なわばりのアピール・つがいの相手さがしなどに使われます。じつはこの声には3種類あり、なわばりを守る声・相手をさそう声・海と陸にはなれた相手を呼ぶ声を、場面で使い分けています。にぎやかなコロニーでは、あちこちからロバのような大合唱がひびきわたります。
毎年同じ相手と、石の巣で子育て
ケープペンギンは一度つがいになると、毎年同じ相手と同じ場所にもどって子育てをします。巣は、砂や岩のあいだ・掘った穴の中などにつくり、2個の卵を産んで育てます。
ボルダーズビーチと日本の動物園で会える
南アフリカのケープタウン近くにある「ボルダーズビーチ」は、ケープペンギンのコロニーがある有名な観光地です。白い砂浜や大きな岩のあいだで、野生のケープペンギンを1mほどの近さで観察でき、世界中から人が集まります。日本でも、上野動物園をはじめ全国の多くの動物園や水族館で飼育されていて、間近でその姿を見ることができます。日本の園館は、この絶滅が心配される種を守り、ふやすための繁殖にも力を入れています。

絶滅の危機にあるペンギン
ペンギンでいちばん絶滅が心配
ケープペンギンは今、ペンギンの中でもっとも絶滅が心配されている種です。19世紀のはじめには数百万羽がいたとされますが、その後、数は大きく減り続けました。産業が始まる前とくらべると、その数は95%も減ってしまったといわれています。2023年には、国際的なレッドリストで、最も危険なランクの一つ「深刻な危機(CR)」に指定されました。このままの減り方が続けば、近い将来、野生ではほとんど見られなくなるおそれがあると心配されています。
減少の原因と保護の取り組み
数が減った原因は、いくつも重なっています。人が魚をとりすぎて、えさのイワシが減ったこと。巣に使っていたグアノ(ふんが積もったもの)を人が持ち去り、巣がつくれなくなったこと。さらに、海の環境の変化も追いうちをかけています。今、南アフリカでは繁殖地の近くでの漁を制限するなど、この小さな海鳥を守るための取り組みが進められています。暑さや天敵からヒナを守るために、人工の巣箱を置く工夫も行われています。かわいいだけでなく、その未来をいっしょに考えたいペンギンです。



参考
- IUCN Red List: Spheniscus demersus(深刻な危機CR・2023年にランク上昇/産業前比95%減)
- Animal Diversity Web「Spheniscus demersus」(ジャッカスの由来=ロバのような声/鳴き分け=yell・bray・haw/幼羽から成鳥羽まで約3年)
- Wikipedia「African penguin」英語版(アフリカ唯一のペンギン/目の上のピンク=体温調節/胸の帯は1本・斑点は指紋のよう/jackass=ロバの鳴き声/ボルダーズビーチ/漁業・グアノ採取による減少)


