カバは、アフリカの川や湖にすむ大型の草食動物です。昼のあいだは水の中でのんびり過ごし、夜になると陸に上がって草を食べます。おだやかそうに見えますが、じつはアフリカでもっとも危険な動物のひとつに数えられています。
分類と学名
- 界:動物界
- 門:脊索動物門(せきさくどうぶつもん)
- 綱:哺乳綱(ほにゅうこう)
- 目:鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)
- 科:カバ科
- 属:カバ属(Hippopotamus)
- 種:カバ Hippopotamus amphibius
英名は Hippopotamus(ヒポポタマス)で、古代ギリシャ語の「ヒッポス(馬)」と「ポタモス(川)」を合わせた「川の馬」という意味です。漢字でも「河馬(かば)」と書き、やはり「川の馬」を表しています。学名の amphibius は「水陸両方で暮らす」という意味で、カバの生き方をよく表しています。
カバ科の動物は、今このカバと、小型のコビトカバの2種だけです。どちらもアフリカにすみますが、大きさも暮らし方もかなり違います。
基本データ
| 体長 | 約3.3〜5.0m |
| 体重 | オス約1,500〜3,000kg(メスはやや小さい) |
| 分布 | アフリカのサハラ砂漠より南 |
| すみか | 川・湖・湿地などの水辺 |
| 食べもの | 草(1日30〜40kg) |
| 活動時間 | 昼は水中で休み、夜に陸で草を食べる |
| 保全状況 | 危急種(VU/IUCN) |
大人のカバは体重1.5〜3トンにもなります。これはゾウ・サイに次いで、陸の動物では3番目に重い大きさです。丸太のような太い体に、みじかい4本の足がついています。
カバのからだのつくり

陸で3番目に大きい草食動物
カバは、ゾウとサイに次いで陸で3番目に大きい哺乳類です。体はほとんど毛がなく、皮膚はとても厚く丈夫にできています。足がみじかいのは、水の中では体重が軽くなり、太い足で体を支える必要が少ないからだと考えられています。
大きく開く口と長い牙

カバの口は、なんと150度ちかくまで大きく開きます。下あごには長い牙(犬歯)があり、これは一生のびつづけます。この牙は草を食べるためではなく、おもに相手をおどしたり、なわばりをめぐって戦ったりするときの武器です。あごには、口を大きく開けても皮ふが裂けない特別なつくりがあります。
目・鼻・耳が頭の上にある

カバの目・鼻の穴・耳は、頭の上のほうに集まっています。そのため、体を水にしずめたままでも、目と鼻だけを水面に出してまわりを見わたせます。水にもぐるときは、鼻の穴と耳をぴたりと閉じることができます。水中で暮らすのにぴったりの顔なのです。
水の中の暮らし

昼は水中、夜に草を食べる
カバは昼のあいだ、川や湖の中でほとんど過ごします。水にひたっていると、強い日ざしから皮ふを守り、体温を上げすぎずにすむからです。日がしずむと陸に上がり、夜のあいだに3〜5kmも歩きながら草を食べます。1日に食べる草は30〜40kgにもなります。
じつは泳げない? 水の底を歩くカバ
水にうかず、底をけって進む
水辺で暮らすカバですが、じつは魚のようにすいすい泳ぐわけではありません。骨が重く体の重心が低いため、水にうきにくく、底にしずみます。そこでカバは、水の底を歩いたり、底をけってジャンプするように進んだりします。深い水の中を、地面の上のように移動しているのです。
ねむったまま息つぎできる
もぐっていられる時間は、ふつう5分ほどです。ねむっているときでも、体が自然に水面までうかんで息をし、またしずむという動きをくり返します。無意識のうちに呼吸ができる、水中生活のための仕組みが備わっています。
陸では時速30kmで走る
のっそりして見えるカバですが、おこると陸の上をものすごい速さで走ります。みじかい距離なら時速30kmほどで走れると言われ、全力で走る人よりも速いことがあります。体が重いので長くは走れませんが、この意外な速さが、カバを危険な動物にしている理由のひとつです。
草を食べる暮らし
大きな牙でも、食べるのは草だけ
あんなに大きな牙を持っているのに、カバは肉を食べません。牙はあくまで戦うための武器で、食事にはほとんど使わないのです。食べるのは、地面に生えたみじかい草です。カバは大きなくちびるで草をはさみ、引きちぎるようにして口に運びます。若くてやわらかい草を好みます。
胃の中で草を発酵させる
草はとても消化しにくい食べものです。そこでカバは、いくつかの部屋に分かれた大きな胃を持っています。その中で小さな微生物の力を借りて草を発酵させ、栄養を取り出します。ただしウシやシカのように、一度飲みこんだ食べものを口に戻してかみ直す「反すう」はしません。なお、カバはわたしたち人間と同じ、体温を一定にたもつ恒温動物(こうおんどうぶつ)です。
「血の汗」の正体(豆知識)
血でも汗でもない液体
カバの皮ふからは、赤っぽい液体がにじみ出ることがあります。血が出ているように見えるため、昔から「血の汗」と呼ばれてきました。けれども、これは血でも汗でもありません。出たばかりのときは色がなく、数分で赤やオレンジに変わっていきます。
天然の日やけ止めと消毒液
この液体には、ヒポスドール酸とノルヒポスドール酸という2つの成分がふくまれています。強い日ざしから皮ふを守る「日やけ止め」の役目や、ばい菌の増殖をおさえる「消毒」の役目があると考えられています。カバは、自分の体で天然の日やけ止めをつくり出しているのです。
こわいカバ、強さと性格
アフリカで最も危険な動物のひとつ
おだやかそうな見た目とはうらはらに、カバはとても気があらく、おこりっぽい動物です。なわばりや子どもを守るために、ボートや人におそいかかることもあります。大きな口と牙を持ち、意外な速さでも走ります。そのためアフリカでは大型の動物の中でも、人がおそわれる数がもっとも多い動物のひとつとされています。
「カバより強い動物は?」と気になる人も多いようですが、ライオンやワニでも、大人のカバ1頭を正面から倒すのは簡単ではありません。それほどカバは、大きさと力を兼ね備えた動物なのです。
オスのなわばりと、母子の暮らし

オスのカバは、川や湖の一部をなわばりにして、複数のメスと子どもをしたがえます。赤ちゃんは水中で生まれ、生まれてすぐに水面へうかんで息をします。母親はとても子ぼんのうで、ほかの動物が近づくとはげしく威嚇します。小さな子は、母親の背中に乗って移動することもあります。
カバに近い動物・にた動物
いちばん近い親せきはクジラ
見た目はブタやサイに似ていますが、じつはカバにもっとも近縁な仲間は、海にすむクジラやイルカです。カバとクジラは、およそ5,000万年前に共通の祖先から分かれたと考えられています。カバは川へ、クジラは海へと、それぞれ水の中で暮らす道を選んだのです。カバとクジラをまとめて「鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)」というグループに入れるのは、このためです。
小さな仲間・コビトカバ
もう1種のカバの仲間が、コビトカバです。体重200kg未満と、カバよりずっと小さく、西アフリカの森の中で暮らします。同じカバ科でも、大きさもすみかも大きく違う2種です。

生息地と保全

すむ場所と、意外な移り住み先
カバは、アフリカのサハラ砂漠より南の、大きな川や湖にすんでいます。おもしろいことに、南米コロンビアにも、人が持ちこんだカバが野生化して増えている場所があります。本来アフリカにしかいない動物が、遠くはなれた土地で暮らしているめずらしい例です。
数の減少と人とのかかわり
カバはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「危急種(VU)」とされ、少し心配な段階にあります。すみかとなる水辺が開発で減ったり、肉や牙をねらった密猟が起きたりしています。カバの牙は象牙に似ているため、かつて象牙の代わりに取り引きされたこともありました。今は多くの国立公園や動物園で守られ、飼育や繁殖の取り組みも進んでいます。
参考文献
- IUCN Red List「Hippopotamus amphibius」
- Wikipedia(英語版)「Hippopotamus」
- Animal Diversity Web「Hippopotamus amphibius」(ミシガン大学)
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画像出典
アイキャッチ画像: Diego Delso, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(本文中の写真は各キャプションに出典を記載)


