アカウミガメは、赤褐色の大きな甲羅と、がっしりした大きな頭を持つウミガメです。じつは「日本の海でいちばんなじみの深いウミガメ」で、日本の砂浜は世界的にも大切な産卵地になっています。強いあごで貝やカニを砕いて食べたり、生まれた日本の浜から太平洋をわたってメキシコ沖まで旅をしたりと、おどろきの生態がいっぱいです。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:爬虫綱 Reptilia
- 目:カメ目 Testudines
- 科:ウミガメ科 Cheloniidae
- 属:アカウミガメ属 Caretta
- 種:アカウミガメ Caretta caretta
和名・英名
- 和名:アカウミガメ(赤海亀)
- 英名:Loggerhead sea turtle(ロガーヘッド・シータートル)
名前の由来
和名の「アカ」は、赤茶色(赤褐色)をした甲羅の色からきています。英名のLoggerhead(ロガーヘッド)は、「丸太(log)のように大きく太い頭」という意味です。つまり日本語でも英語でも、見た目の特徴がそのまま名前になったウミガメです。学名の Caretta caretta も、大きくがんじょうな頭に由来するとされています。アカウミガメ属 Caretta に入るのはこの1種だけという、めずらしい仲間です。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 甲羅の長さ 約90cm・体重 約90〜135kg(大きい個体は約200kg) |
|---|---|
| 分布 | 大西洋・太平洋・インド洋・地中海の、あたたかい海 |
| 生息環境 | 沿岸の海と大陸だな・外洋。産卵は砂浜 |
| 食べ物 | 貝・巻貝・カニ・エビ・ウニなど(底にすむかたい生きもの) |
| 寿命 | 野生でおよそ47〜67年(さらに長生きの説も) |
| 保全状況 | IUCN:危急(VU)/日本の環境省:絶滅危惧IB類 |
日本のウミガメといえばアカウミガメ
北太平洋で卵を産むのは、日本の浜だけ
アカウミガメは、日本の海でいちばんよく見られるウミガメです。それもそのはず、北太平洋にすむアカウミガメが卵を産みに上陸する砂浜は、じつは日本の海岸だけだと分かっています。静岡の遠州灘・和歌山・徳島の日和佐・宮崎・鹿児島の屋久島・千葉など、本州から南の太平洋側の砂浜が、世界的にも大切な産卵地です。日本の浜が守られるかどうかが、北太平洋のアカウミガメ全体の未来を左右するのです。

太平洋をわたる、およそ1万3千kmの大旅行
おどろくのは、その旅の長さです。日本の浜で生まれた赤ちゃんガメは、あたたかい黒潮の流れに乗って太平洋へ出ていきます。そして海をまっすぐ横断し、遠くメキシコのバハ・カリフォルニア沖やペルー・チリの沖まで旅をします。その距離はおよそ8,000マイル(約1万3千km)にもなることが、衛星を使った追跡で分かっています。そこで20年ほどかけて大きく育ち、大人になると、また生まれた日本の浜へもどってきて卵を産みます。地球の海をぐるりと使った、雄大な一生です。
大きな頭と、貝を砕く強いあご
「頭でっかち」が名前になった
アカウミガメのいちばんの特徴は、体に対してとても大きな頭です。英語の名前Loggerheadも、この大きな頭からついています。頭が大きいのには、ちゃんと理由があります。中には、太くて力強いあごがつまっているのです。

かたい貝もカニも、バリバリ砕く
アカウミガメは、海の底にすむかたい生きものを好んで食べます。サザエのような巻貝・二枚貝・カニ・エビ・ウニ、さらにはカブトガニまで、その強いあごでバリバリと砕いてしまいます。海草を主に食べるアオウミガメとは、食べ物がまるで違うのです。かたい殻の生きものを食べられる相手は少ないため、アカウミガメは海の底で数が増えすぎた貝やカニを間引く、「海の掃除役」のような役割も果たしています。
アオウミガメとの見分け方
頭の大きさ・甲羅の色・うろこの数で見分ける
アカウミガメとアオウミガメは、同じウミガメ科のなかまでよく似ていますが、いくつかのポイントで見分けられます。いちばん分かりやすいのは頭の大きさと甲羅の色。アカは頭が大きく甲羅が赤茶色、アオは頭が小さめで甲羅は暗い色をしています。もっと確実なのが、甲羅のわきに並ぶうろこ(肋甲板)の数です。アカウミガメは左右に5対、アオウミガメは4対と決まっているので、数えれば区別できます。
| アカウミガメ | アオウミガメ | |
|---|---|---|
| 頭 | 大きい | 小さめ |
| 甲羅の色 | 赤茶色(赤褐色) | 暗い茶色〜緑がかった色 |
| わきのうろこ(肋甲板) | 左右に5対 | 左右に4対 |
| おもな食べ物 | 貝・カニなど(肉食より) | 海草・海藻(草食) |
体と生態のふしぎ
世界でいちばん大きい「かたい甲羅」のカメ
アカウミガメは、かたい甲羅を持つカメの仲間の中では、世界でいちばん大きな種です。甲羅の長さは90cmほど、体重は100kg前後で、大きい個体は200kgにもなります。じつは平均や最大の体重では、あのアオウミガメやガラパゴスのゾウガメよりも重いのです。ちなみにウミガメの甲羅は、背骨とあばら骨が大きく広がって皮ふの下の骨とつながったもので、頭や手足を引っこめることはできません。
地球の磁場を感じて旅をする
1万kmをこえる旅をしながら、広い海でまよわないのはなぜでしょう。アカウミガメは、地球の磁場(磁気)を感じ取り、方角や自分のいる場所を知る力を持つと考えられています。生まれた浜へ何十年ぶりに正確にもどれるのも、この力のおかげとされ、アカウミガメはこうした「磁気の地図」の研究が世界でもっとも進んだウミガメです。体温が水温につれて変わる変温動物ですが、体が大きいぶん熱がにげにくく、冷たい海でも活動できます。
産卵と赤ちゃんガメ

夜の砂浜で、ピンポン玉のような卵を産む
生まれた浜へ帰って産む
メスは大人になると、自分が生まれた浜へもどって産卵します。上陸するのはたいてい夜。うしろあしで砂を深さ40〜60cmほど掘り、1回に80〜120個ほどの卵を産みます。卵はピンポン玉くらいの大きさで、白くやわらかい殻をしています。1シーズンのうちに、何回かに分けて産みにくるメスもいます。
砂の温度でオス・メスが決まる
ウミガメの赤ちゃんの性別は、卵のときの砂の温度で決まります。おおよそ29℃を境に、それより低いとオス、高いとメスが多く生まれます。そのため、地球温暖化で砂が暑くなると、メスばかりが増えてしまうのではないかと心配されています。卵は50〜70日ほどでかえります。
「失われた数年」をへて大人になる
砂から出た赤ちゃんガメは、いっせいに海をめざして走ります。海に入ったあとの数年間は「ロストイヤーズ(失われた数年)」と呼ばれ、外洋にただよう流れ藻(ホンダワラなど)にかくれながら育つと考えられていますが、その暮らしにはまだナゾが多く残されています。大人になって卵を産めるようになるまでには、20〜30年もの長い年月がかかります。
数を減らした理由と、私たちにできること
絶滅が心配される、身近なウミガメ
アカウミガメは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「危急(VU)」に、日本の環境省のレッドリストでは「絶滅危惧IB類」に指定されています。ワシントン条約(CITES)でも、もっとも厳しい附属書Iに入っていて、売り買いは禁止です。北太平洋の個体群は、この60年で50〜90%も減ったと報告されています。大きな原因はいくつかあります。漁の網に思いがけずかかってしまう「混獲」、砂浜の開発、そして海に捨てられたビニール袋を食べてしまうことなどです。ビニール袋を、大好物のクラゲとまちがえてしまうのです。
浜と海の光を守る取り組み
アカウミガメを守るため、さまざまな工夫が続けられています。網にウミガメがかかっても逃げられる装置(TED)を取り付けたり、日本の産卵地では地元の人たちが巣を見守り、ふ化を手伝ったりしています。気をつけたいのが、夜の砂浜の明かりです。赤ちゃんガメは月あかりを目印に海へ向かうため、まちの明かりが強いと、海と反対へ進んでしまうことがあります。産卵地の近くでは、光をひかえることも大切な保全なのです。日本では、沖縄の美ら海水族館など各地の水族館でも、アカウミガメに会うことができます。



参考
- IUCN Red List「Caretta caretta」(危急VU・ワシントン条約附属書I)
- NOAA Fisheries「Loggerhead Turtle」(北太平洋の個体群は日本の海岸だけで産卵/日本・オーストラリア生まれが太平洋をわたりメキシコ〜チリ沖まで約8,000マイル回遊/大きな頭と強いあごで貝を砕く/混獲を防ぐTED)
- Wikipedia「Loggerhead sea turtle」英語版(かたい甲羅を持つカメで世界最大=甲長約90cm・体重135kg最大200kg/赤褐色の甲羅・肋甲板5対/底生の無脊椎動物を強いあごで砕く雑食/成熟17〜33年・寿命47〜67年)
画像出典
アイキャッチ画像: Strobilomyces, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons


