ヒラタウミガメは、その名のとおり平べったい甲羅を持つ、ちょっとかわったウミガメです。じつはオーストラリアだけにすむ固有種で、卵を産むのもオーストラリアの浜だけ。さらに、多くのウミガメは赤ちゃんのころに遠い外洋へ旅立ちます。ところがこの種は沖へ出ず、沿岸で育つという、めずらしい一生を送ります。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:爬虫綱 Reptilia
- 目:カメ目 Testudines
- 科:ウミガメ科 Cheloniidae
- 属:ヒラタウミガメ属 Natator
- 種:ヒラタウミガメ Natator depressus
和名・英名
- 和名:ヒラタウミガメ
- 英名:Flatback sea turtle(フラットバック・シータートル)
名前の由来
和名の「ヒラタ」も、英名のFlatback(平らな背中)も、どちらも平べったい甲羅からきています。ほかのウミガメの甲羅がドーム状に盛り上がっているのに対し、この種はぐっと平らなのです。属の名前 Natator は、ラテン語で「泳ぐもの(泳ぎ手)」という意味です。ヒラタウミガメは、この Natator 属にただ1種だけが入る、ちょっと特別なウミガメです。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 甲羅の長さ 約76〜96cm・体重 約70〜90kg |
|---|---|
| 分布 | オーストラリア北部の沿岸(固有種)。餌場はインドネシアやパプアニューギニアの海にも広がる |
| 生息環境 | 大陸だなの浅くにごった海。産卵は砂浜 |
| 食べ物 | 肉食より。ナマコ・軟らかいサンゴ・クラゲ・エビ・貝など |
| 寿命 | 野生でおよそ数十年と考えられている |
| 保全状況 | IUCN:情報不足(DD)/ワシントン条約 附属書I |
オーストラリアだけにすむウミガメ

産卵するのはオーストラリアの浜だけ
ヒラタウミガメは、世界でオーストラリアにしかいない固有種です。卵を産む浜は、すべてオーストラリアにあります。西のエクスマスから東のクイーンズランド州まで、北部の海岸や島が産卵地です。餌をとる海は、オーストラリア北部の沿岸を中心に、となりのインドネシアやパプアニューギニアの海まで広がっています。世界中の海にすむほかのウミガメとくらべると、とても限られた場所で暮らすウミガメです。
名前のとおり、平らな甲羅
ヒラタウミガメの甲羅は、上から見ると楕円形からハート型で、横から見るととても平べったい形をしています。ふちが少し上に反っているのも特徴です。色はオリーブ色がかった灰色や灰緑色で、おなか側はクリーム色。うろこが重なり合わず、なめらかにならんでいます。頭は中くらいの大きさで、全体にやさしい印象のウミガメです。

外洋に出ない、めずらしい一生
赤ちゃんも、遠い沖へ出ていかない
ヒラタウミガメの一生には、大きな特徴があります。多くのウミガメは、生まれた赤ちゃんが遠い外洋へ旅立ち、何年も海を漂って育つ「失われた数年」を過ごします。ところがヒラタウミガメの赤ちゃんは、この外洋ぐらしをしません。生まれてもすぐには遠くへ行かず、オーストラリア周辺の浅い海にとどまって育つのです。世界の海を大回遊するほかのウミガメとは、まったく違う暮らし方です。
少なく産んで、大きく育てる
たまごは約50個と少なめ
ヒラタウミガメのメスは、1回の産卵でおよそ50個ほどの卵を産みます。ほかのウミガメが100〜150個も産むのとくらべると、ずいぶん少なめです。そのかわり、ひとつひとつの卵は大きいのが特徴です。
大きな赤ちゃんは生き残りやすい
大きな卵からは、大きな赤ちゃんガメが生まれます。ヒラタウミガメの赤ちゃんは、ほかのウミガメの赤ちゃんよりひとまわり大きく、生まれつき力持ちです。体が大きいと、浅い海にいる天敵に食べられにくくなります。「たくさん産む」のではなく「大きく産んで、しっかり育てる」作戦をとっているのです。
食べ物と、こわい天敵
軟らかい生きものを食べる
ヒラタウミガメは、肉食よりの雑食です。海の底にいるナマコ・軟らかいサンゴ・クラゲ・エビ・貝などを食べます。海草を食べることはめったにありません。サンゴ礁よりも、砂や泥の海底が広がる浅い海を好み、そこで軟らかい獲物をさがして暮らしています。よく海草を食べる草食のアオウミガメとは、食べ物がまるで違います。
天敵はサメと、そしてワニ
大人のヒラタウミガメをおそう天敵は、サメと、なんとイリエワニです。オーストラリア北部の海には大きなイリエワニがすんでいて、ウミガメもねらわれることがあります。赤ちゃんガメのころは、カニや海鳥、それに子どものイリエワニにも食べられてしまいます。オーストラリアならではの、きびしい自然の中で生きているウミガメなのです。
どのくらい危ない? 日本で会える?
「情報不足(DD)」というめずらしい区分
ヒラタウミガメは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「情報不足(DD)」に分類されています。これは「数や分布のデータが足りず、絶滅の危険をはっきり判断できない」という意味で、ウミガメの中ではめずらしい区分です。すむ範囲がせまいぶん、ほかのウミガメほど大きな危機ではないとも考えられていますが、オーストラリアでは法律で守られる大切な生きものです。漁の網にかかる混獲や、産卵地の開発が心配されています。
日本ではまず会えないウミガメ
ヒラタウミガメはオーストラリアの固有種なので、日本の海ではまず見ることができません。日本の水族館にもほとんどいない、なかなか会えないウミガメです。日本の海でふだん見られるのは、アオウミガメ・アカウミガメ・タイマイなどです。世界にはこのヒラタウミガメのように、特定の国だけにすむ個性的なウミガメもいます。



参考
- IUCN Red List「Natator depressus」(情報不足DD=データが足りず評価できない/以前は危急VU/ワシントン条約附属書I)
- Australian Government DCCEEW「Flatback turtle (Natator depressus)」(オーストラリア固有種で産卵地はすべて豪州のみ・北部沿岸で採餌し餌場はインドネシアやパプアニューギニアにも及ぶ・EPBC法で保護)
- Wikipedia「Flatback sea turtle」英語版(平らな甲羅でふちが反る・肉食よりの雑食=ナマコ/軟サンゴ/クラゲ/エビ・赤ちゃんは外洋に出ず沿岸で育つ・卵は約50個と少なく赤ちゃんは大きい・甲長76〜96cm70〜90kg・天敵はサメとイリエワニ)
画像出典
アイキャッチ画像: Purpleturtle57, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons


