レッサーパンダは、ヒマラヤや中国南西部の山の森にすむ、赤茶色の小さな動物です。竹を食べ、木の上で暮らし、後ろあしで立ち上がる姿で親しまれています。「パンダ」の名を持ちますが、ジャイアントパンダとは近い仲間ではありません。
分類と学名
- 界:動物界
- 門:脊索動物門(せきさくどうぶつもん)
- 綱:哺乳綱(ほにゅうこう)
- 目:食肉目(ネコ目)
- 科:レッサーパンダ科(Ailuridae)
- 属:レッサーパンダ属(Ailurus)
- 種:レッサーパンダ Ailurus fulgens
英名は Red Panda(レッド・パンダ)で、「赤いパンダ」という意味です。レッサーパンダは食肉目(ネコ目)の仲間ですが、イヌやネコ・クマとは別の「レッサーパンダ科」という自分たちだけの科に分けられています。近い親せきは、アライグマやイタチの仲間です。
2020年の研究では、レッサーパンダは「ヒマラヤレッサーパンダ」と「シナレッサーパンダ」の2種に分けられることがわかってきました。すむ地域によって、少しずつ姿が違うのです。
基本データ
| 体長(頭からおしり) | 約51〜63cm(しっぽは別に28〜48cm) |
| 体重 | 約3〜6kg |
| 分布 | ヒマラヤ(ネパール・インド・ブータン)〜中国南西部・ミャンマー北部 |
| すみか | 標高1,800〜4,000mの、竹の生える山の森 |
| 食べもの | 竹の葉・若い枝が中心。果実・木の実・小動物も |
| 活動時間 | 朝方と夕方によく動く。単独で暮らす |
| 保全状況 | 絶滅危惧種(EN/IUCN) |
体重は3〜6kgほどで、大きめのネコくらいの大きさです。ふさふさの長いしっぽを入れると、体の長さは1mほどになります。
見た目と特徴

赤茶色の毛と、輪もようのしっぽ
全身は、あざやかな赤茶色の長い毛でおおわれています。顔は白い模様が入り、目のまわりには濃い色のもようがあります。いちばんの特徴は、太くて長いしっぽです。赤茶色とうす茶色の輪もようがならび、木の上でバランスを取ったり、寒いときに体に巻いて暖を取ったりするのに役立ちます。
竹をつかむ「にせ親指」
レッサーパンダの前あしには、5本の指のほかに、もう1本の「親指」のようなでっぱりがあります。これは本当の指ではなく、手首の骨が大きくなってできたもので、「にせ親指(第6の指)」と呼ばれます。このでっぱりを使って、竹をしっかりにぎって食べます。じつはジャイアントパンダも、そっくりな「にせ親指」を持っています。
立ち上がる姿と風太くん

立つのは、じつは威嚇のポーズ
レッサーパンダが後ろあしだけで立ち上がる姿は、とてもかわいく見えます。けれども本当は、これは敵をおどすための「威嚇(いかく)」のポーズです。体を大きく見せ、前あしを広げて「自分は強いぞ」と相手に伝えているのです。かわいく見えても、本人にとってはいたって真けんな行動です。
人気者になった「風太くん」
2005年、千葉市動物公園(千葉県)のレッサーパンダ「風太くん」が、後ろあしだけでまっすぐ立つ姿で大人気になりました。テレビや新聞で何度も紹介され、レッサーパンダが「立つ動物」として広く知られるきっかけになりました。今でも各地の動物園で、立ち上がるレッサーパンダの姿が人気を集めています。
暮らしと生態

木の上で単独に暮らす
レッサーパンダは、木登りがとても得意です。日中は木の上や茂みの中で休み、朝方と夕方によく活動します。群れはつくらず、ふだんは1頭だけで、決まったなわばりの中で暮らします。おしりの近くのにおいの分泌物で、なわばりの目印をつけます。
竹が主食、でも肉食のなかま
竹の消化は、じつは苦手
主食は竹の葉や若い枝で、そのほかに果実・木の実・鳥の卵・昆虫なども食べます。じつはレッサーパンダの体は、もともと肉を食べる動物のつくりをしています。そのため竹の消化はあまり得意ではありません。
たくさん食べて栄養をおぎなう
消化が苦手なぶん、レッサーパンダはたくさんの竹を食べて栄養をおぎないます。一日の多くの時間を食事に使い、起きているあいだはほとんど食べているほどです。栄養の少ない竹だけで暮らすための、レッサーパンダなりの工夫です。
ヒマラヤの、ひんやりした森
レッサーパンダがすむのは、標高1,800〜4,000mほどの、すずしくてしめった山の森です。竹がたくさん生え、木々のしげる森を好みます。ネパール・インド・ブータン・ミャンマー北部から中国南西部(雲南省・四川省)まで、ヒマラヤ山脈にそった細長い地域にすんでいます。
赤ちゃんと子育て

夏に1〜4頭生まれる
レッサーパンダは、冬から春にかけて交尾します。およそ4か月の妊娠のあと、夏に赤ちゃんを産みます。1回に生まれるのは1〜4頭で、双子もよく見られます。母親は、木のうろや岩のすき間に葉を集めて巣をつくり、そこで赤ちゃんを育てます。
母親だけで育てる
子育てはすべて母親が行います。生まれたばかりの赤ちゃんは、目が閉じていて、ほとんど動けません。母親のお乳で育ち、生後3か月ほどで固いものを食べ始めます。半年ほどたつと親と同じくらいの見た目になり、やがて巣立って1頭で暮らすようになります。
ジャイアントパンダとの違い
じつはレッサーが先に「パンダ」だった
「パンダ」という名は、もともとレッサーパンダのものでした。レッサーパンダがヨーロッパに紹介されたのは19世紀のはじめで、ジャイアントパンダより先に「パンダ」と呼ばれていたのです。あとから見つかった白黒の大きなパンダが有名になり、区別のために、こちらは「レッサー(小さいほうの)パンダ」と呼ばれるようになりました。
竹を食べるのは「他人のそら似」
レッサーパンダとジャイアントパンダは、どちらも竹を食べ、竹をつかむ「にせ親指」を持っています。よく似ているので、昔は近縁(近い仲間)だと考えられていました。ところが今では、ジャイアントパンダはクマの仲間だとわかっています。レッサーパンダはレッサーパンダ科で、まったく別のグループなのです。竹を食べるうちに、それぞれが別々に同じような体を手に入れた「他人のそら似(収れん進化)」なのです。

どこで会える?
日本の多くの動物園で人気
レッサーパンダは、日本の多くの動物園で飼育されていて、身近に会える人気者です。赤ちゃんが生まれる園も多く、まるっとした子どもの姿がたびたび話題になります。竹を手でつかんで食べる姿や、木の上でくつろぐ姿を間近で見られます。ときには立ち上がる姿に出会えることもあります。
見やすいのは朝と夕方
朝方や夕方に活発になるため、その時間帯は動き回るようすを見やすいです。暑さは苦手なので、夏の暑い日は、すずしい室内で休んでいることもあります。反対に、冬にはふさふさの毛としっぽで寒さに強く、元気に動く姿が見られます。
数の少なさと保全

世界にわずかしか残っていない
レッサーパンダは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「絶滅危惧種(EN)」に分類されています。すむ場所がヒマラヤにそった細い地域に限られ、もともと数が多くありません。人気の動物ですが、野生ではけっして安泰ではないのです。
いちばんの脅威は森林伐採
いちばんの脅威は、すみかである森が切り開かれてしまうことです。森が減ると、食べものの竹や、身をかくす木がなくなります。毛皮をねらった密猟や、放し飼いのイヌによる被害も知られています。今は各国で保護区がつくられ、世界の動物園でも大切に飼育・繁殖されています。日本でも多くの動物園で会える、身近な絶滅危惧種です。
参考文献
- IUCN Red List「Ailurus fulgens(Red Panda)」
- Wikipedia(英語版)「Red panda」
- Animal Diversity Web「Ailurus fulgens」(ミシガン大学)
画像出典
アイキャッチ画像: Mathias Appel, CC0, via Wikimedia Commons(本文中の写真は各キャプションに出典を記載)


