グラウンドホッグは、北アメリカの平地にすむマーモットです。「ウッドチャック」とも呼ばれ、春の訪れを占う「グラウンドホッグデー」の主役として有名です。マーモットには珍しく、木に登ったり泳いだりもする、意外な一面を持つ動物です。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:齧歯目(げっしもく) Rodentia
- 科:リス科 Sciuridae
- 属:マーモット属 Marmota
- 種:グラウンドホッグ Marmota monax
和名・英名
- 和名:グラウンドホッグ
- 英名:Groundhog / Woodchuck
名前の由来
英語名の「ウッドチャック(woodchuck)」は、じつは木(wood)とも「投げる(chuck)」とも関係がありません。アメリカ先住民の言葉で動物をさす「ウチャック(wuchak)」がなまった呼び名です。学名の「monax(モナックス)」も、先住民の言葉で「穴を掘るもの」を意味します。鋭い口笛のような声から「ホイッスルピッグ(口笛ブタ)」とも呼ばれます。
有名な早口言葉のもとに
言葉がよく似ているため、英語圏では「ウッドチャックが木を投げられるなら、どれだけ投げるだろう?」という早口言葉が生まれました。名前は木と無関係なのに、木にまつわる言葉遊びになっているのがおもしろいところです。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約42〜68cm(尾は9.5〜19cm) |
|---|---|
| 体重 | 約2〜6.3kg(秋に太る。オスがやや大きい) |
| 分布 | 北アメリカ東部〜中部・カナダ・アラスカ |
| 生息環境 | 平地の森の縁・草地・農地・郊外 |
| 食べ物 | 草・葉・クローバー・果実など(ときに昆虫や卵も) |
| 寿命 | 野生でおよそ6年ほど(飼育下はもっと長い) |
| 保全状況 | IUCN:軽度懸念(LC) |
※ 軽度懸念(LC)とは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「今すぐ絶滅する心配は小さい」とされるランクです。グラウンドホッグは北米に広く分布し、数も安定しています。
ずんぐりした体と白い前歯
ずんぐり体型と短い尾
グラウンドホッグは、ずんぐりとした体つきで、足は短く太めです。体長は42〜68cm、体重は2〜6.3kgほどで、秋になると脂肪をため込んで丸々と太ります。尾は短く、体長の4分の1ほどしかありません。おどろいたときには、その尾をぴんと立てて相手を威嚇することもあります。分布する地域では、いちばん大きなリスのなかまです。
じつは白い前歯
ネズミやリスのなかまの前歯は、オレンジ色や黄色をしていることが多いのですが、グラウンドホッグの前歯は白っぽい象牙色をしています。この前歯は1週間に1.5mmずつのび続け、ものをかじることで同じだけすり減ります。のびすぎないよう、いつもかじってバランスを取っているのです。
ひとりぐらしと意外な特技
マーモットには珍しい単独生活
多くのマーモットは群れ(コロニー)で暮らしますが、グラウンドホッグはマーモットの中でもとくに単独で暮らす種です。ふだんは1頭ですごし、ほかの個体と関わるのは主に繁殖の時期だけです。昼に活動し、とくに朝と夕方によく動きます。ただし一部の地域では、オスとメスが長く付き合う例も知られています。
木に登り、泳ぐ
ずんぐりした見た目からは意外ですが、グラウンドホッグは泳ぎが得意で、木に登ることもできます。敵からにげるときや、あたりのようすを見わたしたいときに木にのぼるのです。岩山で暮らす仲間とは違う、平地育ちならではの特技といえます。
深い冬眠
心拍が1分に数回まで落ちる
グラウンドホッグは、本格的に冬眠する動物です。北の地域では10〜11月に眠りに入り、2〜3月に目ざめます。冬眠中は体温が2℃ほどまで下がり、心臓は1分間に4〜10回しか打たなくなります。呼吸も6分に1回ほどに落ち、ためた脂肪だけで冬を越します。
医学の研究をささえる動物
この深い冬眠のしくみは、科学者たちの注目の的です。体温や心拍を大きく落としても元気に目ざめるひみつは、医療にも役立つと期待されています。さらにグラウンドホッグは、人のB型肝炎によく似たウイルスを持つことから、肝臓の病気を調べる研究の大切なモデル動物にもなっています。
暮らしと繁殖
巣穴は森のマンション
グラウンドホッグは、いくつもの出入り口を持つ大きな巣穴を掘ります。中は寝室・にげ道・トイレなどに分かれた立派なつくりです。使われなくなった巣穴は、キツネやスカンク・ヘビ・ウサギなど、ほかの動物のすみかにもなります。土を掘りかえすことで地面の水はけや通気もよくなり、草原や森を支える「生態系エンジニア」の役割も果たしています。
一方で、トウモロコシ・レタス・クローバーなどの畑を荒らすこともあり、農家からは害獣あつかいされることもあります。基本は草食ですが、ときには昆虫や鳥の卵を食べることもあります。
森と草地のさかい目にすむ
グラウンドホッグは、森と草地がとなり合う「さかい目」のような場所を好みます。見通しがよく、巣穴を掘りやすい土のある環境です。分布は南のアメリカ・ジョージア州あたりから、北のカナダまで広がります。公園やゴルフ場、住宅地の芝生にも巣穴を作り、人の暮らしのそばでもたくましく生きています。
春に2〜6頭の子を産む
繁殖は、冬眠から目ざめた直後の2〜3月に始まります。妊娠期間はおよそ1か月で、1回に2〜6頭の子を産みます。子は約1か月で巣の外に出るようになり、その年のうちに親のもとをはなれて自立します。多くは1〜2才で大人になります。
春を占う「グラウンドホッグデー」
影を見るかで冬の長さを占う
アメリカとカナダには、毎年2月2日の「グラウンドホッグデー」という行事があります。冬眠から出てきたグラウンドホッグが自分の影を見たら、冬はあと6週間続く。影を見なければ、春が早く来る——そんな言い伝えです。もとはドイツ系移民(ペンシルベニア・ダッチ)が伝えた風習だといわれています。
有名なフィルと映画
とくに有名なのが、ペンシルベニア州パンクサトーニーの「フィル」というグラウンドホッグです。1887年から続く占いの主役で、毎年ニュースになります。1993年には、この行事をもとにした映画『グラウンドホッグ・デー(邦題:恋はデジャ・ブ)』も作られ、世界じゅうで親しまれました。小さなマーモットが、これほど文化に根づいているのはおどろきです。
ちなみに、フィルの予想がよく当たるわけではありません。実際の的中率はそれほど高くないともいわれますが、それでも冬の終わりを心待ちにする人々にとって、春を思う楽しいお祭りになっています。


参考
- IUCN Red List: Marmota monax(Cassola, F. 2016, 軽度懸念LC)
- Wikipedia「Groundhog」(英語版・名前の由来/冬眠生理/木登り・泳ぎ)


