カザフスタンマーモット

齧歯類(ネズミ・リス)

カザフスタンマーモットは、中央アジアの山あいの草原にすむ大型のマーモットです。英語では「グレイ(灰色)マーモット」と呼ばれ、毛の先が黒っぽく全体が灰色がかって見えるのが名前の由来です。人類の親戚が見つかった「デニソワ洞窟」から化石が出ていることでも知られます。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:齧歯目(げっしもく) Rodentia
  • 科:リス科 Sciuridae
  • 属:マーモット属 Marmota
  • 種:カザフスタンマーモット Marmota baibacina

和名・英名

  • 和名:カザフスタンマーモット(ハイイロマーモット/グレイマーモットとも)
  • 英名:Gray marmot / Grey marmot / Altai marmot

いろいろな呼び名

この動物には、決まった和名がまだありません。すむ場所からは「カザフスタンマーモット」、毛の色からは「ハイイロマーモット(グレイマーモット)」と呼ばれます。アルタイ山脈にちなんだ「アルタイマーモット」という呼び名もあります。学名は Marmota baibacina で、2つの亜種が知られています。近い仲間は、ボバックマーモットやシンリンステップマーモットです。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体長 約60〜80cm(尾は13〜15cm)
体重約4〜6.5kg(冬眠前は8kg近くまで太る)
分布中央アジアの山地(カザフスタン・キルギス・モンゴル・中国・ロシア南部)
生息環境標高150〜4,000mの山の草原・ステップ
食べ物草・花・新芽(完全な草食)
寿命野生で10年前後とされる
保全状況IUCN:軽度懸念(LC)

軽度懸念(LC)とは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「今すぐ絶滅する心配は小さい」とされるランクです。広く分布し数も多いためですが、場所によっては狩りや農地開発で減っています。

灰色がかった毛が名前のもと

名前どおりの灰色の毛

背中の毛は、ベージュから茶色っぽい地に、黒っぽい毛先がまじっています。そのため全体が灰色がかって見え、これが「グレイ(灰色)マーモット」という名前のもとになりました。おなかはオレンジがかった赤茶色、尾の先は黒っぽく、耳は小さくて丸い形です。ほおは濃い茶色で、口のまわりは黄色っぽくなっています。

岩の上のカザフスタンマーモット
岩の上でくつろぐ個体。灰色がかった毛がわかる(IKhalitov, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

中央アジア最大級の体格

カザフスタンマーモットは、ユーラシアのマーモットの中でも最大級です。体長は60〜80cm、体重は4〜6.5kgほどで、冬眠前には8kg近くまで太ることもあります。体の大きさは、すむ場所の緯度や標高によっても変わります。冬眠のあいだには、体重のおよそ3分の1を失います。

白い個体(アルビノ)も

この種には、まれに色素をもたない白い個体(アルビノ)が生まれることが知られています。灰色の毛が名前のもとになった動物に真っ白な個体がいるのは、なんだか意外な感じがします。自然の中では目立ってしまうため、無事に育つのは簡単ではありません。

草原での暮らし

拡大家族とコロニー

カザフスタンマーモットは、「拡大家族」と呼ばれる群れで暮らします。中心となる1組の夫婦に、若い大人・去年の子・赤ちゃんが加わった家族です。いくつもの巣穴が集まって、大きなコロニーをつくります。環境がきびしい年には家族の数は少なく、条件がよい年には家族が大きく複雑になります。

岩の上に立つ2頭のカザフスタンマーモット
岩の上に立つ2頭。拡大家族で暮らす(IKhalitov, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

においと鳴き声でやりとり

この動物は、ほおとおしりに「におい」を出す腺(せん)を持っています。においを使って、だれが群れのリーダーかを伝えたり、身を守ったりします。さらに、尾の動きや、うなり声・高い鳴き声などで仲間とやりとりします。敵が近づいたときの警戒の声は、種によって少しずつちがっています。

どこにすんでいる?

中央アジアの山の草原

カザフスタンマーモットは、アルタイ山脈や天山(てんざん)山脈など、中央アジアの山々にすんでいます。カザフスタン・キルギス・モンゴル・中国(新疆)・ロシア南部にかけて分布します。標高は150〜4,000mと幅広く、水はけのよいゆるやかな斜面を好みます。ロシアのカフカス地方には、人の手で持ちこまれた個体群もいます。

カザフスタンの草原のマーモット
カザフスタンの山の草原にすむマーモット(Ron Knight, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

タルバガンとのすみ分け

モンゴルのアルタイ地方では、近い仲間のシベリアマーモット(タルバガン)と分布が重なります。しかし2種は場所を取り合い、カザフスタンマーモットは標高3,000mより高い、岩がごろごろした場所へと追いやられます。同じ場所で暮らしたり、雑種ができたりすることは、めったにありません。

冬眠と繁殖

7〜8か月の長い冬眠

雪が積もると、食べものが手に入らなくなります。そこでカザフスタンマーモットは、秋から春まで7〜8か月もの長い冬眠をします。冬眠は8〜10月ごろに始まり、5月ごろに目ざめます。地下深くの冬眠部屋で、体の働きを落とし、ためた脂肪だけで冬を越します。

2〜6頭の子を産む

繁殖は5月のはじめで、冬眠から出る前に巣穴の中で交尾することもあります。妊娠期間はおよそ40日で、1回に2〜6頭の子を産みます。メスは2〜3才で子を産めるようになりますが、毎年ではなく1年おきに出産します。

きびしい年は繁殖を止める

おどろくことに、環境がきびしい年には、おなかの中の赤ちゃん(胚)を体にもどして吸収してしまうことがあります。子を育てられそうにないときは、無理をせず繁殖を見送るのです。少ないエネルギーで長い冬を生きぬくための、きびしくも賢いしくみといえます。

食べものと天敵

カザフスタンマーモットは完全な草食です。春にはヨモギの仲間を、夏から秋にはイネ科の草や花を食べ、冬眠にそなえて太ります。乾いた土地では植物が育つ期間が短いため、短い間にたくさん食べる必要があります。

天敵は、オオカミ・キツネ・イタチの仲間です。高山にすむマヌルネコやユキヒョウ、タカ・ハヤブサなどもねらいます。開けた場所では見つかりやすいため、鳴き声の警報と出入り口の多い巣穴で身を守ります。使われなくなった巣穴は、ほかの小動物や昆虫のすみかにもなり、草原の生態系を支えています。

巣穴の入り口のカザフスタンマーモット
巣穴の入り口に立つ個体(Alastair Rae, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

デニソワ洞窟と人との関わり

デニソワ洞窟に残る化石

アルタイ山脈には、「デニソワ洞窟」という有名な洞窟があります。ここは、私たち現生人類の親戚にあたる「デニソワ人」の骨が初めて見つかった場所です。じつはこの洞窟から、カザフスタンマーモットの化石も見つかっています。大昔から、この動物がアルタイの地で暮らしていた証拠です。

毛皮・食用と、これからの保全

カザフスタンマーモットは、古くから毛皮や肉、脂肪を目当てに狩られてきました。脂肪は、関節の痛みなどに使う塗り薬にもされてきました。農村では身近な動物で、農地の近くで見かけることもあります。

分布が広く数も多いため、全体としては絶滅の心配は小さい生き物です。ただし、行きすぎた狩りや農地開発で、地域によっては数を減らしています。近い仲間のマーモットと同じく、ペストと関わることも知られており、野生個体には注意が必要です。これからも、地域ごとに数を見守っていくことが大切です。

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参考

  • IUCN Red List: Marmota baibacina(Batbold et al. 2016, 軽度懸念LC)
  • Wikipedia「Gray marmot」(英語版・形態/分布/デニソワ洞窟の化石)

画像出典

アイキャッチ画像: IKhalitov, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

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