チョウセンスズガエルは、東アジアにすむ小さなカエルです。背中は緑色に黒いまだらですが、おなかは目のさめるような真っ赤。敵におそわれると、体を反り返らせてこの赤いおなかを見せ、「毒があるぞ」と警告します。オスの鳴き声が鈴(すず)の音に似ていることから「鈴蛙(すずがえる)」の名がつきました。カラフルで丈夫なため、ペットとしても人気があります。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:両生綱 Amphibia
- 目:無尾目 Anura
- 科:スズガエル科 Bombinatoridae
- 属:スズガエル属 Bombina
- 種:チョウセンスズガエル Bombina orientalis
和名・英名
- 和名:チョウセンスズガエル(朝鮮鈴蛙)
- 英名:Oriental fire-bellied toad(火の腹のカエル)
別名・学名の由来
和名の「鈴蛙」は、オスの鳴き声が鈴の音のように聞こえることに由来します。英名の bell toad(鈴のカエル)も同じ意味です。英語ではもう一つ、fire-bellied toad(火の腹のカエル)とも呼ばれ、これは燃えるように赤いおなかを表しています。種小名の orientalis は「東の」という意味で、東アジアに分布することを示しています。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約3.8〜5.1cm(小型) |
|---|---|
| 分布 | 東アジア北部(朝鮮半島・中国北東部・ロシア沿海地方) |
| 生息環境 | 流れの緩やかな小川や池、林(半水生) |
| 食べもの | 昆虫・ミミズ・貝など(肉食) |
| 毒 | 皮膚から出す(腹の赤色は毒の警告色) |
| 保全状況 | IUCN: LC(軽度懸念) |
見た目

緑の背中と、真っ赤なおなか
体長は3.8〜5.1cmほどの小さなカエルです。背中は明るい緑色や茶緑色で、黒いまだら模様が散らばり、小さなイボにおおわれています。いっぽうおなかは、赤や橙赤色に黒い斑点というはでな色。手足の指先まで赤くなります。上から見ると地味な緑で葉にまぎれ、いざというときはひっくり返って赤を見せる、二段構えの体の色なのです。
ヒキガエルに似ているけれど
背中がイボだらけなので、英語では「toad(ヒキガエル)」と呼ばれます。でも、じつはヒキガエル科ではなく、独立した「スズガエル科」のカエルなのです。名前に「トード」とついても、ヒキガエルの仲間とはかぎりません。ずんぐりしたヒキガエルにくらべると体は小さく平たく、水辺での生活によく適応しています。
くらしと生態
水辺でくらす、昼のカエル
チョウセンスズガエルは、流れのゆるやかな小川や池のまわりでくらす半水生のカエルです。多くのカエルが夜に活動するのに対して、本種は昼間に活動します。おどろくことに、よごれた水にもかなり強いカエルです。ほかの両生類ならすめないような汚れた水でも、生きて繁殖することができます。おなかの赤い警告色を昼間にしっかり見せられるのも、昼行性ならではです。
舌を使えないハンター
多くのカエルは、長い舌をすばやくのばして虫をからめとります。ところがチョウセンスズガエルは、その舌をうまくのばすことができません。そのかわり、獲物めがけて体ごと飛びかかり、大きな口でくわえて食べます。食べるのは、ミミズや貝、昆虫などの小さな生きものです。舌にたよらない、体当たりのハンターなのです。
鳴き声と繁殖
「鈴の音」のような鳴き声
チョウセンスズガエルは、カエルには珍しく、耳の鼓膜ものどの鳴嚢(めいのう)も持っていません。多くのカエルが鳴嚢をふくらませて大きな声を出すのに対して、本種は息を吸いこむようにして鳴きます。オスがメスを呼ぶ声は、鈴やトライアングルのような、軽くすんだ音に聞こえます。この鳴き声こそが、「鈴蛙」という名前のもとになりました。
春の産卵とオタマジャクシ
繁殖は、気温が上がって冬眠から目ざめる、5月ごろに始まります。メスは水辺に、一度に数十個の卵のかたまりを産みます。ぜんぶで、一シーズンに300個ほどの卵を産むこともあります。かえったオタマジャクシは6〜8週間ほどで足が生えはじめ、その年の夏の終わりから秋にかけて、小さなカエルへと変態します。
赤いおなかは「毒があるぞ」の合図
反り返っておなかを見せる

敵におそわれてびっくりすると、チョウセンスズガエルは変わったポーズをとります。手足をぐいと持ち上げ、頭を反らせて、赤いおなかを相手に見せつけるのです。ときには、あおむけにひっくり返ることもあります。これは「わたしは毒を持っているぞ」という、はっきりした警告のサインです。地味な背中から一転して赤をちらつかせることで、敵に「食べるとまずい」と思い出させます。
毒は食べもの由来
この赤い警告色のうしろだてになっているのが、皮膚から出す毒です。おどろいたときには、おもに後ろ足から、乳のような毒の液がにじみ出ます。この毒には、ボンベシンという成分がふくまれています。じつはこの毒は、餌の虫などからとりこんだ成分がもとになっています。そのため、毒のもとが少ない飼育下の個体は、野生のものより毒が弱くなります。これは、コバルトヤドクガエルなどヤドクガエルの仲間と同じしくみです。強い毒ではありませんが、さわったあとは目や口をこすらず、手を洗いましょう。
ペットとしても人気
カラフルで丈夫、あまり大きくならないチョウセンスズガエルは、飼いやすいカエルとして日本のペット店でもよく売られています。昼に活動して赤いおなかを見せてくれるので、観察していても楽しい相手です。ただし、一生の多くを水辺で過ごす半水生のカエルなので、陸場と水場の両方をつくる必要があります。皮膚に毒があるため、さわった手はそのつど洗い、ほかの生きものといっしょの水槽に入れないよう気をつけます。
意外な豆知識
じつは、かしこいカエル
チョウセンスズガエルは、カエルのなかまではとても学習が得意なことで知られています。水をごほうびにした迷路の実験では、ほかのカエルがあてもなく動きまわるなか、本種は数日で正しい道を覚えてしまいました。この賢さや飼いやすさから、体のしくみや学習を調べる研究にもよく使われる、科学者にとってもなじみ深いカエルです。
日本にはすんでいない
名前に「チョウセン(朝鮮)」とつくとおり、このカエルは朝鮮半島・中国・ロシアの一部にすみ、日本には自然には分布していません。昔、対馬にいるとされた記録もありましたが、これは見まちがいだったと考えられています。日本で見かけるチョウセンスズガエルは、ペットとして海外から連れてこられたものです。飼っているものを、まちがっても野外に放してはいけません。
カエルという生き物そのものについてはカエルのページもどうぞ。
参考
- IUCN Red List:Bombina orientalis の評価(保全状況・分布)
- Wikipedia(日本語版・英語版)「チョウセンスズガエル/Bombina orientalis」(形態・警告色・毒・鳴き声・学習)
- AmphibiaWeb/Amphibian Species of the World(AMNH):スズガエル科 Bombinatoridae の解説


