モリアオガエル

カエル類

モリアオガエルは、日本の森にすむ、あざやかな緑色のカエルです。木の枝に泡でつくった白い卵のかたまりをぶら下げ、かえったオタマジャクシが雨で下の水面へ落ちていく、という変わった繁殖で知られます。一部の繁殖地は、国の天然記念物にも指定されています。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:両生綱 Amphibia
  • 目:無尾目 Anura
  • 科:アオガエル科 Rhacophoridae
  • 属:Zhangixalus(旧・アオガエル属 Rhacophorus)
  • 種:モリアオガエル Zhangixalus arboreus

和名・英名

  • 和名:モリアオガエル(森青蛙)
  • 英名:Forest Green Tree Frog

別名・学名の由来

和名の「モリアオガエル(森青蛙)」は、森にすむ青緑色のカエル、という姿そのままの名前です。種小名の arboreus(アルボレウス)は「樹上の」という意味で、木の上でくらす習性をよく表しています。長いあいだアオガエル属(Rhacophorus)に分類されてきました。しかし2019年の遺伝子研究をもとに、シュレーゲルアオガエルなどとともに新しい属 Zhangixalus へ移すことが提案されています。本記事もこの新しい学名にそいました。

大きさ・分布などの基本データ

大きさオス 5〜7cm/メス 6〜8cm(メスが大きい)
分布日本・本州の広い範囲(ほぼ日本固有)
生息環境山地の森林。繁殖期は水辺の木の上
繁殖期4〜7月ごろ
保全状況IUCN: LC(軽度懸念)。ただし減少傾向
天然記念物福島・平伏沼、岩手・大揚沼の繁殖地が国指定

見た目と見分け方

緑色の体に赤褐色の斑紋があるモリアオガエル
あざやかな緑色の背に、赤褐色〜黒っぽい斑紋が出たモリアオガエル。ノボホショコロトソ, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

緑の体と、変わる体色

体は角ばった顔つきをした、あざやかな緑色です。背中には赤褐色の細かい斑紋が出ることがあり、これがつながって網目のように見えることもあります。ただし斑紋の出方は個体差が大きく、はっきり出るものもいれば、ほとんど無地のものもいます。周りが岩やコンクリートだと、体の色を灰褐色に変えることもできます。指先は吸盤のようにふくらみ、木の枝や葉にしっかりとつかまれるようになっています。

アマガエル・シュレーゲルとの見分け

同じ緑色でも、ニホンアマガエルは顔つきが丸く、鼻から耳にかけて黒い筋が入るので見分けられます。よく似ているのは、同じ仲間のシュレーゲルアオガエルです。分布も重なりますが、シュレーゲルアオガエルには背中の斑紋がなく、体もひと回り小さめです。日本の本州で背中に斑紋のあるアオガエルの仲間は、モリアオガエルだけなので、斑紋があればほぼ見分けがつきます。

くらしと生態

森の木の上でくらす

モリアオガエルは、名前のとおり山地の森でくらす樹上性のカエルです。繁殖期以外は森の木の上で過ごし、地上に降りてくることはあまりありません。吸盤のついた指で枝を渡り歩き、おもにクモやバッタなどを食べます。いっぽうで、ヘビや鳥、肉食のほ乳類などに狙われる立場でもあります。ふだんの森でのくらしぶりは、じつはまだよくわかっていない部分も多いカエルです。

木の枝に泡の巣を作る

水辺の木の枝にぶら下がる、モリアオガエルの白い泡の卵塊
水辺の木の枝にぶら下がるモリアオガエルの泡状の卵塊。Alpsdake, CC0, via Wikimedia Commons

集まって、泡の卵を産む

4〜7月ごろの繁殖期になると、まずオスが水辺の木の上に集まり、「カララ・カララ」と鳴いてメスを待ちます。メスがやってくるとオスが背中にしがみつき、産卵が始まります。このとき、産卵と同時に出る粘液をオスとメスが足でかき回して、白いあわの塊を作ります。直径10〜15cmほどのあわの中には、300〜800個ほどの卵が産みつけられます。1匹のメスに複数のオスが群がることも多く、あわの塊は水面に張り出した枝にぶら下がるように作られます。この目立つ泡の巣こそ、モリアオガエルの最大の特徴です。

産む木の好みと、泡の変化

産卵する木には、じつは好みがあります。アザミ・クサギ・ウド・ニワトコといった植物にはよく卵を産みますが、なぜかスギにはほとんど産みません。オスの鳴き声も、はじめの「カララ・カララ」に続いて「コロコロ」「クックック」と変わっていきます。産卵が終わると、泡の表面はしだいに乾いて、紙のようなかたいシートになります。このシートが、中の卵を乾燥や外敵から守るのです。

オタマジャクシは雨で水へ落ちる

卵は1週間ほどでかえりますが、オタマジャクシはすぐには外へ出ません。あわの塊の中で、雨が降るのを待つのです。雨であわがとけ崩れると、その流れといっしょに、真下の水面へ次々と落ちていきます。木の上の巣から水へ「落下」してデビューするというわけです。ただし水面の下では、アカハライモリが泡巣の真下で待ちかまえ、落ちてくるオタマジャクシを食べてしまうこともあります。

オタマジャクシからカエルへ

無事に水にたどり着いたオタマジャクシは、全長5cmほどまで育ちます。おもに水の中の藻を食べますが、落ち葉ばかりで藻の少ない場所では、うまくカエルに変態できないことも分かっています。水の中では、ヤゴやゲンゴロウ、タイコウチといった肉食の虫が天敵です。前足と後ろ足がそろってカエルの姿になると、体長1.5〜2cmほどの小さな子ガエルになります。そして陸に上がり、やがて森でくらしはじめます。受精から変態を終えるまでは、およそ44日ほどです。冬のあいだは、浅い土の中やコケの下でじっと冬眠して越します。

人との関わり

天然記念物になっている繁殖地

木の枝にぶら下がる泡の巣は昔から人の目を引き、集団で産卵する場所は各地で大切にされてきました。福島県川内村の「平伏沼(へぶすぬま)」と、岩手県八幡平市の「大揚沼(おおあげぬま)」の繁殖地は、いずれも国の天然記念物に指定されています。このほかにも、都道府県や市町村が天然記念物に指定して保護している場所が各地にあります。繁殖期には多くの人が、木の上の泡の巣を見に訪れます。

数は減っている?

広い範囲にすんでいるモリアオガエルですが、その数はゆっくりと減りつつあるようです。IUCNの評価でも、絶滅の心配は今のところ大きくないものの、個体数は減少傾向とされています。日本国内に目を向けると、いくつかの県では絶滅のおそれのある種としてレッドリストに載りました。たとえば奈良県では絶滅危惧I類、埼玉県・千葉県・兵庫県・岡山県では絶滅危惧II類です。その背景には、産卵に使う水辺の木や、里山の池・水田が減っていることがあると見られています。

飼うのは難しい?

樹上でくらし、生きた虫を食べるモリアオガエルは、地面でじっとしているツノガエルなどにくらべて飼育がやさしくありません。高さのあるケージや、枝・湿度の管理が必要になります。また、天然記念物に指定された地域では、捕まえることが禁じられています。身近な森や池で出会っても、そっと観察するのが基本です。泡の巣を見つけたら、こわさずに見守ってあげてください。

意外な豆知識

産卵は命がけ

木の上での産卵は、安全そうに見えて、じつは危険と隣り合わせです。モリアオガエルの産卵期には、ふだん昼行性のヘビが夜も活動するようになり、樹上をはい回ってカエルを狙うことが知られています。また、泡の卵塊をニホンザルが食べてしまう様子も観察されています。目立つ場所で子孫を残すぶん、親も卵も、たくさんの天敵に見つかりやすいのです。

関東平野にいるのは「よそ者」かも

モリアオガエルは本州の広い範囲にすんでいますが、関東平野の一帯や福島県の浜通り地方には、もともと分布していないと考えられています。そのため、これらの地域で見つかる個体は、別の土地から人の手で持ち込まれた「国内外来種」の可能性が指摘されています。実際に神奈川県の一部の個体は、遺伝子を調べると富山県・京都府・岡山県のものに近く、人による移入の可能性が高いとされています。同じ日本の在来種でも、本来いない場所に持ち込むと、その土地の生きものに影響を与えてしまうことがあるのです。

オスの体の意外なひみつ

集団での産卵では、1匹のメスに何匹ものオスが群がります。これはオスにとって、ほかのオスとのはげしい競争を意味します。そのためか、モリアオガエルのオスは、体の大きさのわりに精巣(精子を作る器官)がとても大きいことが知られています。にぎやかな集団産卵の裏には、目に見えない競争もかくれているのです。

カエルという生き物そのものについてはカエルのページもどうぞ。

参考

  • IUCN Red List:Zhangixalus arboreus の評価(保全状況・減少傾向、2021年)
  • Wikipedia(日本語版)「モリアオガエル」(形態・生態・分布・天然記念物・国内外来種)
  • 文化庁 文化遺産オンライン:平伏沼/大揚沼モリアオガエル繁殖地(天然記念物指定)

画像出典

サムネイル画像: Motokoka, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

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