アズマヒキガエル

カエル類

アズマヒキガエルは、東日本の野山や庭先でよく見られる、大きくてイボだらけのカエルです。「ガマガエル」の名でも親しまれ、跳ねるよりも、のっそりと歩くのが特徴です。耳のうしろには毒を出す大きな腺があり、身を守っています。春になると、たくさんの個体が水辺に集まって産卵する「蛙合戦(かえるがっせん)」でも知られます。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:両生綱 Amphibia
  • 目:無尾目 Anura
  • 科:ヒキガエル科 Bufonidae
  • 属:ヒキガエル属 Bufo
  • 種:アズマヒキガエル Bufo formosus

和名・英名

  • 和名:アズマヒキガエル(東蟇蛙)
  • 別名:ガマガエル・イボガエル・ガマ

別名・学名の由来

「アズマ(東)」は、おもに東日本に分布することにちなみます。ずんぐりした姿から「ガマガエル」、イボだらけの皮膚から「イボガエル」とも呼ばれます。もともとはニホンヒキガエルの東日本の亜種とされていましたが、今では独立した種 Bufo formosus とみなすのが主流です。西日本のニホンヒキガエルとは、とてもよく似た兄弟のような関係です。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体長 6〜18cm(メスが大きい・大型のカエル)
分布東日本を中心に、東北〜近畿・山陰北部
生息環境森林・草地・人家の庭など。地上でくらす
食べもの昆虫やミミズなど(動物食)
耳のうしろの腺や皮膚から出す(ブフォトキシン)
別名ガマガエル・イボガエル

見た目と見分け方

イボだらけの皮膚をした大きなアズマヒキガエル
全身をおおうイボと、目のうしろの大きな毒腺(耳腺)。KKPCW, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

大きなイボと、赤い斑点

体長は6〜18cmほどで、日本のカエルのなかでは大型です。体の色は褐色や黄褐色、赤褐色などで、全身が大小のイボにおおわれています。体の横に赤っぽい斑点が入る個体が多いのも目印です。目のうしろにある鼓膜(こまく)は大きく、目と鼓膜のあいだの長さよりも、鼓膜の直径のほうが大きいほどです。ずんぐりとした体つきで、いかにも「ガマガエル」らしい姿をしています。

跳ねずに、のっそり歩く

ほかの多くのカエルがピョンピョン跳ねるのに対して、アズマヒキガエルはあまり跳ねません。ずんぐりした体で、地面をのっそりと歩くように移動します。動きはゆっくりでおっとりしていますが、これは強い毒を持っているため、あわてて逃げる必要がないからでもあります。木にはあまり登らず、一生のほとんどを地面の上で過ごす地上性のカエルです。

ニホンヒキガエルとの違い

よく似たなかまに、おもに西日本にすむニホンヒキガエルがいます。この二種は見た目がとてもよく似ていて、慣れないと見分けるのは大変です。ひとつの手がかりは、目のうしろの鼓膜の大きさです。アズマヒキガエルは鼓膜が大きく、目から鼓膜までの距離よりも、鼓膜の直径のほうが大きくなります。ただし、いちばん確実な手がかりは「どこで見つけたか」です。東日本ならアズマヒキガエル、西日本ならニホンヒキガエルの可能性が高くなります。

くらしと生態

夜、ミミズや虫をさがす

アズマヒキガエルは夜行性で、昼間は石や倒木の下などでじっと休んでいます。夜になると出てきて、昆虫やミミズなどの動物をさがして食べます。獲物を見つけると、すばやく舌をのばして捕らえます。ふだんはほとんど鳴きませんが、繁殖期のオスは「クックッ」という低い声を出すことがあります。人家の庭に住みつくこともあり、意外と人の身近でくらしているカエルです。

春の「蛙合戦」

水場に集まって産卵する

春の繁殖期になると、たくさんのアズマヒキガエルが、数日から1週間ほどの短いあいだに同じ池や水たまりへ一斉に集まります。この光景は、昔から「蛙合戦(かえるがっせん)」や「ガマ合戦」と呼ばれてきました。オスはメスの背中に抱きつく「抱接(ほうせつ)」をしますが、このときのオスは動くものなら何にでも抱きつこうとします。ときには一匹のメスに何匹ものオスが群がり、メスをおし包んでしまうこともあります。

紐のような卵からオタマジャクシへ

水中に産みつけられた、アズマヒキガエルの長い紐状の卵
長い紐のなかに黒い卵が数珠のように並ぶ、アズマヒキガエルの卵。Alpsdake, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

アズマヒキガエルの卵は、ほかのカエルとちがって、長い紐(ひも)のような寒天につつまれています。この紐状の卵のなかに、黒い卵が1500〜8000個ほど、数珠のように並んで産みつけられます。やがてかえったオタマジャクシは、全身が黒くて全長3cmほど。ヒキガエルのオタマジャクシは黒くかたまって泳ぐので、遠くからでもよく目立ちます。1〜3か月ほどかけて変態し、小さな子ガエルになって陸へ上がっていきます。

耳のうしろの毒に注意

アズマヒキガエルは、目のうしろにある大きな腺(耳腺)や皮膚のイボから、ブフォトキシンという毒を出します。これは身を守るための毒です。そっとさわるくらいなら問題ありませんが、その毒がついた手で目や口をこすると激しい痛みが出ます。とくに犬などのペットが口にくわえると、中毒を起こして危険なことがあります。さわったあとは必ず手を洗い、目や口をこすらないようにしてください。なお、毒に耐性を持つヘビのヤマカガシは、このカエルを平気で食べます。そしてうばった毒を、自分の首から出す毒として使い回すことが分かっています。

意外な豆知識

「ガマの油」のほんとうのところ

時代劇などに出てくる「ガマの油売り」で有名な「ガマの油」は、ヒキガエルの皮膚からしみ出る液を薬にしたもの、と言われてきました。ただし実際に傷薬として使われたのは、馬の油や植物の「ガマ」のほうだったという説もあり、本当のところははっきりしていません。いっぽうで、耳腺から出る分泌物を加工した「蟾酥(せんそ)」は、心臓の薬などに使われてきた本物の生薬です。同じカエルの毒が、身を守る武器にも、人の薬にもなっているわけです。

「四六のガマ」ってなに?

ガマの油売りの口上に出てくる「四六のガマ(しろくのガマ)」は、前足の指が4本・後足の指が5本のガマ、という意味です。じつはヒキガエルにかぎらず、カエルの指はふつう前足が4本・後足が5本です。特別なことではありません。繁殖期のオスの前足にできる「婚姻瘤(こんいんりゅう)」というこぶを、6本目の指と勘違いしたことから生まれた言い方だと考えられています。

北海道では「困った外来種」

アズマヒキガエルは東日本の在来種ですが、じつは北海道には、もともといませんでした。人の手で持ち込まれたものが野生化し、今では国内外来種として問題になっています。北海道には、この毒に耐性のあるヤマカガシがいません。そのため天敵が少なく、数を増やしやすいのです。北海道にすむエゾアカガエルのオタマジャクシが、かえったばかりのアズマヒキガエルの幼生を食べると、その毒でほぼ確実に死んでしまうことも分かっています。北海道では2017年に指定外来種となり、駆除が進められています。身近な在来種でも、本来いない土地では、生きものの世界を大きくかき乱してしまうのです。

カエルという生き物そのものについてはカエルのページもどうぞ。

参考

  • Wikipedia(日本語版)「アズマヒキガエル」「ニホンヒキガエル」(形態・生態・繁殖・毒・北海道の外来種問題)
  • Amphibian Species of the World(AMNH):Bufo formosus(分類・独立種の扱い)
  • AmphibiaWeb:ヒキガエル科 Bufonidae/Bufo の解説

画像出典

サムネイル画像: Σ64, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

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