アカトマトガエルは、その名のとおり、まっ赤なトマトのような色をしたカエルです。アフリカのマダガスカルだけにすむ固有種で、外敵におそわれると体をぷうっとふくらませ、皮膚から白いネバネバした液を出して身を守ります。あざやかな赤色と、ユニークな防御のしかたで人気のカエルです。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:両生綱 Amphibia
- 目:無尾目(むびもく) Anura
- 科:ヒメアマガエル科 Microhylidae
- 属:トマトガエル属(ディスコフス属) Dyscophus
- 種:アカトマトガエル Dyscophus antongilii
和名・英名
- 和名:アカトマトガエル
- 英名:Tomato frog
名前の由来
名前は、まん丸でまっ赤な姿が、まるでトマトのように見えることから付けられました。英語でも「Tomato frog(トマトのカエル)」と、そのままの名前で呼ばれています。見た目そっくりの分かりやすい名前が、世界じゅうで親しまれています。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | メス 最大10cm・オス 6〜7cmほど(メスが大きい) |
|---|---|
| 分類 | ヒメアマガエル科 トマトガエル属 |
| 分布 | マダガスカル北東部(アントンギル湾のまわり)だけ(固有種) |
| 生息環境 | 熱帯雨林の周りの湿った低地(二次林や畑の近くにも) |
| 食べ物 | アリ・甲虫・クモ・ミミズなど(肉食) |
| 寿命 | 飼育下で6〜10年ほど |
| 保全状況 | IUCN:軽度懸念(LC)※CITES附属書II |
トマトそっくりの真っ赤な体
メスは真っ赤で大きい
アカトマトガエルは、赤や橙(だいだい)色の、あざやかな体をしています。じつは、真っ赤で目立つのはメスのほうです。メスは最大10cmほどまで大きくなりますが、オスは6〜7cmと小さめで、色もややくすんでいます。体はまん丸でふっくらとし、目は大きく、金属のような光沢(こうたく)があります。

赤い色は「危険」の合図
この目立つ赤色には、意味があります。「わたしは危険だぞ」と、敵に知らせる警告の色(警告色)なのです。あざやかな色をあえて見せることで、「食べても嫌な思いをするぞ」と伝えています。ヤドクガエルの派手な色と同じ、身を守るための作戦です。
ふくらんで、白いネバネバで身を守る
体をふくらませて威嚇する
アカトマトガエルは、あまりすばやく動くカエルではありません。跳びはねるより、腹ばいでのそのそ這うように歩きます。そのぶん、身を守るためのユニークな方法を持っています。敵に近づかれると、まず体をぷうっと大きくふくらませ、実際よりも大きく見せて威嚇します。

白いネバネバした液を出す
それでも敵が口にくわえると、皮膚から白いネバネバした液を出します。この液はねばついていて、敵の口や目をふさいでしまいます。びっくりした敵は、たまらずカエルを放してしまうのです。まさに「くっつけて、にげる」という作戦です。
人がさわるときの注意
この白い液には、弱い毒がふくまれています。人がさわった場合、まれにアレルギー(皮膚のかゆみやかぶれ)を起こすことがあります。命に関わるほど強いものではありませんが、目や口などの粘膜(ねんまく)につくとよくないので、さわったあとは手をよく洗うことが大切です。
マダガスカルでの暮らし
島の北東だけにすむ
アカトマトガエルがすむのは、マダガスカル島の北東部、アントンギル湾のまわりだけです。熱帯雨林の周りの、湿った低地を好みます。夜行性で、昼は落ち葉や土の中にかくれ、夜になると地面を歩いて虫をさがします。動く獲物を見つけると、ねばつく舌をさっとのばして、すばやく捕まえます。たくさんの虫を食べて数を調整する一方で、自分もヘビや大きな鳥に食べられます。森の食物連鎖の中間をつなぐ、大切な役目を持っているのです。

雨季に繁殖する
繁殖は、マダガスカルの雨季(11月〜4月)に行われます。大雨のあとにできた一時的な水たまりが、産卵の場所になります。オスは低くて鼻にかかったような声で鳴き、メスをよびます。相手が見つかると、オスがメスの背中に乗る「抱接(ほうせつ)」の姿勢をとり、産卵をうながします。メスは一度に1,000〜1,500個もの卵を、水面にまとめて産みます。オタマジャクシは30〜45日ほどで変態し、小さな子ガエルになります。生まれたばかりの子は色が淡く、育つにつれて、だんだん赤くなっていきます。
保全と飼育
「絶滅危惧」から見直された
アカトマトガエルは、すむ場所がとても狭いため、以前は絶滅が心配される種とされていました。国際取引を規制するワシントン条約(CITES)でも、かつてはもっとも厳しい附属書Iに指定されていた時期があります。その後、くわしく調べ直した結果、思っていたより数は保たれているとわかりました。今はIUCNレッドリストで「軽度懸念(LC)」とされています。
とはいえ、安心はできません。マダガスカルでは森林の伐採や湿地の埋め立てが進んでおり、狭い地域にしかいないこのカエルにとって、生息地の減少は今も大きな脅威です。現在もCITES附属書IIで、国際取引には規制が続いています。
ペットとして飼えるの?
あざやかな見た目とおとなしい性質から、アカトマトガエルは観賞用として人気があり、日本でも飼われています。今出回っている個体の多くは、野生で捕られたものではなく、飼育下で繁殖させた個体(CB)です。飼うときは、湿度と温度の管理や、もぐれる土を用意することが大切です。ストレスを与えない環境づくりが、元気に長生きさせるコツです。
知っておきたい豆知識
そっくりな「ヒメトマトガエル」
アカトマトガエルには、とてもよく似た近縁種の「ヒメトマトガエル(Dyscophus guineti)」がいます。見た目がそっくりで、昔は同じ種とされたこともありました。今では、遺伝子や生息地の違いから別の種とされています。じつは、ペットとして出回っているトマトガエルの多くは、このヒメトマトガエルのほうだといわれています。
マダガスカルだけの仲間
トマトガエル属(Dyscophus)は、マダガスカルにしかいない仲間です。長いあいだ島の中で独自に進化してきた、マダガスカルの自然を象徴する生きものの一つといえます。ほかの生きものとおなじように、この島の豊かな自然が守られてこそ、赤いカエルたちも生きていけるのです。

参考
- IUCN Red List: Dyscophus antongilii(軽度懸念LC)
- Wikipedia「Tomato frog」(英語版・防御の分泌物/雌雄差/近縁種)
- AmphibiaWeb「Dyscophus antongilii」


