ヌマガエルは、西日本の水田でいちばんよく見かける、小さな茶色いカエルです。背中のまん中に、白い線がすっと1本入る個体がいるのが特徴です。もともとは南のあたたかい地方のカエルですが、近ごろは北の関東地方などにも広がっています。田んぼの地面をぴょんぴょんと動きまわる、身近な生きものです。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:両生綱 Amphibia
- 目:無尾目 Anura
- 科:ヌマガエル科 Dicroglossidae
- 属:ヌマガエル属 Fejervarya
- 種:ヌマガエル Fejervarya kawamurai
和名・英名
- 和名:ヌマガエル(沼蛙)
- 英名:Rice frog(稲田のカエル)の仲間
別名・学名の由来
和名の「沼蛙」は、沼や水田などの水辺にすむことにちなみます。以前は、東南アジアから日本まで広く分布するカエルとして、ひとまとめに Fejervarya limnocharis という学名で呼ばれていました。しかし、DNAの研究が進んだ結果、地域ごとに別の種へと分けられました。日本・台湾・中国のものは、2011年に Fejervarya kawamurai という独立した種になりました。種小名 kawamurai は、日本のカエル研究者にちなんだ名前です。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 3〜5cm(メスが大きい・小型) |
|---|---|
| 分布 | 本州中部以西〜九州・南西諸島、台湾、中国。近年は関東でも |
| 生息環境 | 水田・湿地・池・川など。地上でくらす |
| 食べもの | 小さな昆虫など(肉食) |
| 繁殖期 | 4〜8月と幅広い |
| 別名 | センヒキガエル(線引き蛙)など |
見た目と見分け方
茶色い体と、背中の白い線
体長は3〜5cmほどの小さなカエルです。背中側は灰褐色(茶色っぽい灰色)のまだら模様で、小さなイボがならびます。多くの個体は、背中のまん中に細い白い線(背中線)が通っています。ただし、この線があるかどうかには地域差があり、線のない個体も少なくありません。おなか側は白いのも目印です。指先には吸盤がなく、地面での生活に向いた体つきをしています。
ツチガエルとの見分け

よく似たカエルに、ツチガエルがいます。どちらも茶色くイボがありますが、見分けるポイントがいくつかあります。ヌマガエルはおなかが白いのに対して、ツチガエルはおなかにもまだら模様があります。また、ヌマガエルのイボは小さくて手ざわりがスベスベしていて、いやなにおいもほとんどありません。いっぽうツチガエルは、イボがゴツゴツして、つかむとくさいにおいを出すため「クサガエル」とも呼ばれます。
くらしと生態
田んぼの地上ぐらし
ヌマガエルは、水田や湿地・池・川などの水辺に多くすんでいます。指に吸盤がないため木にはのぼらず、もっぱら地面の上でくらす地上性のカエルです。水辺からはなれた畑や草原、ときには海水がまじる河口ちかくで見つかることもあります。食べものは小さな昆虫などです。いっぽうで、ヘビやイタチ・タヌキ・サギなどに食べられてしまう側でもあります。

鳴き声と、バラバラの卵
田んぼにひびくオスの声
繁殖期は4月から8月ごろと幅広く、この時期の夜の水田には、オスの鳴き声がひびきわたります。オスののどには、前が二つに分かれたハート型の鳴嚢(めいのう)があります。声そのものは大きいのですが、ニホンアマガエルにくらべると低い声で、鳴くテンポもゆっくりです。田んぼでいくつものカエルの声が重なると、にぎやかな夜の合唱になります。
卵は少しずつ、バラバラに
ヌマガエルの卵の産み方には、ちょっとした特徴があります。1匹のメスが一シーズンに産む卵は1200個ほどですが、一度にまとめて産むのではなく、数十個ずつ何回にも分けて産みます。しかも、産んだ卵はまとまらずにバラバラになりやすいのです。大きな卵のかたまりをつくる他のカエルにくらべると、見つけるのがなかなか大変です。卵そのものも直径1.2mmほどと、カエルの卵としては小さめです。
暑さに強いオタマジャクシ
ヌマガエルのオタマジャクシは、暑さにとても強いことで知られています。真夏の水田では、水温が40℃をこえることもあります。そんな熱いお湯のような水の中でも、ヌマガエルのオタマジャクシは生き残って育つことができます。ほかの多くのカエルではとても無理な環境で、南方系のカエルらしい、たくましさをそなえているのです。尾にまだら模様があるのも、このオタマジャクシの特徴です。
北へ広がるカエル
ヌマガエルは、もともと南のあたたかい地方にすむ南方系のカエルで、昔は本州でも中部より西でしか見られませんでした。ところが1990年代ごろから、関東地方や対馬・五島列島など、本来はいなかった地域でも見つかるようになりました。人の荷物や苗にまぎれて運ばれたり、暖かい気候が広がったりしたことが理由と考えられています。こうして本来の分布からはずれた土地に住みついたものは、「国内外来種」と呼ばれます。同じ日本のカエルでも、いなかった場所に増えると、その土地のもとの生きものに影響を与えることがあります。だからこそ、注意が必要なのです。
意外な豆知識
「センヒキガエル」とも呼ばれた
背中のまん中に通る白い線から、ヌマガエルは地方によって「センヒキガエル(線引き蛙)」とも呼ばれてきました。じつは、この白い線を持つ個体の割合には、はっきりした地域差があります。九州では白い線のある個体が多い一方で、南西諸島や本州、四国では線のない個体が多くなります。同じヌマガエルでも、すむ地方によって見た目の印象が変わるのです。
さわっても大丈夫?
ヌマガエルには、ヒキガエルのような強い毒はありません。手でそっとさわるくらいなら、基本的には問題のないカエルです。ただし、カエルなど両生類の皮ふはとてもデリケートで、人の手のあぶらや温もりに弱い面があります。また、まれにおなかをこわす菌を持っていることもあります。さわったあとは目や口をこすらず、手を洗うようにしましょう。カエルにとっても人にとっても、そのほうが安心です。
カエルという生き物そのものについてはカエルのページもどうぞ。
参考
- Wikipedia(日本語版)「ヌマガエル」(形態・地域差・生態・繁殖・分布拡大)
- Amphibian Species of the World(AMNH):Fejervarya kawamurai(分類・独立種の扱い)
- AmphibiaWeb:ヌマガエル科 Dicroglossidae/Fejervarya の解説


