ハリネズミは、背中いっぱいの針と、まん丸に縮こまる姿で知られる小さな動物です。世界に17種ほどがいて、ペットとして飼われるのは主にヨツユビハリネズミという種です。名前に「ネズミ」と付きますが、ネズミの仲間ではなく、モグラに近い動物です。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:真無盲腸目(しんむもうちょうもく/ハリネズミ目)Eulipotyphla
- 科:ハリネズミ科 Erinaceidae
- 代表種:ヨーロッパハリネズミ Erinaceus europaeus/ヨツユビハリネズミ Atelerix albiventris
和名・英名
- 和名:ハリネズミ(漢字で「針鼠」)
- 英名:Hedgehog
別名・名前の由来
「ハリネズミ」はネズミと名づけられていますが、ネズミの仲間(齧歯類)ではありません。モグラなどに近い、虫を食べる仲間です。英語の Hedgehog は「生垣(hedge)のブタ(hog)」という意味です。ブタのように鼻を鳴らしながら、生垣の下をかぎ回る姿からついた名前だといわれます。ペットとしておなじみのヨツユビハリネズミは、アフリカ生まれの小型の種です。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | ペットのヨツユビハリネズミで体長 約15〜20cm・体重 約300〜500g(ヨーロッパの種はもっと大きく約25cm) |
|---|---|
| 分布 | ヨーロッパ・アジア・アフリカ。日本や南北アメリカには自然分布しない |
| 生息環境 | 森・草地・農地・庭など |
| 食べもの | 雑食(昆虫が中心。ミミズ・カタツムリ・果実なども) |
| 寿命 | ペットで 約3〜5年(長くて8年ほど)/野生では2〜7年 |
| 保全状況 | 種によって異なる。ヨツユビハリネズミは IUCN: LC(軽度懸念) |
ハリネズミの種類
ハリネズミの仲間は、世界に17種ほどが知られています。ヨーロッパ・アジア・アフリカにすみ分け、暮らす場所も森から乾いた土地までさまざまです。代表的な種は次のとおりです。
ヨツユビハリネズミ(ペットの定番)
アフリカ中部の草原にすむ小型の種です。日本でペットとして飼われるのは、主にこの種です。後ろあしの指が4本であることが名前の由来で、体長は15〜20cmほど。「アフリカハリネズミ属」に属し、特定外来生物には含まれません。
ヨーロッパハリネズミ
ヨーロッパの庭や公園でおなじみの、大きめの種です。日本では、特定外来生物に指定された「ハリネズミ属」の一つで、飼うことはできません。
その他の仲間
ほかにも、環境に合わせたさまざまな種がいます。
- アムールハリネズミ……東アジアにすむ種で、日本で野生化したのもこの仲間です。
- オオミミハリネズミ……名前のとおり耳が大きく、乾いた土地にすみます。
- デザートヘッジホッグ……砂漠で暮らす小型の種です。
背中の針

針は毛が変化したもの
ハリネズミの針は、毛が変化したものです。中は空どうになっていて、かたいケラチンという成分でできています。人のつめや髪の毛と同じ成分です。1匹の背中には、数千本もの針がびっしりと生えています。この針には毒はありません。ヤマアラシの針のように、簡単にぬけて相手に刺さることもありません。
「針を飛ばす」はできない
「ハリネズミは針を飛ばす」と思われがちですが、これは誤解です。針は背中にしっかりついていて、自分の意思で発射することはできません。ただし、赤ちゃんのころに一度、子どもの針が大人の針へ生え変わる時期があります。このときぬけた針が落ちていることはありますが、飛ばして攻撃しているわけではありません。
まん丸に縮こまって身を守る

ハリネズミの身の守り方は、体をまん丸に縮めることです。背中には大きな2つの筋肉があり、これをぎゅっと縮めると、頭も手足もすっぽり針の内側に包まれます。外側は針だらけのボールになり、やわらかいお腹はかくれます。キツネやフクロウのような天敵も、針の玉には手を出しにくくなります。おどろいたときや眠るときにも、この丸まる姿がよく見られます。
夜行性で雑食の暮らし

夜に虫をさがす
ハリネズミは、おもに夜に活動する夜行性の動物です。昼はかれ葉や巣の中で眠り、暗くなると起き出してえさをさがします。食べものは昆虫が中心ですが、ミミズやカタツムリ、果実なども食べる雑食です。鼻がよくきき、地面のにおいをたどって獲物を見つけます。
寒くなると冬眠する
野生のハリネズミは、寒い冬になると冬眠します。冬眠中は体温が30度ほどから5度前後まで下がり、心臓の動きもぐっとゆっくりになります。こうして、えさの少ない冬をじっと乗りこえます。ただし、ペットのヨツユビハリネズミは暖かい地方の生まれで、冬眠は体に大きな負担になります。
体に泡をぬる「アンティング」
ハリネズミには、変わったくせがあります。はじめてのにおいに出会うと、その物をなめて口の中で泡をつくり、その泡を自分の針にぬりつけます。「アンティング(自己塗布)」と呼ばれる行動です。においを体につけて敵から身を守るため、あるいは体の手入れのためなど、いくつかの説があります。ただ、本当の理由ははっきりとは分かっていません。
ペットとしてのハリネズミ

なれやすさと、におい
ペットのハリネズミは、犬や猫のように甘えてなつくわけではありません。ただ、毎日やさしく世話をすると、飼い主のにおいを覚えて手の上で落ち着くようになります。「なつく」というより「慣れる」動物です。体そのもののにおいは少なめですが、ふんやおしっこの始末をこまめにしないと、においが気になります。慣れないうちは、警戒して針を立てるので、少しチクチクします。
温度の管理が何より大切
飼うときにいちばん気をつけたいのが温度です。ヨツユビハリネズミは暑い地方の生まれで、寒さに弱い動物です。部屋がおよそ24〜29度に保たれるよう、ヒーターなどで温めます。寒いと、冬眠のような状態に入ってそのまま弱ってしまう危険があります。ペットのハリネズミには、冬眠をさせないのが基本です。
赤ちゃんと寿命
生まれたばかりの赤ちゃんは、やわらかい白い針しか持たず、手のひらに乗るほどの小ささです。成長とともに針がかたくなり、色もついてきます。ペットとして飼った場合の寿命は、およそ3〜5年です。温度や食事の管理が必要で、小さな体のわりに世話に手間のかかる動物です。
日本での外来種問題

逃げたペットが野生化
ハリネズミはもともと日本にはいない動物です。ところが、逃げ出したり放されたりしたペットが野外で増え、神奈川県や静岡県などで野生化しています。そのため日本では、ヨーロッパハリネズミなどをふくむ「ハリネズミ属」が、2006年に「特定外来生物」に指定されました。これらは飼うことも、野に放すことも禁止されています。
ペットのヨツユビは飼える
いっぽう、ペットとして人気のヨツユビハリネズミは、これとは別の「アフリカハリネズミ属」の仲間です。特定外来生物には含まれないため、今も飼うことができます。どちらにしても、飼っている生きものを野外に逃がさないことが、飼い主の大切な責任です。
豆知識

ハリネズミは、ヘビの毒に強いことでも知られます。体の中に毒のはたらきを弱める成分を持ち、マムシのような毒ヘビにかまれても平気なことがあります。虫だけでなく、ときにはヘビも食べます。丸くなる針の守りに加え、毒への強さもあわせ持つ動物です。
参考
- Wikipedia(英語版)「Hedgehog」(分類・針・自己塗布・食性・繁殖)
- Wikipedia(日本語版)「ハリネズミ」(特定外来生物指定・名前の由来・日本での野生化)
- IUCN Red List:Erinaceus europaeus・Atelerix albiventris(分布と保全状況)
画像出典
アイキャッチ画像: Michael Gäbler, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(本文中の写真は各キャプションに出典を記載)

