ヌーは、アフリカの草原(サバンナ)にすむ、ウシ科の草食動物です。ウシのような顔とツノ、ウマのようなたてがみとしっぽを持つ、ふしぎな姿をしています。150万頭もの大群で草原を移動する「大移動」と、ワニの待つ川を渡る「川渡り」で世界的に知られています。
分類と学名
- 界:動物界
- 門:脊索動物門(せきさくどうぶつもん)
- 綱:哺乳綱(ほにゅうこう)
- 目:鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)
- 科:ウシ科
- 属:ヌー属(Connochaetes)
- 種:オグロヌー Connochaetes taurinus / オジロヌー Connochaetes gnou
ヌーはウシ科の動物で、シカのような「レイヨウ(アンテロープ)」の仲間です。英語では Wildebeest(ワイルドビースト)または Gnu(ヌー)と呼ばれます。ヌーという名前は、この動物の鳴き声からきたといわれています。属名の Connochaetes は、ギリシャ語の「ひげ」と「たてがみ」を合わせた言葉で、その見た目をよく表しています。
ヌーには2種いて、大移動で有名なのは「オグロヌー(ブルーヌー)」です。もう1種の「オジロヌー(ブラックヌー)」は南アフリカにすみ、少し小型です。この2種は、およそ100万年前に分かれたと考えられています。
基本データ
| 肩の高さ | 約1.2〜1.5m |
| 体重 | 約120〜250kg(オスの方が大きい) |
| 分布 | 東アフリカ〜南アフリカの草原 |
| すみか | サバンナ(草原)や、まばらな林 |
| 食べもの | おもに草(みじかい草を好む) |
| 活動 | 昼に活動。大きな群れで暮らす |
| 保全状況 | 低危険種(LC/IUCN) |
ヌーは、わたしたち人間と同じ体温を一定にたもつ恒温動物(こうおんどうぶつ)です。ウシの仲間らしく、草を食べては口にもどしてかみ直す「反すう」をします。
どんな姿の動物?

ウシ・ウマ・レイヨウを混ぜたような姿
ヌーは「いろいろな動物を混ぜたような見た目」でよく知られています。大きくて角ばった顔と曲がったツノはウシのよう、首のたてがみと長いしっぽはウマのよう、そして細めの足はレイヨウのようです。「ヌーに似た動物は?」と探すと、こうしたいろいろな動物の名が出てくるのは、そのためです。
オスもメスもツノを持つ
ヌーは、オスだけでなくメスにも、左右に曲がったツノがあります。体の色は青みがかった灰色で、顔や首には黒っぽいすじが入ります。オスはメスより体が大きく、なわばりを守るときにはツノを突き合わせて争います。あごの下には、名前の由来にもなったふさふさのひげがあります。
草原をめぐる「大移動」

150万頭の大行進
ヌーでいちばん有名なのが、「グレートマイグレーション(大移動)」です。東アフリカでは、およそ150万頭ものヌーが、シマウマなどといっしょに大群になって草原を移動します。地平線までヌーで埋めつくされるほどの、地球でも有数の大迫力の光景です。
なぜ移動するの?
ヌーが移動するのは、雨がふって新しい草が生える場所を追いかけているからです。アフリカの草原では、季節によって雨のふる地域が移り変わります。ヌーは、みずみずしい草と水を求めて旅を続けます。タンザニアのセレンゲティとケニアのマサイマラのあいだを、1年かけてぐるりと大きく回るのです。7〜10月ごろには、マサイマラのあたりで川渡りが見られます。
1年をめぐる旅のカレンダー
雨季は南で子育て
雨がふる1〜3月ごろ、ヌーはセレンゲティ南部の草原にいます。草がたっぷり生えるこの時期に、赤ちゃんをいっせいに産んで育てます。緑の草原は、子どもを育てるのにぴったりの場所です。
乾季は北へ、そして川渡り
雨がやんで草がかれてくると、ヌーは水と草を求めて北へ向かいます。そして乾季の7〜10月ごろ、北のマサイマラをめざす道すじで、あの命がけの川渡りが起こります。雨季になるとまた南へもどり、この大きな輪をぐるぐるとくり返します。
命がけの川渡り

ワニの待つマラ川
大移動のとちゅうには、大きな川がいくつも横たわっています。とくに有名なのが、ケニアとタンザニアの境を流れるマラ川です。川の水の中には大きなワニがひそんでいて、渡るヌーをねらっています。多くのヌーがワニに食べられたり、おし合いの中でおぼれたりして命を落とします。
なぜ危険でも渡るのか
そんなに危険なのに、なぜ川を渡るのでしょうか。それは、川の向こうにある新しい草を食べなければ、群れ全体が生きていけないからです。1頭ずつでは川岸でためらいますが、後ろから群れがおし寄せると、いっせいに川へ飛びこみます。危険を乗りこえて渡った先で、ヌーはまた草をたっぷり食べられます。多くの命を失いながらも、群れとして生きのびるための旅なのです。
赤ちゃんと群れ

みんな同じ時期に生まれる
ヌーの赤ちゃんは、多くが同じ短い時期(雨季のはじめ)に、いっせいに生まれます。数週間のあいだに、何十万頭もの赤ちゃんが生まれるのです。同じ時期に一度にたくさん生まれると、ライオンなどの天敵が食べきれず、生きのこる赤ちゃんが多くなります。これは、群れ全体で子を守るための作戦だと考えられています。
生まれて数分で立って走る
生まれたばかりのヌーの赤ちゃんは、なんと数分で自分の足で立ち上がり、すぐに走れるようになります。天敵の多い草原では、生まれてすぐ動けることが、生きのびるための大切な力です。赤ちゃんは母親のそばをはなれず、大群といっしょに大移動の旅にも加わります。
シマウマといっしょの群れ

ヌーは、シマウマとよくいっしょの群れで行動します。たがいに天敵を見張り合えるので、どちらにとっても安全だからです。シマウマは草の上のかたい部分を、ヌーはその下のやわらかい草を好むため、食べものを取り合わずにすむともいわれています。おたがいに助け合う、なかよしの関係です。
天敵と分布

ライオンやワニがねらう
ヌーは草原の多くの動物にねらわれます。ライオン・ブチハイエナ・チーター・リカオン、そして川ではワニが主な天敵です。大群でいることや、シマウマと行動をともにすることは、天敵から身を守るのに役立っています。1頭では弱くても、大きな群れになることで、ヌーは草原を生きぬいています。
サバンナに欠かせない動物
ヌーはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「低危険種(LC)」とされ、今のところ数は多く保たれています。大群で草を食べ、たくさんのフンで土を豊かにします。多くの天敵の食べものにもなるヌーは、アフリカの草原になくてはならない動物です。大移動は、草原全体の命をささえる大きな流れでもあるのです。
じつは、もう1種のオジロヌー(ブラックヌー)は、かつて狩りすぎで絶滅寸前まで減ったことがあります。その後、人びとの保護によって数を取りもどしました。数が多く見えるヌーも、守る努力があってこそ、草原を走り続けられるのです。


参考文献
- IUCN Red List「Connochaetes taurinus」
- Wikipedia(英語版)「Wildebeest」
- Animal Diversity Web「Connochaetes taurinus」(ミシガン大学)
画像出典
アイキャッチ画像: Diego Delso, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(本文中の写真は各キャプションに出典を記載)


