アオウミウシは、日本の海の浅い岩場に多い、青色のウミウシです。カニやエビとは違い、貝の仲間で、殻を持たない軟体動物です。あざやかな青の体に黄色い線、オレンジ色の触角(しょっかく)とえらを持ち、ダイバーに人気のある美しい種として知られています。
分類と学名
- 界:動物界
- 門:軟体動物門(なんたいどうぶつもん)
- 綱:腹足綱(ふくそくこう)=巻貝のなかま
- 目:裸鰓目(らさいもく)=ウミウシの仲間
- 科:イロウミウシ科
- 種:アオウミウシ Hypselodoris festiva
アオウミウシは「何類か」とよく尋ねられますが、答えはサザエやカタツムリと同じ「巻貝(腹足類)」の仲間です。ウミウシは大きなくくりでは軟体動物に入り、カニやエビ(甲殻類)とは別のグループです。学名の festiva は「祭りのようににぎやか」という意味で、その華やかな体色にちなみます。ウミウシと呼ばれる仲間は世界に約3000種いて、色も形もさまざまです。
基本データ
| 大きさ | 体長 約2〜4cm |
| 分布 | 日本各地の海(東北〜九州など) |
| すみか | 浅い海の岩場・海藻の間 |
| 食べもの | カイメン(海綿動物) |
| 体のなかま | 殻のない巻貝(軟体動物・腹足類) |
| 寿命 | 数週間〜1年ほど |
体長は2〜4cmほどで、大人の指先ほどの小ささです。岩の上をゆっくりとはって移動し、日中でも岩陰や海藻の間で見つかります。
ウミウシは何の仲間か

殻を失った巻貝
ウミウシは、サザエやカタツムリと同じ巻貝の仲間ですが、大人になると殻がありません。じつは幼生(赤ちゃん)のときには小さな殻を持っていて、成長する過程でその殻を脱ぎ捨てます。殻を手放したことで体はやわらかく、岩のすき間にも入りこめる自由な体を手に入れました。そのぶん、鮮やかな体色や毒々しい見た目など、殻とは別の方法で身を守っています。
名前の由来
「ウミウシ(海牛)」の名は、頭にある2本の触角が牛の角のように見えることに由来するといわれます。英語の「ヌーディブランク(nudibranch)」は「裸のえら」という意味で、背中にえらがむき出しになっている特徴を表しています。和名も英名も、この動物の目立つ部分をそのまま名前にしています。
体のつくり

むき出しのえらで呼吸する
背中の花のようなえら
アオウミウシの背中の後ろには、花がひらいたような形のえらがあります。魚のように体の内側にえらをしまうのではなく、外に出しているのが特徴です。このえらで水中の酸素を取り入れて呼吸します。
刺激を受けると引っこめる
むき出しのえらは、敵にねらわれやすい弱点でもあります。そのためアオウミウシは、刺激を受けるとえらを体のくぼみに素早く引っこめ、身を守ります。危険が去ると、また花のように広げます。
触角と目
頭の2本の触角は「嗅角(きゅうかく)」と呼ばれ、水中のにおいや味を感じ取ります。その前方には、地面の様子を探る短い触手もあります。ウミウシにも小さな目はありますが、明暗がぼんやり分かる程度で、物の形はほとんど見えません。視力に頼らず、触角で得るにおいの情報をたよりに、えさや相手を探し当てます。
青い体と黄色い模様
体は濃い青から明るい青まで幅があり、背中には黄色い線と斑点、そのふちに黄色い縁取りが入ります。触角とえらはオレンジ色で、青い体によく映えます。模様の細かい出方は一匹ごとに少しずつ違い、同じアオウミウシでも印象が変わります。この目立つ配色そのものが、後で述べる身の守り方と深く結びついています。
暮らしと身の守り方
浅い岩場にすむ
アオウミウシは、日本各地の浅い海の岩場や、海藻の間にすんでいます。潮の引いた磯や、ダイビングでよく見られる、身近なウミウシの一つです。とくに水温が上がりはじめる春から初夏にかけて数が増え、見つけやすくなります。動きはゆっくりで、岩の表面をはうように進みます。
カイメンを食べる
アオウミウシの主な食べものは、岩に付着して動かない「カイメン(海綿)」です。ウミウシは、やすりのような歯(歯舌)でカイメンの表面を削り取って食べます。種類によって食べるカイメンが決まっていることが多く、アオウミウシも特定のカイメンを好みます。
毒ではなく「まずさ」で守る
アオウミウシは、人がさわって害があるような強い毒は持ちません。そのかわり、食べたカイメンに含まれる不快な成分を体にため込み、食べると強い苦みを感じる体になっています。あざやかな体色は、天敵に「まずい相手だ」と知らせる警告のサインだと考えられています。目立つ色でも敵におそわれにくいのは、この化学的な守りがあるためです。
雌雄同体で卵を産む
ウミウシは、1匹の体にオスとメスの両方の仕組みを持つ「雌雄同体(しゆうどうたい)」です。相手と出会うと、たがいに精子を渡し合い、どちらも卵を産みます。産みつけられた卵は、うずまき状のリボンのような形をしていて、岩の上でよく見つかります。
ウミウシを食べるウミウシ
まずさで身を守るアオウミウシにも、天敵はいます。ほかのウミウシを襲って食べる肉食性のウミウシがいて、まずさを気にせず食べてしまう相手には、警告色も通じません。海の中では、ウミウシどうしの食べる・食べられるの関係も見られます。
寿命と飼育
寿命は数週間〜1年
美しい姿とはうらはらに、アオウミウシの寿命は短く、多くは数週間から1年ほどで一生を終えます。短い一生の間に、えさを食べ、相手と出会って卵を産みます。こうして世代を短い周期でくり返し、命をつないでいきます。
飼育が難しい理由
アオウミウシの飼育は、とても難しいことで知られています。決まった種類のカイメンしか食べないため、そのカイメンを絶えず用意し続けなければなりません。もともと寿命が短いこともあり、長く飼うのは簡単ではありません。海や水族館で観察するのが、この生きものと出会うのに向いています。

参考文献
- Wikipedia(英語版)「Hypselodoris festiva」
- Wikipedia(英語版)「Nudibranch」
- World Register of Marine Species「Hypselodoris festiva」
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