ペンギンは、空を飛ぶのをやめ、海の中を「飛ぶ」ように泳ぐことを選んだ鳥です。すべて南半球にすみ、南極から赤道のガラパゴス諸島まで、世界に18種ほどがいます。黒と白の「タキシード」すがたと、よちよち歩き、けんめいな子育てで親しまれています。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:ペンギン目 Sphenisciformes
- 科:ペンギン科 Spheniscidae
「ペンギン」とは
ペンギンの仲間は、「ペンギン目・ペンギン科」というグループにまとめられます。すべて空を飛べない海鳥で、世界に6つの属・18種ほどがいます。分布は南半球だけで、北極やその近くにはすんでいません。もとは空を飛ぶ海鳥から、水中生活に特化して進化したと考えられています。
大きさ・分布などの基本データ
| 種数 | 世界に18種ほど(6属) |
|---|---|
| 大きさ | 体長 約40cm〜120cm・体重 約1〜40kg(種による) |
| 分布 | 南半球(南極〜赤道のガラパゴス) |
| 生息環境 | 南極の氷上・亜南極の島・温帯や熱帯の海岸 |
| 食べ物 | 魚・オキアミ・イカなど(海の中で捕る) |
| 寿命 | 野生でおよそ15〜20年(種による) |
| とくちょう | 飛べないが泳ぎの名人(最大500m以上もぐる種も) |
ペンギンってどんな鳥?
翼は「水中を飛ぶ」ための道具
ペンギンのいちばんの特徴は、空を飛べないことです。そのかわり、翼は平たいヒレ(フリッパー)のような形に変わり、水の中を進むための道具になりました。体は水の抵抗が少ない流線型で、まるで空を飛ぶように、すいすいと海の中を泳ぎます。深くもぐる種では、500mを超える潜水も知られています。
寒さに耐える羽と脂肪
冷たい海で暮らすため、ペンギンの羽は短くびっしりと生え、水をはじきます。その下には厚い皮下脂肪があり、体温を守ります。とくに南極にすむ大きな種では、この防寒のしくみがよく発達しています。仲間どうしで身を寄せ合って、寒さをしのぐ姿も見られます。
大きさも色もいろいろ
ひと口にペンギンといっても、大きさはさまざまです。最大のコウテイペンギンは体長120cm・体重40kgにもなりますが、最小のコガタペンギンは体長40cm・体重1kg以下しかありません。色は黒と白が基本ですが、首もとや頭に、黄色やオレンジのかざり羽を持つ種もいます。
暮らしと子育て
大きな群れ(コロニー)で暮らす
多くのペンギンは群れで暮らし、繁殖期には「コロニー」と呼ばれる集団の繁殖地をつくります。大きなものでは、数万〜数十万羽が集まることもあります。たくさんの中でも、鳴き声で相手を聞き分け、親子や夫婦がちゃんと再会できるのはおどろきです。群れることは、天敵から身を守り、子育てを助け合うのにも役立っています。
2個産んで、育てるのは1羽のことも
多くのペンギンは2個の卵を産みますが、無事に育つのは1羽だけ、ということも少なくありません。両親が交代で卵を温め、海で魚をとってきては、ひなに与えます。少し育ったひなは「クレイシュ」という子どもだけの集まりをつくり、みんなでかたまって親を待ちます。やがて羽が生えかわると、海へと巣立っていきます。
何を食べる? 天敵は?
海にもぐって魚やオキアミを
ペンギンは、魚・オキアミ・イカなどを食べます。海にもぐり、目で獲物を追いかけて、すばやく捕まえます。何度も潜水をくり返して、たくさんの餌をとります。何を多く食べるかは、種やすむ場所によって違います。
天敵と、生態系での役割
海ではヒョウアザラシやシャチ、陸では卵やひなをねらうトウゾクカモメなどが天敵です。ペンギンは魚やオキアミの数を調整する一方、自分も大型の生きものの餌になります。また、コロニーに大量にたまるフン(グアノ)は、島の土に栄養をあたえます。まわりの植物や虫の暮らしにも影響する、大きな存在です。
ペンギンの分類群と種(属別)
世界のペンギンは、いくつかの属(グループ)に分けられます。ここでは、この図鑑で紹介している種を属ごとにまとめました。名前のカードから、それぞれのページへどうぞ。
コウテイ属(大型・氷や島で繁殖)
いちばん大きなグループで、首もとの橙色がよく目立ちます。
現生最大のペンギン。南極の氷の上で、オスが真冬に卵を抱く。

コウテイに次ぐ大型種。あざやかな橙色の首もとが美しい。

アデリー属(南極とそのまわり)
南極周辺にすむ、ずんぐりした中型のなかまです。
目のまわりの白いリングが目印。南極沿岸に広く分布。

頭の白い帯とオレンジのくちばしが特徴。ペンギンいちの泳ぎの速さ。

あごの黒い帯が「ヒゲ」に見えることから名づけられた。

マカロニ属(黄色いかざり羽)
頭に黄色いかざり羽を持つ、おしゃれななかまです。
黄色いまゆのようなかざり羽を持つ。ニュージーランドの森にすむ。

まゆのような黄色い冠羽をぴんと立てられる。ニュージーランドの二つの島だけで繁殖する絶滅危惧種。

黄色いかざり羽と赤い目。岩場をぴょんぴょん跳ねて登る。

頭の金色のかざり羽が豪華。世界でもっとも数の多いペンギンの一つ。

金色のかざり羽が冠羽ペンギンでいちばん長い。数がへり絶滅が心配される(キタイワトビペンギン)。

コガタ属(世界最小)
世界でいちばん小さいペンギンのなかまです。
体長約40cmの世界最小のペンギン。青みがかった羽で「リトルブルー」とも呼ばれる。

フンボルト属(温帯から赤道)
あたたかい地域の海岸にすむ、胸に黒い帯のあるなかまです。
アフリカ南部にすむ「アフリカペンギン」。ロバのような声で鳴く。

南米パタゴニアの海岸で、穴を掘って巣を作る。胸に2本の黒帯。

冷たいフンボルト海流にすむ。日本の動物園でもおなじみ。

赤道直下のガラパゴス諸島だけにすむ、いちばん北のペンギン。

知っておきたい豆知識
「ペンギン」はもともと別の鳥の名前
じつは「ペンギン」という名前は、もともと北半球にいた別の鳥「オオウミガラス」を指す言葉でした。オオウミガラスも飛べない海鳥でしたが、乱獲によって19世紀に絶滅してしまいました。南半球でよく似た鳥を見つけた人々が、同じ名前で呼んだことから、今の「ペンギン」になったといわれています。

白黒の体は海のカモフラージュ
ペンギンの背中が黒く、おなかが白いのには、りっぱな理由があります。海の中では、上から見ると黒い背中が暗い海の色にとけこみ、下から見ると白いおなかが明るい水面にまぎれます。こうして敵から見つかりにくく、また獲物にも気づかれにくくなっているのです。おしゃれなタキシードに見えて、じつは立派な保護色というわけです。
昔は人間ほどの大きさのペンギンがいた
大昔の地球には、身長が1.5mを超える、人間ほどの大きさの巨大なペンギンもいました。今よりずっとあたたかかったころのニュージーランドや南極のまわりで、その化石が見つかっています。世界最古のペンギンの化石は、およそ6,000万年前のものです。今のかわいいペンギンたちの祖先が、はるか昔の海を泳いでいたのです。
保全と人との関わり
多くのペンギンが、いま数を減らしています。地球温暖化による海氷の減少は、氷の上で繁殖するコウテイやアデリーにとって大きな問題です。漁業との餌のとり合いや、網にかかる事故、観光による繁殖のじゃまも心配されています。
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは、多くのペンギンが絶滅の心配のある種とされています。繁殖地の立入制限や、外来種の駆除、人工の巣の設置などの保護が進められています。動物園での飼育や、発信機を使った研究も、ペンギンを守る力になっています。海の環境を映す「指標」として、ペンギンはこれからも大切に見守られていく生きものです。
参考
- Wikipedia「Penguin」英語版(分類・名前の由来=オオウミガラス・巨大ペンギンの化石・countershading)
- IUCN Red List(ペンギン各種の保全状況)
- 各種のくわしい出典は、上の属別リンク(種ごとのページ)を参照


