ナマケモノは、中央アメリカから南アメリカの熱帯雨林にすむ哺乳類です。木の枝に逆さまにぶら下がり、ほとんど動かずに一生を過ごします。名前のとおりゆっくりですが、その遅さには、きびしい森を生きぬくための理由があります。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 上目:異節上目 Xenarthra
- 目:有毛目 Pilosa
- 亜目:ナマケモノ亜目 Folivora
- 代表種:ノドチャミユビナマケモノ Bradypus variegatus
和名・英名
- 和名:ナマケモノ(漢字で「樹懶」)
- 英名:Sloth(「怠け」という意味)
別名・名前の由来
「ナマケモノ」も英語の「Sloth(スロース)」も、どちらも「怠け者」という意味からきています。動きがあまりに遅いため、昔の人がそう名づけました。木の上でのんびりする姿から、サルの仲間だと思われがちですが、違います。ナマケモノに近いのは、同じ南アメリカにすむアリクイやアルマジロで、これらは「異節類」と呼ばれる古いグループの仲間です。世界には、大きく分けて7種のナマケモノがいます。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約40〜75cm、体重 約4〜8kg(種による) |
|---|---|
| 分布 | 中央アメリカ〜南アメリカの熱帯雨林 |
| 生息環境 | 森の木の上(樹上) |
| 食べもの | おもに木の葉(フタユビの仲間は虫や果実も) |
| 寿命 | 20〜30年ほど |
| 保全状況 | 多くの種は IUCN: LC。ピグミーミユビナマケモノはCR、タテガミナマケモノはVU |
動きが遅い理由

葉っぱだけでは力が出ない
ナマケモノがおもに食べるのは、木の葉です。葉はどこにでもありますが、栄養やエネルギーがとても少ない食べものです。そこでナマケモノは、体のはたらきそのものをゆっくりにして、少ないエネルギーで生きる道を選びました。体温も低めで、まわりの気温に合わせて上がり下がりします。筋肉の量も、ふつうの哺乳類より少なめです。動きがのろいのは、なまけているからではなく、省エネのための体のつくりによるものです。
遅いことが身を守る
遅さには、もう一つの利点があります。ナマケモノをねらうジャガーやオウギワシといった天敵は、動くものを見つけて襲います。じっと動かないナマケモノは、その目にとまりにくくなります。あとで説明する体の緑色も合わさって、木の葉のあいだにとけこみます。ゆっくり動くことは、身を守る作戦でもあります。
逆さまの暮らしと、体のつくり

かぎ爪でぶら下がる
ナマケモノの手足には、長くて曲がったかぎ爪があります。この爪を枝に引っかければ、力を入れなくても逆さまにぶら下がっていられます。食事も睡眠も出産も、枝にぶら下がったまま行います。いっぽうで、地面の上では自分の体を支えられず、歩くことができません。地上では、腕で体を引きずるようにしか進めず、とても無防備になります。
毛は逆向き、首はよく回る
ナマケモノの毛は、ほかの哺乳類とは逆向きに生えています。いつも逆さまでいるため、雨が体を流れ落ちるように、お腹側から背中側へ向かって生えています。首の骨の数も変わっていて、ミユビナマケモノは8〜9個もあります。多くの哺乳類が7個であるのに対して多く、そのぶん首を大きく回すことができます。体はほとんど動かさずに、首だけをぐるりと回して周りを見わたせます。
体は小さな生態系 ―藻とガの共生

緑の藻をまとう
ナマケモノの毛をよく見ると、細かい溝があります。この溝には緑色の藻が生え、体がうっすら緑がかって見えることがあります。この緑色は、木の葉のあいだにとけこむカモフラージュに役立ちます。さらに、毛の中にはガや小さな虫がすみ、一つの小さな生態系ができあがっています。
週に1度、地上でふんをする
危険をおかして地上へ
ナマケモノは、1週間に1度ほど、わざわざ木から地上に降りてふんをします。地上は、天敵におそわれる危険が高い場所です。それでもなぜ危険をおかしてまで降りるのか、長いあいだ謎とされてきました。
理由には諸説ある
この行動の理由は、まだはっきり分かっていません。有力とされてきた説の一つが、毛にすむ小さなガとのつながりです。ナマケモノが地上でしたふんに、このガが卵を産みます。育った成虫は、木の上のナマケモノの毛にすみつきます。その働きで毛の藻がふえ、藻がナマケモノの栄養になっている、という考えです。ただし近年は、この説に疑問をとなえる研究も出ています。特別な理由はなく、祖先からの習性が残っているだけ、という見方です。
消化に1か月、でも泳ぎは得意
葉の消化に1か月かかる
ナマケモノの消化は、動きと同じくらいゆっくりです。かたい葉を分解するため、大きな胃の中で微生物の力を借りて、時間をかけて消化します。その時間は、なんと1か月以上かかることもあります。満腹のときには、胃の中身だけで体重の3分の1をこえるほどです。
泳ぎは得意
意外なことに、あれほどのろいナマケモノも、水の中では上手に泳ぎます。長い腕を使って、木の上を進むよりも速く泳げます。心臓の動きをうんとおそくして、40分ちかく息を止めていられるともいわれます。増水した森で川をわたるときにも、この泳ぎの力が役立ちます。
赤ちゃんと子育て

ナマケモノは、ふつう一度に1匹の赤ちゃんを産みます。妊娠期間は、ミユビの仲間でおよそ6か月、フタユビの仲間で1年ほどです。生まれた赤ちゃんは、母親のお腹にぴったりとしがみついて育ちます。母親が枝にぶら下がったまま動くので、赤ちゃんもいっしょに運ばれていきます。おもしろいのは、食べ物の覚え方です。赤ちゃんは、母親の口のまわりをなめて、どの葉を食べればよいかを学ぶといわれます。5か月ほどたつと、少しずつ親元をはなれていきます。
ミユビとフタユビ、2つのグループ

指の数などの違い
ナマケモノは、大きく2つのグループに分かれます。前足の指が3本のミユビナマケモノと、2本のフタユビナマケモノです。次のような違いがあります。
| 見るところ | ミユビナマケモノ | フタユビナマケモノ |
|---|---|---|
| 前足の指 | 3本 | 2本 |
| 食べもの | ほぼ木の葉だけ | 葉のほか虫や果実も |
| 首の回り方 | とてもよく回る | ミユビほどではない |
| 活動 | 昼も夜も | おもに夜 |
見た目はよく似た2つのグループですが、遠い親せきどうしです。もともと別々の祖先が、それぞれ木の上でゆっくり暮らすうちに、そっくりな姿に進化したと考えられています。
巨大な祖先と、どこで会える
今のナマケモノは木の上の小型のものだけですが、大昔には地上を歩く巨大なナマケモノがいました。メガテリウムと呼ばれる仲間は、体長6mにもなり、ゾウのように大きな体をしていたと考えられています。しかし、およそ1万年前に絶滅しました。木の上の小さなナマケモノだけが、今の時代まで生きのこりました。日本では、上野動物園などでフタユビナマケモノに会えます。じっと動かない姿を、間近で観察できます。
参考
- Wikipedia(英語版)「Sloth」(分類・代謝・毛と藻・消化・繁殖・祖先)
- IUCN Red List:Bradypus variegatus ほかナマケモノ各種の評価
- Animal Diversity Web:Folivora(ナマケモノ類の形態・生態)
画像出典
アイキャッチ画像: Stefan Laube (Tauchgurke), Public domain, via Wikimedia Commons(本文中の写真は各キャプションに出典を記載)


