ナマケモノ【総合】

異節類(ナマケモノ・アルマジロ)

ナマケモノは、中央アメリカから南アメリカの熱帯雨林にすむ哺乳類です。木の枝に逆さまにぶら下がり、ほとんど動かずに一生を過ごします。名前のとおりゆっくりですが、その遅さには、きびしい森を生きぬくための理由があります。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 上目:異節上目 Xenarthra
  • 目:有毛目 Pilosa
  • 亜目:ナマケモノ亜目 Folivora
  • 代表種:ノドチャミユビナマケモノ Bradypus variegatus

和名・英名

  • 和名:ナマケモノ(漢字で「樹懶」)
  • 英名:Sloth(「怠け」という意味)

別名・名前の由来

「ナマケモノ」も英語の「Sloth(スロース)」も、どちらも「怠け者」という意味からきています。動きがあまりに遅いため、昔の人がそう名づけました。木の上でのんびりする姿から、サルの仲間だと思われがちですが、違います。ナマケモノに近いのは、同じ南アメリカにすむアリクイやアルマジロで、これらは「異節類」と呼ばれる古いグループの仲間です。世界には、大きく分けて7種のナマケモノがいます。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体長 約40〜75cm、体重 約4〜8kg(種による)
分布中央アメリカ〜南アメリカの熱帯雨林
生息環境森の木の上(樹上)
食べものおもに木の葉(フタユビの仲間は虫や果実も)
寿命20〜30年ほど
保全状況多くの種は IUCN: LC。ピグミーミユビナマケモノはCR、タテガミナマケモノはVU

動きが遅い理由

木の枝に逆さまにぶら下がるナマケモノ
木の枝に逆さまにぶら下がって暮らす(Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

葉っぱだけでは力が出ない

ナマケモノがおもに食べるのは、木の葉です。葉はどこにでもありますが、栄養やエネルギーがとても少ない食べものです。そこでナマケモノは、体のはたらきそのものをゆっくりにして、少ないエネルギーで生きる道を選びました。体温も低めで、まわりの気温に合わせて上がり下がりします。筋肉の量も、ふつうの哺乳類より少なめです。動きがのろいのは、なまけているからではなく、省エネのための体のつくりによるものです。

遅いことが身を守る

遅さには、もう一つの利点があります。ナマケモノをねらうジャガーやオウギワシといった天敵は、動くものを見つけて襲います。じっと動かないナマケモノは、その目にとまりにくくなります。あとで説明する体の緑色も合わさって、木の葉のあいだにとけこみます。ゆっくり動くことは、身を守る作戦でもあります。

逆さまの暮らしと、体のつくり

長いかぎ爪を持つナマケモノ
長く曲がったかぎ爪で枝にぶら下がる(Christian Mehlführer, CC BY 2.5, via Wikimedia Commons

かぎ爪でぶら下がる

ナマケモノの手足には、長くて曲がったかぎ爪があります。この爪を枝に引っかければ、力を入れなくても逆さまにぶら下がっていられます。食事も睡眠も出産も、枝にぶら下がったまま行います。いっぽうで、地面の上では自分の体を支えられず、歩くことができません。地上では、腕で体を引きずるようにしか進めず、とても無防備になります。

毛は逆向き、首はよく回る

ナマケモノの毛は、ほかの哺乳類とは逆向きに生えています。いつも逆さまでいるため、雨が体を流れ落ちるように、お腹側から背中側へ向かって生えています。首の骨の数も変わっていて、ミユビナマケモノは8〜9個もあります。多くの哺乳類が7個であるのに対して多く、そのぶん首を大きく回すことができます。体はほとんど動かさずに、首だけをぐるりと回して周りを見わたせます。

体は小さな生態系 ―藻とガの共生

体毛が緑がかったナマケモノ
毛に藻が生え、体がうっすら緑がかる(Bernard DUPONT, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

緑の藻をまとう

ナマケモノの毛をよく見ると、細かい溝があります。この溝には緑色の藻が生え、体がうっすら緑がかって見えることがあります。この緑色は、木の葉のあいだにとけこむカモフラージュに役立ちます。さらに、毛の中にはガや小さな虫がすみ、一つの小さな生態系ができあがっています。

週に1度、地上でふんをする

危険をおかして地上へ

ナマケモノは、1週間に1度ほど、わざわざ木から地上に降りてふんをします。地上は、天敵におそわれる危険が高い場所です。それでもなぜ危険をおかしてまで降りるのか、長いあいだ謎とされてきました。

理由には諸説ある

この行動の理由は、まだはっきり分かっていません。有力とされてきた説の一つが、毛にすむ小さなガとのつながりです。ナマケモノが地上でしたふんに、このガが卵を産みます。育った成虫は、木の上のナマケモノの毛にすみつきます。その働きで毛の藻がふえ、藻がナマケモノの栄養になっている、という考えです。ただし近年は、この説に疑問をとなえる研究も出ています。特別な理由はなく、祖先からの習性が残っているだけ、という見方です。

消化に1か月、でも泳ぎは得意

葉の消化に1か月かかる

ナマケモノの消化は、動きと同じくらいゆっくりです。かたい葉を分解するため、大きな胃の中で微生物の力を借りて、時間をかけて消化します。その時間は、なんと1か月以上かかることもあります。満腹のときには、胃の中身だけで体重の3分の1をこえるほどです。

泳ぎは得意

意外なことに、あれほどのろいナマケモノも、水の中では上手に泳ぎます。長い腕を使って、木の上を進むよりも速く泳げます。心臓の動きをうんとおそくして、40分ちかく息を止めていられるともいわれます。増水した森で川をわたるときにも、この泳ぎの力が役立ちます。

赤ちゃんと子育て

母親のお腹にしがみつくナマケモノの赤ちゃん
赤ちゃんは母親のお腹にしがみついて育つ(Tiago Lubiana, Public domain, via Wikimedia Commons

ナマケモノは、ふつう一度に1匹の赤ちゃんを産みます。妊娠期間は、ミユビの仲間でおよそ6か月、フタユビの仲間で1年ほどです。生まれた赤ちゃんは、母親のお腹にぴったりとしがみついて育ちます。母親が枝にぶら下がったまま動くので、赤ちゃんもいっしょに運ばれていきます。おもしろいのは、食べ物の覚え方です。赤ちゃんは、母親の口のまわりをなめて、どの葉を食べればよいかを学ぶといわれます。5か月ほどたつと、少しずつ親元をはなれていきます。

ミユビとフタユビ、2つのグループ

枝からぶら下がるミユビナマケモノの全身
前足の指が3本のミユビナマケモノ(Dick Culbert, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

指の数などの違い

ナマケモノは、大きく2つのグループに分かれます。前足の指が3本のミユビナマケモノと、2本のフタユビナマケモノです。次のような違いがあります。

見るところミユビナマケモノフタユビナマケモノ
前足の指3本2本
食べものほぼ木の葉だけ葉のほか虫や果実も
首の回り方とてもよく回るミユビほどではない
活動昼も夜もおもに夜

見た目はよく似た2つのグループですが、遠い親せきどうしです。もともと別々の祖先が、それぞれ木の上でゆっくり暮らすうちに、そっくりな姿に進化したと考えられています。

巨大な祖先と、どこで会える

今のナマケモノは木の上の小型のものだけですが、大昔には地上を歩く巨大なナマケモノがいました。メガテリウムと呼ばれる仲間は、体長6mにもなり、ゾウのように大きな体をしていたと考えられています。しかし、およそ1万年前に絶滅しました。木の上の小さなナマケモノだけが、今の時代まで生きのこりました。日本では、上野動物園などでフタユビナマケモノに会えます。じっと動かない姿を、間近で観察できます。

参考

  • Wikipedia(英語版)「Sloth」(分類・代謝・毛と藻・消化・繁殖・祖先)
  • IUCN Red List:Bradypus variegatus ほかナマケモノ各種の評価
  • Animal Diversity Web:Folivora(ナマケモノ類の形態・生態)

画像出典

アイキャッチ画像: Stefan Laube (Tauchgurke), Public domain, via Wikimedia Commons(本文中の写真は各キャプションに出典を記載)

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