トラ

食肉目(ネコ・イヌ・クマ)

トラは、アジアの森にすむネコ科で最大の動物です。1頭ずつがそれぞれの縄張りで暮らす、単独のハンターです。オレンジと黒の縞模様が目印で、ネコの仲間ながら泳ぎが得意なことでも知られます。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:食肉目 Carnivora
  • 科:ネコ科 Felidae
  • 属:ヒョウ属 Panthera
  • 種:トラ Panthera tigris

和名・英名

  • 和名:トラ
  • 英名:Tiger

別名・学名の由来

トラは、ライオン・ヒョウ・ジャガーと同じ「ヒョウ属」のなかまです。その中でいちばん大きく、ネコ科全体でも最大の種です。日本には野生のトラはいませんが、干支(えと)や昔話にも登場し、古くから強さの象徴として親しまれてきました。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体長 約1.4〜2.8m、体重 オス約200〜260kg・メス約100〜160kg(最大種アムールはさらに大きい)
分布アジア(インド〜東南アジア〜シベリア〜スマトラ島)。今は昔の生息地の7%未満
生息環境森林・草原・湿地・雪の残る針葉樹林など
食べものシカ・イノシシなど大型の草食獣(肉食)
寿命野生でおよそ12〜15年
保全状況IUCN:絶滅危惧(EN)

ネコ科最大の単独ハンター

群れず、1頭で暮らす

森の中を1頭で歩くトラ
群れず、1頭で縄張りを歩くトラ(Tisha Mukherjee, CC BY-SA 4.0

同じヒョウ属でも、群れをつくるライオンと違い、トラは1頭で暮らす単独の動物です。オスもメスも、それぞれ自分の縄張りを持ちます。縄張りは、木におしっこのにおいをつけたり、幹に爪あとを残したりして主張します。ふだんは、たがいに出会わないように距離をとって暮らしています。

ライオン
ライオンは、アフリカの草原にすむ大型のネコのなかまです。ネコの仲間でただ一種、「プライド」と呼ばれる群れをつくって暮らします。オスの立派なたてがみと堂々とした姿から、「百獣の王」と呼ばれてきました。分類と学名分類階層界:動物界 Animal...

待ち伏せて仕留める

忍び寄って一撃

トラは、待ち伏せ型のハンターです。草むらに身をひそめ、獲物に気づかれないよう、そっと近づきます。そして十分に近づいたところで、一気に飛びかかります。シカやイノシシなど、自分と同じくらいか、それより大きな獲物もしとめます。派手に追い回すのではなく、忍び寄って一撃で決める狩りです。

狩りは失敗も多い

力強いトラですが、狩りが成功するのは10回に1回ほどともいわれます。多くの狩りは失敗に終わります。そのぶん、しとめた獲物はむだにしません。一度に数十kgもの肉を食べ、残りは草などにかくして、数日かけて食べきります。大きな獲物を1頭たおせば、しばらく狩りをせずに過ごせます。

一頭ずつ違う縞模様

縞は「指紋」のよう

縞模様のはっきりしたトラの全身
縞の入り方は1頭ずつ違い、指紋のように見分けられる(Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0

トラのいちばんの目印は、あのオレンジと黒の縞模様です。この縞の入り方は、1頭ずつすべて違います。人の指紋のように、模様を見れば個体を見分けられるのです。研究者は、この縞の違いを使って、野生のトラを1頭ずつ識別しています。さらにおどろくことに、縞は毛だけでなく、その下の皮ふにもついています。

オレンジなのに見つからない?

あざやかなオレンジ色は、人の目にはとても目立ちます。それでも上手に狩りができるのには、理由があります。トラの獲物であるシカのなかまは、色の見え方が人と違います。シカにはオレンジと緑の区別がつきにくく、トラの体は緑の草むらにとけこんで見えるのです。派手な色は、獲物には意外と見つかりにくい保護色になっています。

白いトラ「ホワイトタイガー」

まれに、体が白いトラが生まれることがあります。「ホワイトタイガー」と呼ばれ、白い体に黒い縞が残るのが特徴です。これは、ベンガルトラにときどき現れる生まれつきの変わり種です。動物園で人気がありますが、白い個体を増やすために近い血のトラどうしをかけ合わせることが多く、体の弱い子が生まれやすい問題も知られています。

泳ぐのが得意なネコ

水の中で水しぶきをあげるトラ
ネコの仲間ながら水を好み、泳ぎが得意(Alexander Leisser, CC BY-SA 4.0

多くのネコは水をきらいますが、トラは例外です。泳ぎがとても得意で、むしろ水を好みます。暑い日には、川や池に体をひたして涼みます。その泳力はたいしたもので、幅8kmもの川を泳ぎわたることもあります。獲物を追って、ためらわずに水へ入ることもあります。水辺は、トラにとって身近な生活の場です。

子育ては母親だけ

単独で暮らすトラは、子育ても母親だけで行います。オスは子育てに関わりません。

一度に2〜3頭

雪の中を歩く母トラと子トラ
雪の中を歩く母と子(アムールトラ)(Dave Pape, パブリックドメイン

メスは約3か月の妊娠ののち、ふつう2〜3頭の子を産みます(多いときは7頭ほど)。生まれたばかりの子は目も開かず、しばらくは母親の乳だけで育ちます。母親は、自分で狩りをしながら、子を敵から守り育てます。

2年ほどで独立

子は生後2か月ほどで肉を食べ始め、母親の狩りを見ながら、獲物のとらえ方を覚えていきます。そして2年ほどたつと、自分の縄張りを探して独り立ちします。単独で生きるトラにとって、母親と過ごすこの数年が、狩りや暮らし方を身につける大切な時間です。

トラとヒョウの違い

「虎」と「豹(ヒョウ)」は、名前も姿も似ていてよく混同されます。しかし、この2つは別の種です。いちばん分かりやすい違いは、模様です。トラはたての縞模様なのに対し、ヒョウは「ロゼット」と呼ばれる輪のような斑点模様をしています。

大きさも違います。トラはネコ科で最大ですが、ヒョウはそれよりずっと小型です。すむ場所も、トラがおもにアジアなのに対し、ヒョウはアフリカからアジアまで広く分布します。模様が縞なら虎、斑点なら豹、と覚えると見分けやすいです。

トラと熊、どっちが強い?

正面から歩いてくるトラ
最大の亜種アムールトラは、熊と同じ森にすむ(Stephenekka, CC BY-SA 4.0

「トラと熊はどちらが強いのか」は、よく話題になる疑問です。実際に、野生でも両者が出会う場所があります。ロシアの極東にすむ最大の亜種アムールトラは、同じ森でヒグマやツキノワグマと暮らしています。

調査によると、アムールトラは実際に熊を狩って食べることがあります。トラのふんから、熊の毛が見つかることもあります。この点では、トラが熊を上回る場面があるといえます。ただし、熊を食べる割合はトラの食事全体の1%ほどで、そう多くはありません。大きなヒグマは危険な相手で、トラがいつも勝てるわけではありません。「どちらが強いか」に、単純な答えはないのが正直なところです。

人を襲うことも ― 人食いトラ

トラはふだん、人をさけて暮らしています。しかしまれに、人を襲う「人食いトラ」になることがあります。

その多くは、年老いたりけがをしたりして、シカやイノシシのようなすばやい獲物を狩れなくなった個体だと考えられています。インドなどでは、こうしたトラによる被害の記録が古くから残っています。とはいえ、健康なトラが人を主な獲物にすることはありません。人とトラの争いの多くは、開発で生息地が重なり、たがいの距離が近づきすぎたときに起きています。

亜種と、減りゆく数

6つの亜種、消えた3つ

トラは、すむ地域によっていくつかの亜種に分かれます。今も生きているのは、ベンガル・アムール(シベリア)・スマトラ・インドシナ・マレー・南中国の6つです。北にすむアムールは大きく毛が長め、南の島にすむスマトラは小柄など、環境に合わせて姿が異なります。いっぽうで、バリ・ジャワ・カスピの3つの亜種は、すでに絶滅してしまいました。

中でも、ロシア極東やシベリアの雪深い森にすむアムールトラは、最大の亜種です。オスは体重が300kg近くにもなり、寒さに耐えるため体が大きく、毛も長くなっています。ただし生き残っている数はとても少なく、手あつい保護が続けられています。

数が減っている

トラは今、絶滅が心配される動物です。毛皮や体の一部を目当てにした密猟や、森林の伐採が主な原因です。こうしてトラは、数を大きく減らしてきました。野生に残るトラは、およそ3,700〜5,600頭とされています。生息地は昔の1割にも満たなくなりました。近年は各国の保護によって、少しずつ数が増えている地域もあります。IUCNレッドリストでは「絶滅危惧(EN)」に分類されています。

IUCNレッドリストとは、世界の野生生物の絶滅の危険度を評価した国際的なリストです。危険度の高い順に、絶滅危惧(CR・EN・VU)などの区分があります。

参考

画像出典

アイキャッチ画像:S. Taheri(edit: Fir0002), CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons(16:9にトリミングして使用)。本文中の画像は各キャプションに出典を記載しています。

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