ジャイアントパンダ

食肉目(ネコ・イヌ・クマ)

ジャイアントパンダは、中国の山地の竹林にすむ白黒の模様のクマです。肉食動物であるクマの仲間なのに、食事のほとんどを竹に頼る変わった動物です。手のひらにのるほど小さな赤ちゃんや、中国からの「レンタル」でも知られています。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:食肉目 Carnivora
  • 科:クマ科 Ursidae
  • 属:ジャイアントパンダ属 Ailuropoda
  • 種:ジャイアントパンダ Ailuropoda melanoleuca

和名・英名

  • 和名:ジャイアントパンダ
  • 英名:Giant panda

別名・学名の由来

学名の Ailuropoda melanoleuca は「黒と白のネコのような足」という意味です。見た目や竹を食べる習性から、かつてはアライグマの仲間やレッサーパンダに近いと考えられていました。しかしDNAの研究によって、現在ははっきりとクマ科の一員だと分かっています。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体長 約1.2〜1.9m、体重 オス最大160kg・メス70〜125kg
分布中国中部(四川・陝西・甘粛の山地)の固有種
生息環境標高およそ2,400〜3,000mの竹林
食べもの竹(食事の約99%)。まれに小動物や卵も
寿命飼育下で最長38歳の記録
保全状況IUCN:危急(VU)

肉食のクマが竹を食べる

パンダの最大の特徴は、クマの仲間なのに食事のほぼすべてが竹だという点です。竹ばかり食べるようになったのには、長い進化の理由があります。

竹を食べるジャイアントパンダ
食事のほぼすべてが竹(Medium69, CC BY-SA 4.0

肉の「うまみ」を感じなくなった

パンダは、肉のうまみを感じる遺伝子を、およそ420万年前に失ったことが分かっています。竹を食べる暮らしへ移り変わった結果だと考えられています。化石からは、700万年前ごろには竹を食べていた証拠も見つかっています。長い時間をかけて、少しずつ竹へと食を切りかえてきた動物です。

体のつくりは肉食のまま

竹は消化しにくい

食べるものは竹に変わっても、パンダの腸は肉食動物のままです。草食動物のように竹を効率よく消化できないため、栄養をあまり取り出せません。そのぶんを量でおぎなうしかなく、1日に9〜14kgもの竹を食べ続けます。食べては出すをくり返し、1日に最大40回ほど排便することもあります。

できるだけ動かない

竹は栄養が乏しい食べものです。そこでパンダは、むだにエネルギーを使わない暮らしを選びました。1日の多くを座ったまま竹を食べて過ごし、動き回るのは最小限です。のんびりして見える姿は、栄養の少ない竹だけで生きるための省エネの暮らし方です。

冬眠しないクマ

多くのクマは、食べものが乏しくなる冬に冬眠します。ところがパンダは冬眠しません。主食の竹は一年じゅう枯れずに手に入るので、眠ってやり過ごす必要がありません。寒くなると、標高の低いあたたかい場所へ移動して、冬のあいだも竹を食べ続けます。

竹をつかむ「6本目の指」

にせ親指で竹を握る

前足で竹を握って食べるジャイアントパンダ
前足で竹を握って食べる。親指のような「にせ親指」で竹をはさむ(Avda, CC BY-SA 3.0

細い竹を器用に持って食べられるのは、前足に秘密があるからです。パンダの前足には、5本の指のほかに、親指のように張り出した出っぱりがあります。これは「にせ親指」と呼ばれ、本物の指ではありません。手首の骨の一部(種子骨)が大きくなって、指のような役目をするようになったものです。この出っぱりと5本の指で竹をはさみ、しっかり握って食べます。

レッサーパンダと同じ進化

おもしろいことに、同じように竹を食べるレッサーパンダも、そっくりな「にせ親指」を持っています。クマの仲間のジャイアントパンダと、別のグループのレッサーパンダが、それぞれ独立に同じ仕組みを進化させました。異なる動物が似た環境で似た体を得ることを「収れん進化」といい、この2種はその有名な例です。

レッサーパンダ
レッサーパンダは、ヒマラヤや中国南西部の山の森にすむ、赤茶色の小さな動物です。竹を食べ、木の上で暮らし、後ろあしで立ち上がる姿で親しまれています。「パンダ」の名を持ちますが、ジャイアントパンダとは近い仲間ではありません。分類と学名界:動物界...

手のひらにのる小さな赤ちゃん

母親の約800分の1の大きさ

パンダの赤ちゃんは、生まれたときの体重がわずか90〜130gしかありません。これは母親のおよそ800分の1で、手のひらにのるほどの小ささです。生まれたては全身がピンク色で、毛もほとんどなく、目も開いていません。あの大きな白黒のパンダとは、とても同じ動物とは思えない姿です。母親は子をだきかかえ、体温で温めながら大切に育てます。

双子でも育てるのは1頭

パンダはおよそ半分の割合で双子を産みます。ところが野生では、母親が育てられるのはふつう1頭だけです。小さな赤ちゃんの世話はそれほど大変で、2頭を同時に育てるのは大きな負担になります。生まれた子は1年半から2年ほど母親と過ごし、竹の食べ方や暮らし方を覚えていきます。

繁殖が難しい理由

パンダはなかなか数が増えないことで知られます。その大きな理由が、メスが子を産める時期の短さです。メスが繁殖できるのは1年のうちわずか2〜3日だけで、しかも年に1回しかありません。このタイミングを逃すと、その年は子を残せません。動物園でパンダの繁殖がニュースになるのは、この短いチャンスをものにした特別な出来事だからです。

白黒模様のなぞ

パンダといえば白と黒のはっきりした模様ですが、なぜこの色なのかは、まだはっきり分かっていません。いくつかの説が唱えられています。

白と黒のはっきりした模様のジャイアントパンダ
白と黒がはっきり分かれた体(Jeff Kubina, パブリックドメイン

身をかくすため?

有力なのは、まわりの景色にまぎれるのに役立つという考えです。白い部分は雪の多い場所で、黒い肩や脚は木かげで、それぞれ背景にとけこみやすいといわれます。体の一部ずつが別々の場所にまぎれることで、遠くからは輪郭がぼやけて見えるという見方です。

仲間への合図?

もう一つ、仲間とのやりとりに使うという説もあります。黒い耳は相手への意思表示に、目のまわりの黒い模様はたがいを見分けるのに役立つのではないか、という見方です。どれか一つに決まっているわけではなく、複数の役割が重なっていると考えられています。

数を増やした保全とパンダ外交

絶滅危惧から「危急」へ

2頭で過ごすジャイアントパンダ
保護区で暮らすジャイアントパンダ(Colegota, CC BY-SA 2.5 es

パンダはかつて数を大きく減らし、絶滅が心配される動物の代表でした。しかし中国が保護区を整えて生息地を守った結果、野生のパンダは回復してきました。2016年には、国際的な絶滅リスクの評価(IUCNレッドリスト)で、より危険度の高い「絶滅危惧(EN)」から一段低い「危急(VU)」へと引き下げられました。2024年ごろには、野生でおよそ1,900頭まで戻っています。保護の成功例としてよく紹介される動物です。

大人のパンダにはほとんど天敵がいません。それでも数が減ったのは、主に森林の伐採で生息地が失われたためです。もう一つ、竹ならではの危険もあります。竹は数十年に一度、広い範囲で一斉に花を咲かせて枯れることがあります。昔はパンダが別の竹林へ移って切り抜けていました。しかし森林が分断されて移動路がふさがれると、逃げ場を失って食糧危機におちいります。生息地をつなげて守ることが、保全の大きな鍵とされています。

IUCNレッドリストとは、世界の野生生物の絶滅の危険度を評価した国際的なリストです。危険度の高い順に、絶滅危惧(CR・EN・VU)などの区分があります。

なぜ中国に返される? ―パンダ外交

海外の動物園にいるパンダは、多くが中国から借りているパンダです。中国はかつてパンダを外国への贈りものにしていましたが、1984年ごろからは「贈与」をやめ、期間を決めた「貸し出し(レンタル)」に切りかえました。貸し出しには年間およそ1億円規模の費用がかかるといわれます。さらに、海外で生まれた子パンダも中国のもので、数年たつと中国へ返されます。日本で人気だったパンダが中国へ帰るのは、こうした取り決めがあるためです。パンダを通じた国どうしの交流は「パンダ外交」と呼ばれます。

参考

画像出典

アイキャッチ画像:Gzen92, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(16:9にトリミングして使用)。本文中の画像は各キャプションに出典を記載しています。

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