シマハイエナは、アフリカ北部から中東・中央アジア・インドまで広く暮らす、体に黒いしま模様をもつハイエナです。背中の長い毛(たてがみ)を立てて体を大きく見せるのが得意で、アジアにすむ唯一のハイエナでもあります。
分類と学名
- 界:動物界
- 門:脊索動物門(せきさくどうぶつもん)
- 綱:哺乳綱(ほにゅうこう)
- 目:食肉目(ネコ目)
- 科:ハイエナ科
- 属:ハイエナ属(Hyaena)
- 種:シマハイエナ
学名は Hyaena hyaena(ヒアエナ・ヒアエナ)、英名は Striped Hyena(ストライプト・ハイエナ)です。ハイエナ科には全部で4種がいますが、そのうち「ハイエナ属」に入るのはこのシマハイエナただ1種だけです。ブチハイエナやカッショクハイエナは別の属に分けられていて、シマハイエナは科の中でも独立した立ち位置にいます。
名前の「シマ(縞)」は、体や足に走る黒いしま模様からきています。英名の Striped もそのまま「しまのある」という意味で、和名も英名も見た目の特徴をそのまま名前にしています。
基本データ
| 体長(頭からおしり) | 約85〜130cm(しっぽは別に25〜40cm) |
| 肩の高さ | 約60〜80cm |
| 体重 | 約22〜55kg(平均35kgほど) |
| 分布 | アフリカ北部・東部から中東・中央アジア・インドまで |
| すみか | 草原・かんそうした低木林・岩場・半さばく |
| 食べもの | 死んだ動物の肉が中心。果実や昆虫、小動物も |
| 保全状況 | 準絶滅危惧(NT/IUCN) |
ブチハイエナ(体重40〜80kg級)とくらべると、シマハイエナはひとまわり小さめです。イヌよりは大きく、大型犬とオオカミの中間くらいの体つきです。
見た目と特徴

背中のたてがみを立てて大きく見せる
シマハイエナのいちばんの特徴は、首から背中にかけて生えた長い毛です。この毛は「たてがみ」とよばれ、ふだんはねているのですが、おどろいたり相手をおどしたりするときにぶわっと逆立ちます。
たてがみを立てると、体の見た目が一気に大きくなります。実際より強そうに見せることで、天敵や競争相手に「手を出すとあぶないぞ」と伝えているわけです。おびえた小動物が体をふくらませるのと同じ作戦を、ハイエナは背中の毛で行っています。
しま模様と、ほかのハイエナとの見分け方
体の色は灰色から茶色っぽいクリーム色で、そこに黒いたての線が入ります。足にも横しまがあり、のどには黒いはん点があります。この「しま模様」が、ブチハイエナ(水玉もよう)やカッショクハイエナ(無地に近い長い毛)との大きな見分けポイントです。
- シマハイエナ…灰色の体に黒いしま。背中に立つたてがみ。とがった耳。
- ブチハイエナ…黄土色の体に黒い水玉。耳は丸め。いちばん大きい。
- カッショクハイエナ…全身が濃い茶色の長い毛。しま模様は目立たない。
顔つきはややイヌに似ていて、耳が大きくとがっているのもシマハイエナの見分けポイントです。前あしが後ろあしより長いため、背中が後ろに向かって下がるハイエナ独特の体つきをしています。
暮らしと生態

アジアにすむ唯一のハイエナ
ハイエナというとアフリカのイメージが強いですが、シマハイエナはハイエナの仲間でいちばん広い範囲に分布しています。アフリカ北部から中東をぬけて、中央アジアやインドまで暮らしていて、アジアにすんでいるハイエナはこの種だけです。
じつは大むかしには、ヨーロッパにもシマハイエナがいました。氷河時代(こおりがはる時代)にはフランスやドイツのあたりまで広がっていたことが、化石からわかっています。今のヨーロッパにはいませんが、「シマハイエナ ヨーロッパ」という検索が出てくる背景には、こうした過去の分布があります。
夜にひとりで動く、ひかえめな性格
シマハイエナは夜行性で、あたりが真っ暗になってから活動を始めます。ブチハイエナのように何十頭もの大きな群れはつくらず、ふだんは1頭、または親子だけの小さな家族で暮らします。とても用心深く、人の前にはめったに姿を見せません。
広いなわばりを歩き回り、おしりの近くにあるにおいのふくろから分泌物(ぶんぴつぶつ)を出して、草や石にこすりつけます。これが「ここは自分の場所だよ」という目印になります。声よりもにおいで会話をする動物です。
食べものは死肉が中心
骨までかみくだく強いあご
シマハイエナは、自分でえものをしとめるより、死んだ動物の肉を食べる「そうじ屋(スカベンジャー)」としての暮らしが中心です。ライオンやヒョウが食べ残した死がいを見つけ、じょうぶなあごで骨まで食べてしまいます。ほかの動物が食べ残す固い骨も、栄養にできるのが強みです。
果実も食べる雑食ぶり
肉ばかりではなく、果実やウリのような植物も口にする雑食です。昆虫や小さな動物も食べます。かんそうした土地では水分を果実からとることもあります。体が大きい個体は、自分でウサギや鳥をつかまえて狩りをすることも知られています。えり好みせず何でも食べる強さが、広い範囲で生きのびてきた理由の一つです。
子育てと暮らしの様子
両親そろって育てる一夫一妻
シマハイエナは、多くのハイエナとちがって「一夫一妻(いっぷいっさい)」の傾向が強い動物です。オスとメスがペアになり、両親そろって子どもを育てます。オスも子育てに協力するのは、動物の中ではめずらしいことです。
巣あなで育つ赤ちゃん
赤ちゃんは岩のすき間やほかの動物が掘った巣あなで生まれ、ふつう2〜4頭ほどが育ちます。生まれたばかりの子は目が閉じていて、親が運んでくる肉やミルクで大きくなります。両親が力を合わせて守り、えさを運ぶことで、小さな家族でも子どもを育て上げられるのです。
シマハイエナの鳴き声
笑い声を出すのはブチハイエナ
「ハイエナ=ケラケラ笑う声」というイメージがありますが、あの独特の笑い声を出すのはブチハイエナです。シマハイエナはとても静かな動物で、ふだんはほとんど声を出しません。
声よりにおいで伝え合う
興奮したときやおどすときに、低いうなり声やうめくような声を出すことはあります。けれども群れで大きく鳴き交わすことはなく、コミュニケーションはにおいや体の動き(たてがみを立てる、など)が中心です。「シマハイエナの鳴き声」を探しても情報が少ないのは、そもそもあまり鳴かない静かなハイエナだからです。
人とのかかわり

古くから人のそばで暮らしてきた
シマハイエナがすむ中東やインドは、古い文明が栄えた土地でもあります。人が村や畑をつくって暮らすそばで、シマハイエナは死んだ家畜やごみをそうじしながら生きてきました。人ときょりが近かったぶん、昔話や言い伝えにもたびたび登場します。
お墓と結びつけられた俗信
そうじ屋であるシマハイエナは、死んだ動物のにおいをたどるのが得意です。そのため中東やインドの一部では、「墓をあばく動物」として、こわがられたり気味悪がられたりしてきました。夜にひとりで音もなく動く姿も、不気味なイメージを強めたようです。
地域によっては、シマハイエナの体の一部を「魔よけ」やまじないに使う言い伝えも残っています。実際のシマハイエナはひかえめで人をおそれる動物ですが、夜と死のイメージが重なって、こうした俗信(民間の言い伝え)が生まれたと考えられています。こわい生き物というより、人の暮らしのすぐそばにいたからこそ物語の主役にされてきた動物なのです。
数の減少と、どこで会えるか
今のシマハイエナは、すみかとなる自然が減っています。家畜をおそう動物としてわなにかけられることもあり、数はゆっくり減っています。IUCN(国際自然保護連合)は保全状況を「準絶滅危惧(NT)」としていて、少し心配な段階にあります。
日本では、一部の動物園やサファリパークでシマハイエナを見ることができます。夜行性なので昼間は寝ていることも多いですが、運がよければ、背中のたてがみやしま模様をじっくり観察できます。夜行性のため、昼間は寝ていることが多い動物です。
ハイエナのなかま


参考文献
- IUCN Red List「Hyaena hyaena(Striped Hyaena)」
- Wikipedia(英語版)「Striped hyena」
- Animal Diversity Web「Hyaena hyaena」(ミシガン大学)
画像出典
アイキャッチ画像: Rushikesh Deshmukh DOP, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(本文中の写真は各キャプションに出典を記載)


