カピバラは、南米にすむ世界最大のネズミのなかまです。おだやかな性格と、冬に温泉に入る姿で親しまれています。川や湿地のそばで群れをつくり、危ないときは水にもぐって逃げる、半分水生の動物です。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:齧歯目(げっしもく) Rodentia
- 科:テンジクネズミ科 Caviidae
- 属:カピバラ属 Hydrochoerus
- 種:カピバラ Hydrochoerus hydrochaeris
和名・英名
- 和名:カピバラ
- 英名:Capybara
別名・学名の由来
学名の Hydrochoerus は、「水のブタ」という意味です。水辺で暮らすずんぐりした姿から付けられました。ペットで知られるモルモット(テンジクネズミ)と同じ科のなかまで、いわば大きくなった親せきにあたります。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約1.0〜1.3m、体重 35〜66kg(最大91kgの記録) |
|---|---|
| 分布 | 南米(チリを除く広い範囲) |
| 生息環境 | 川・湖・湿地など、水辺の草地や森 |
| 食べもの | 草・水草など(草食) |
| 寿命 | 野生で数年〜10年、飼育下で約12年 |
| 保全状況 | IUCN:低懸念(LC) |
世界最大のネズミ
カピバラは、ネズミやリスと同じ齧歯類のなかまです。その中で世界最大の種で、体重は35〜66kg、大きな個体は91kgの記録もあります。小柄でも大型犬ほど、大きな個体は大人ひとりに近い体重がある、というわけです。姿は、ペットのモルモットをそのまま巨大にしたようです。

一生伸び続ける歯
齧歯類の大きな特徴は、前歯が一生のび続けることです。カピバラも同じで、前歯もおくの歯もずっとのび続けます。かたい草をかじって食べるうちに歯はすり減りますが、のび続けることでちょうどよい長さが保たれます。1日じゅう草を食べていられるのは、この歯のおかげです。
もう1種いる近縁種
あまり知られていませんが、カピバラにはもう1種の近縁種がいます。パナマからコロンビアにすむ「コビトカピバラ」で、ふつうのカピバラより一回り小さい種です。ただし数は多くありません。動物園などで見られるのは、ほとんどが、ここまで紹介してきたふつうのカピバラです。
水辺で生きる半水生動物
水にもぐって敵から逃げる

泳ぎが得意
カピバラは泳ぎが得意です。足には水かきのようなつくりがあり、水の中を上手に進みます。息を止めて、最大5分ほど水にもぐっていられます。
水は最高の逃げ場
ジャガーなどの敵におそわれそうになると、カピバラは水の中へ飛びこんで身をかくします。水辺はカピバラにとって、食事の場であると同時に、いざというときの逃げ場でもあります。
顔の上のほうに目・耳・鼻
カピバラの顔をよく見ると、目・耳・鼻がどれも頭の上のほうに並んでいます。これは、体を水にしずめたまま過ごすための工夫です。頭の上だけを水面に出しておけば、見張りも呼吸もできます。同じ水辺にすむカバも、よく似た顔のつくりをしています。水の上に顔の一部だけを出して、静かに敵を警戒できるのです。
南米では天敵だらけ
のんびりして見えるカピバラですが、南米の野生では多くの動物にねらわれます。陸ではジャガーやピューマ、水辺ではワニのなかまのカイマンや大蛇のアナコンダが天敵です。空からは大型の猛禽オウギワシもおそいます。とくに子どもは危険にさらされます。カピバラが水辺を離れず、危ないとすぐ水へ逃げるのは、こうした敵から身を守るためです。野生での寿命が短いのも、これが理由です。
カピバラの1日
朝夕に食べ、昼は水で涼む
野生のカピバラは、おもに朝と夕方に草を食べます。暑い日中は、水につかったり日かげで休んだりして、体温が上がりすぎるのを防ぎます。えさは何でも食べるわけではなく、好きな草を選んで食べる「えり好み」をします。1日の多くを、のんびり草を食べて過ごす動物です。
見た目によらず、よくしゃべる
おっとりして見えるカピバラですが、なかなかのおしゃべりです。鼻を鳴らす音や口笛のような声など、いくつもの声を使い分けて仲間とやりとりします。危険を感じたときは、吠えるように鳴いて群れに知らせます。声は、群れで暮らすカピバラにとって大切な連絡手段です。
温泉に入るカピバラ
日本の冬の風物詩として有名なのが、温泉につかるカピバラです。気持ちよさそうに湯船にひたる姿は、多くの人を癒してきました。この光景は、日本のある動物園から始まりました。
偶然生まれた冬の名物
カピバラの温泉が始まったのは、1982年の伊豆シャボテン公園(静岡県)です。飼育員がお湯で展示場を掃除していたとき、湯だまりに体をひたしてくつろぐカピバラに気づきました。そこで池にお湯を入れてお風呂を用意したところ、カピバラたちは喜んで入ったといいます。以来、冬の名物イベント「元祖カピバラの露天風呂」として続いています。
なぜお湯に入るのか
カピバラはもともと南米の暖かい地域の動物で、寒さが苦手です。寒い日には、仲間どうしでぎゅっと身を寄せ合って過ごします。冷たい水にはあまり入りたがりませんが、温かいお湯なら話は別です。人と同じように、あたたかいお湯につかると気持ちよく、体も温まります。だからこそ、寒い冬に喜んで温泉に入るのです。
おだやかで平和な性格
カピバラは、とてもおだやかで争いを好まない動物です。ふだんは10〜20頭ほどの群れで暮らし、乾季には100頭近くが集まることもあります。他の動物にも寛容で、鳥やサルが背中に乗っても平気なことがあります。そのおおらかな姿から、「癒しの動物」としてインターネットでも大人気です。

生まれてすぐ歩ける子ども

メスは約5か月の妊娠ののち、平均して4頭ほどの子を産みます。カピバラの子は「早熟」です。生まれたときから目が開いていて、毛も生えていて、すぐに歩けます。1週間ほどで草を食べ始め、群れのメスたちが力を合わせて子どもを守り育てます。
自分のうんちを食べる?
意外に知られていませんが、カピバラは自分のふんを食べることがあります。行儀が悪いわけではなく、これも草を食べる動物の知恵です。かたい草は一度では消化しきれません。そこで一度出したふんをもう一度食べ、腸の中の細菌の力を借りて、栄養やビタミンをしっかり取り込みます。ウサギなどにも見られる仕組みです。
家で飼える?
おだやかで人にもなつくため、ペットとして飼う人もいます。しかし、飼うのは簡単ではありません。理由はいくつかあります。
- 大きい:体重が数十kgにもなり、広い場所が必要。
- 水場がいる:泳げる水辺がないと、健康に暮らせない。
- さびしがり:群れで暮らす動物で、1頭だけだとストレスをためやすい。
- ビタミンCが作れない:体内でビタミンCを作れず、えさで補わないと病気になる。
会うなら動物園で
こうした世話を個人でこなすのはむずかしく、日本でカピバラに会うなら動物園が現実的です。全国の多くの動物園で飼育されていて、会うのは難しくありません。冬には、温泉に入る姿を見られる園も各地にあります。えさやりやふれあいを体験できる園もあり、その人なつっこさから子どもにも大人気です。

参考
- Wikipedia(英語版)「Capybara」(大きさ・半水生・食性・天敵の各節)
- 伊豆シャボテン動物公園「元祖カピバラの露天風呂」(温泉の由来)
- San Diego Zoo「Capybara」(生態・社会性)
画像出典
アイキャッチ画像:Wilfredor, CC0, via Wikimedia Commons(16:9にトリミングして使用)。本文中の画像は各キャプションに出典を記載しています。


