オリンピックマーモットは、アメリカ・ワシントン州のオリンピック半島だけにすむマーモットです。北米でいちばん大きなマーモットで、とても社交的。仲間どうしで「とっくみあい」をして遊ぶことでも知られ、2009年にはワシントン州の公式ほ乳類にも選ばれました。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:齧歯目(げっしもく) Rodentia
- 科:リス科 Sciuridae
- 属:マーモット属 Marmota
- 種:オリンピックマーモット Marmota olympus
和名・英名
- 和名:オリンピックマーモット
- 英名:Olympic marmot
いちばん近い仲間
いちばん近い仲間は、同じ北米のバンクーバーマーモットや、シラガマーモット(hoary marmot)です。オリンピックマーモットは、氷期にシラガマーモットの一部が取り残されて生まれたと考えられています。学名の「olympus」は、すみかのオリンピック半島にちなんだ名前で、1898年に記載されました。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 約67〜75cm(尾は18〜24cm) |
|---|---|
| 体重 | 夏で約4〜8kg、秋は最大11kgほど(北米最大のマーモット) |
| 分布 | アメリカ・ワシントン州オリンピック半島だけ(固有種) |
| 生息環境 | 標高1,000〜2,000mの高山草原 |
| 食べ物 | 高山草原の草・花(完全な草食) |
| 寿命 | 野生で10年前後とされる |
| 保全状況 | IUCN:軽度懸念(LC) |
※ 軽度懸念(LC)とは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「今すぐ絶滅する心配は小さい」とされるランクです。ただしオリンピックマーモットはすむ場所がとても狭く、温暖化などの影響が心配されています。
北米いちばん大きなマーモット
家ネコくらいの大きな体
オリンピックマーモットは、北米にすむ6種のマーモットの中でいちばん大きな種です。大きさは家ネコくらいで、体長は67〜75cmあります。夏の体重は8kgほど、秋には最大11kgにもなります。頭は広く、目や耳は小さめで、足は短くずんぐりしています。穴を掘るのに向いた、鋭くて丸い爪を持っています。

オスとメスで大きさが違う
この種は、マーモットの中でもオスとメスの体格差がとくに大きいことで知られます。大人のオスは、メスより平均で2割ほども重くなります。同じ種でも、オスのほうがひとまわり大きく見えるのです。
季節で変わる毛の色
ふだんの毛は全体が茶色で、ところどころに小さな白い部分があります。この毛の色は、季節や年れいによって少しずつ変化します。とくに夏は色が淡くなり、白っぽい部分が目立ちます。毛の生えかわりは年に1回、雪どけのあとにまとめて起こります。
とても社交的な遊び好き
家族のコロニーで暮らす
オリンピックマーモットは、家族を中心としたコロニー(群れ)で暮らします。コロニーの大きさはさまざまで、1つの家族だけのものから、いくつもの家族が集まって40頭にもなるものまであります。ふつうは1組のペアだけが繁殖し、繁殖しない個体は見張りや巣穴の手入れを担います。若い個体は2〜3年ほど家族と過ごしてから独立します。この長い子育て期間も、仲のよい群れをつくる理由の一つです。

とっくみあいをして遊ぶ
オリンピックマーモットは、マーモットの中でもとくに社交的な動物です。仲間どうしで鼻を近づけてあいさつし、じゃれ合うように「とっくみあい(プレイファイト)」をして遊びます。単独で暮らすグラウンドホッグとは、まるで正反対の性格です。危険を知らせるときは、4種類もの口笛のような声を使い分けます。
この鳴き声による情報のやりとりがとても発達しているため、多くのマーモットは一生を無事に生きぬくといわれています。おしゃべりで仲のよい群れの力が、身を守るのに役立っているのです。
世界でここだけ ― オリンピック半島
国立公園の高山草原にすむ
オリンピックマーモットがすむのは、ワシントン州オリンピック半島の高山草原だけです。標高1,000〜2,000mほどの、氷河が作った草原に集中しています。すみかの多くはオリンピック国立公園の中にあり、法律で守られています。氷期に山の上へ取り残されたことで、この半島だけの固有種になったと考えられています。

冬眠と繁殖
8か月の冬眠で体重が半分に
オリンピックマーモットが地上で活動できるのは、6〜9月の4か月ほどだけです。残りの8か月以上は冬眠して過ごします。冬眠は9月ごろに始まり、深い眠りの間はまったく食べません。そのため春に目ざめるころには、体重が半分近くまで減っています。大人は5月、子どもは6月に地上へ出てきます。
隔年で1〜6頭の子を産む
メスは3才ごろから子を産めるようになります。繁殖は毎年ではなく、1年おきに行われます。1回に生まれる子は1〜6頭で、育児は巣穴の中で進みます。子は7月ごろに地上へ現れ、秋までのあいだに、遊びながら群れの中で生き方を学んでいきます。

食べものと、せまる危機
高山草原の草花を食べる
オリンピックマーモットは草食で、高山草原に生えるさまざまな草や花を食べます。春には新芽や花を、夏にはやわらかい葉や茎を選んで食べます。かれた草は、食べるだけでなく巣穴の寝どこの材料にもします。短い夏のあいだにしっかり食べて、長い冬眠にそなえます。
温暖化とコヨーテという新たな脅威
近年、この生き物には新しい危機がせまっています。1つは地球温暖化です。雪どけが早まると、冬眠のリズムや草花の育つ時期がずれ、子育てにも影響が出ます。もう1つは、近ごろ半島にやってきたコヨーテです。今ではコヨーテが、オリンピックマーモットの主な天敵になっています。
さらに、道路や登山道が広がることで、すみかがこまぎれに分断される心配もあります。オリンピック国立公園では、数の見守りや天敵の管理、観光の調整などの保護がすすめられています。せまい場所にしかいない生き物だからこそ、大切に見守っていく必要があります。
知っておきたい豆知識
ワシントン州の「顔」
オリンピックマーモットは、2009年にワシントン州の公式なほ乳類(州のシンボル動物)に選ばれました。1つの州だけにすむ、その州ならではの動物として、地元の人々に大切にされています。学校の教材などにも登場し、自然を守る心を伝える役目も果たしています。
学名は「クマネズミ」から
オリンピックマーモットは、昔は「Arctomys(アルクトミス)」という属に分けられていました。これはギリシャ語で「クマ+ネズミ」という意味です。ずんぐりした体で穴を掘るこの動物に、ぴったりの名前だったのかもしれません。今はほかのマーモットと同じ Marmota 属にまとめられています。


参考
- IUCN Red List: Marmota olympus(Cassola, F. 2016, 軽度懸念LC)
- Wikipedia「Olympic marmot」(英語版・社会性/毛色/州の固有ほ乳類/コヨーテの脅威)


