パイプウニ

ウニ類(棘皮動物)

パイプウニは、鉛筆のように太いパイプ状のトゲをもつ、変わった姿のウニです。ふつうのウニのトゲは細くとがっていますが、パイプウニのトゲは太く、先が丸くなっています。インド洋から太平洋のサンゴ礁にすみ、その丈夫なトゲは風鈴などの工芸品にも使われてきました。日本語の情報は少ないものの、体のつくりや暮らしには見どころの多いウニです。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:棘皮動物門 Echinodermata
  • 綱:ウニ綱 Echinoidea
  • 目:ホンウニ目 Echinoida
  • 科:ナガウニ科 Echinometridae
  • 種:パイプウニ Heterocentrotus mamillatus

和名・英名

  • 和名:パイプウニ
  • 英名:Slate pencil urchin

名前の由来

和名の「パイプウニ」は、トゲが太いパイプのような形をしていることにちなみます。英名の Slate pencil urchin(石板の鉛筆ウニ)は、昔このトゲを、石板(スレート)に字を書くための石筆(せきひつ)として使ったことに由来します。どちらの名前も、この仲間の変わったトゲの形からつけられました。同じ棘皮動物には、ヒトデやナマコ、ウミユリなどが含まれます。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ殻(から)の直径 約8cm前後/トゲの長さ 最大10cmほど
分布インド洋〜西太平洋のサンゴ礁(ハワイに特に多い)。日本では南西諸島など
生息環境サンゴ礁の岩やがれ場。水深 約8〜25m
食べもの岩の表面につく藻類(おもにサンゴ藻)
活動夜行性(昼は岩のすきまに隠れる)

太いパイプ状のトゲ

鉛筆のように太く、先は丸い

刺さらない太いトゲ

パイプウニの一番の特徴は、太くて丸いトゲです。鉛筆ほどの太さがあり、先も丸いため、ふれてもほとんど刺さりません。多くのウニがもつ、細くとがったトゲとは大きく異なる形です。断面は丸みを帯びた三角形で、先に向かって少しずつ細くなります。トゲの根もとには白い輪があり、全体に濃い色と薄い色の帯が交互に並びます。トゲは折れても、時間をかけて再び伸び、少しずつ補われます。

パイプウニの標本
パイプウニの標本。鉛筆のように太い赤いトゲが並ぶ

夜になると色が薄くなる

トゲの色は、あざやかな赤や赤褐色が多く、茶色や紫がかった個体も見られます。地域によっても差があり、ハワイのものは赤が鮮やか、太平洋のものは黄色や茶色を帯びるとされます。この赤いトゲは、夜になると白っぽいピンク色に変わります。昼と夜とで見た目が変わるのも、この仲間の特徴の一つです。

割れにくいトゲのしくみ

この太いトゲは、ただ太いだけではなく、割れにくい作りになっています。トゲの中身は、マグネシウムを含む方解石(ほうかいせき)が、細かな穴の多い網目のように組み上がっています。緻密で硬い層が、もろい多孔質の層をはさむ構造になっています。力が加わってもひびが枝分かれし、一気には折れにくいと考えられています。かたさと粘りを両立したこの構造は、材料の研究でも注目されてきました。波の荒いサンゴ礁で岩にこすれても欠けにくく、丈夫さを保てるしくみです。

ウニのからだ

5つに分かれた体と管足

体は5つの方向に分かれる

ウニは、ヒトデやナマコと同じ棘皮動物の仲間です。棘皮動物の体は、中心から5つの方向へ均等に分かれる「5放射相称(ごほうしゃそうしょう)」という作りをもちます。トゲを取り除いた殻を見ると、5枚の花びらのような模様が並んでいるのが分かります。頭やしっぽといった前後の区別がなく、体のどの向きも同じような作りになっています。

トゲを取り除いたパイプウニの殻
トゲを取り除いた殻。トゲがついていた突起が並び、中心に穴が開く

管足で歩く

ウニの体の表面には、トゲのほかに「管足(かんそく)」と呼ばれる細い管がたくさん伸びています。管足は、体の中に張りめぐらされた水の管につながっていて、水の圧力で伸び縮みします。パイプウニは、この管足とトゲを使って岩の上をゆっくり移動します。管足の先は吸盤のようになっていて、岩にはりつく役割ももちます。

体の下の口とアリストテレスの提灯

ウニの口は、体の下側(岩に接する面)の中心にあります。この口の中には、「アリストテレスの提灯(ちょうちん)」と呼ばれる、5枚の歯からなる複雑な器官がおさまっています。名前は、古代ギリシャの哲学者アリストテレスが、その形を提灯にたとえたことに由来します。パイプウニは、この5枚の歯で岩の表面を削り、こびりついた藻を食べます。歯は使ううちにすり減りますが、伸び続けることで補われます。

パイプウニの口のある面
体の下側(口のある面)。中心の口にアリストテレスの提灯がおさまる

食べるウニとのちがい

日本で「ウニ」として食べられるのは、バフンウニやムラサキウニなどの仲間です。これらは細く短いトゲをもち、岩場や海藻の多い浅い海にすみます。食用にされるのは、殻の中にある生殖巣(精巣や卵巣)の部分です。パイプウニも同じウニの仲間ですが、太いトゲやサンゴ礁での暮らしなど、姿も生き方も大きく異なります。ひとくちにウニといっても、その種類は世界に数百種を数えます。

サンゴ礁の夜の暮らし

昼と夜で変わる過ごし方

昼は岩のすきまに身を固定する

パイプウニは夜行性です。昼のあいだは、岩のすきまやくぼみに入って過ごします。太いトゲを岩の壁につっぱり、体をしっかりと固定します。こうしておくと、波に流されにくく、魚などの外敵にも引きずり出されにくくなります。太くて丈夫なトゲは、身を守るだけでなく、体を岩にとどめておく支えにもなっています。それでも、モンガラカワハギやベラの仲間は、丈夫なトゲごとパイプウニを割って食べることが知られます。

夜に出て藻を食べる

日が暮れると、パイプウニは岩のすきまから出て活動を始めます。おもに食べるのは、岩の表面にこびりついたサンゴ藻などの藻類です。アリストテレスの提灯の歯で、硬い藻を削り取って食べます。朝になると、また元のようなすきまに戻って休みます。

ウニにしてはよく動く

パイプウニは、ウニの仲間としては比較的よく移動することが分かっています。ある調査では、1日に平均96cmほど動き、出発点から6mも離れた例が記録されました。前後の決まった向きがないため、進みたい方向を「前」にして、どの向きにも同じように動けます。ゆっくりとではありますが、岩から岩へと餌場を移りながら暮らしています。

海に卵を放つふえ方

パイプウニは、オスとメスが海の中に精子と卵を放ち、水中で受精させてふえます。受精した卵は小さな幼生になり、しばらくプランクトンとして海を漂います。やがて姿を変え、岩の上に降りて小さなウニになります。紅海での調査では、初夏の5〜6月ごろに産卵が集中し、月の満ち欠けと関係している可能性も指摘されています。産卵の時期は、地域や年によっても変わるとされます。

人とのかかわり

パイプウニの太いトゲは、古くから工芸品に利用されてきました。トゲを並べてつるした風鈴は、ふれ合うと涼しげな音を立てます。首飾りなどの装飾品や、名前の由来にもなった石筆としても使われました。身は食用にされることもありますが、食用の中心となるほかのウニほど、盛んに利用されるわけではありません。トゲには、小さなエビがつくことが知られています。このエビはトゲのあいだにひそみ、パイプウニの体をきれいに保つ掃除役とみられています。生きたパイプウニは、こうした小さな生きもののすみかにもなっています。

参考

画像出典

  • アイキャッチ(生体・ハワイ):Scott Roy Atwood, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(Heterocentrotus mammillatus in situ from Hawaii)
  • 標本(トゲ):Didier Descouens, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(Heterocentrotus mamillatus MHNT.jpg)
  • 殻:Frédéric Ducarme, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(Heterocentrotus mamillatus test aboral.JPG)
  • 口のある面:Didier Descouens, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(Heterocentrotus mammillatus MHNT bouche.jpg)
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