ラッコ

食肉目(ネコ・イヌ・クマ)

ラッコは、北太平洋の海にすむイタチのなかまです。海面にあお向けで浮かび、おなかの上で石を使って貝を割る「道具使い」で親しまれています。動物界でいちばん密な毛皮を持ち、その毛皮をねらわれて激減した歴史でも知られます。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:食肉目 Carnivora
  • 科:イタチ科 Mustelidae
  • 属:ラッコ属 Enhydra
  • 種:ラッコ Enhydra lutris

和名・英名

  • 和名:ラッコ
  • 英名:Sea otter

別名・学名の由来

「ラッコ」という名前は、アイヌの言葉に由来するとされています。イタチ科というと小さな動物を思いうかべますが、ラッコはそのイタチ科の中でいちばん重い種です。いっぽうで、海にすむ哺乳類(海獣)の中では最小級にあたります。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体長 約1.0〜1.5m、体重 オス22〜45kg・メス14〜33kg
分布北太平洋の沿岸(北海道東部・千島・アラスカ・カリフォルニアなど)
生息環境海藻(ケルプ)の茂る、岸に近い海
食べものウニ・貝・カニなど(1日に体重の約25〜38%)
寿命野生でおよそ10〜20年
保全状況IUCN:絶滅危惧(EN)

石で貝を割る道具使い

ラッコといえば、海面にあお向けで浮かびながら、おなかの上で貝を割る姿です。かたい貝やウニは、そのままでは食べられません。そこでラッコは、拾ってきた石を胸の上にのせ、そこへ貝を打ちつけて割ります。道具を使う哺乳類はとても少なく、ラッコはその数少ない一つです。

あお向けで浮かびおなかの上で食べるラッコ
あお向けで浮かび、おなかの上で食べる(Menke David / USFWS, パブリックドメイン

お気に入りの石を持ち歩く

ラッコには、前足のわきの下にたるんだ皮のふくろがあります。もぐって集めたえさや、貝を割るための石を、このふくろに入れて持ち運びます。気に入った石を、何度も使い続ける個体もいると観察されています。自分の道具を持ち歩く動物というわけです。

1日に体重の3〜4割を食べる

脂肪がないから食べ続ける

ラッコは、1日に体重の25〜38%にあたる量を食べます。体重30kgのラッコなら、毎日8〜10kg以上を食べる計算です。これほど食べるのは、体温を保つためです。ラッコにはアザラシのような分厚い脂肪の層がなく、冷たい海で体を温めるのに大量のエネルギーが要ります。

食べるものは100種以上

食べるものはウニや貝、カニなど100種以上に及びます。かたい殻の貝やウニも、石の道具を使えば中身を食べられます。えさを幅広く利用できることが、ラッコの強みです。

動物界でいちばん密な毛皮

1cm²に最大15万本

ラッコの体は、驚くほど密な毛でおおわれています。その密度は1cm²あたり最大で約15万本ともいわれ、動物界でいちばんです。クジラやアザラシは分厚い脂肪で寒さを防ぎますが、ラッコは毛の間に空気をたくわえ、その空気の層で体を温めます。ふわふわの毛皮は、冷たい海を生きぬくための命づなです。

毛づくろいが命

毛づくろいをするラッコ
ひまさえあれば毛づくろいをする(Tuttle Stephen / USFWS, パブリックドメイン

毛皮が汚れて空気をふくめなくなると、ラッコは体温を保てず凍えてしまいます。そのためラッコは、ひまさえあれば念入りに毛づくろいをします。毛の間の水をしぼり出し、新しい空気を送りこみ、清潔に保ちます。のんびり毛づくろいしているように見えますが、これは生きるために欠かせない手入れです。

海に浮かんで暮らす

あお向けで食べて眠る

ラッコは一生のほとんどを海の上で過ごし、陸にはあまり上がりません。海面にあお向けで浮かび、胸をテーブルのようにして食事をします。眠るときも、寝るときも、この浮かんだ姿勢のままです。子育ても海の上で行います。

手をつなぎ、ケルプに巻きつく

眠っている間に流されないよう、ラッコは工夫をします。仲間どうしで前足をつないで浮かんだり、海藻(ケルプ)を体に巻きつけて、いかりのように使ったりします。手をつないで眠るしぐさは、ラッコらしい光景として人気です。ラッコの群れは「いかだ(ラフト)」と呼ばれ、ときに数百頭が集まります。

おなかの上で子育て

おなかの上に赤ちゃんをのせて浮かぶ母ラッコ
おなかの上に赤ちゃんをのせて育てる(Mike Baird, CC BY 2.0

赤ちゃんは、ふつう一度に1頭生まれます。母親は自分のおなかの上に赤ちゃんをのせ、浮かべたまま育てます。もぐってえさを探すあいだは、赤ちゃんが流されないよう、ケルプに巻きつけて置いていくこともあります。子はしばらく母親のそばで、泳ぎ方やえさのとり方を覚えていきます。

カワウソとの違い

ラッコとよく混同される近縁種に、カワウソがいます。どちらも同じイタチ科で、名前も姿も似ています。しかし、暮らし方には大きな違いがあります。

海のラッコ、川のカワウソ

ラッコは一生のほとんどを海の上で過ごす、体重40kg級の大きめのイタチ科です。いっぽうカワウソ(コツメカワウソなど)は、川や海辺で暮らす小型のなかまで、体は細長くほっそりしています。日本にいた固有種のニホンカワウソは、乱獲などによってすでに絶滅しました。

道具を使うのはラッコ

あお向けで海に浮かび、石で貝を割る姿は、ラッコならではのものです。カワウソは陸にも上がり、水辺に巣穴を作って休みます。手先が器用で遊び好きなところは似ていますが、道具を使って食べるのはラッコの特技です。

毛皮のために激減した歴史

世界一の毛皮がまねいた乱獲

動物界でいちばん上等な毛皮を持つことは、ラッコにとって不幸でもありました。その毛皮を目当てに、18世紀から20世紀の初めにかけて世界中で乱獲されました。もともと数十万頭いたとされるラッコは、毛皮交易でおよそ100万頭が殺されました。そして一時は、世界で1,000〜2,000頭ほどまで激減してしまいます。

今も絶滅危惧種

海に浮かぶ2頭のラッコ
保護によって数を戻しつつあるラッコ(Mike Baird, CC BY 2.0

その後の保護によって、ラッコは以前の生息地の3分の2ほどまで戻ってきました。それでもIUCNレッドリストでは、今も「絶滅危惧(EN)」に分類されています。日本のまわりでは数が非常に少なく、北海道の東部などにわずかに見られるだけです。

IUCNレッドリストとは、世界の野生生物の絶滅の危険度を評価した国際的なリストです。危険度の高い順に、絶滅危惧(CR・EN・VU)などの区分があります。

日本の水族館でも減っている

会えるのは全国で数頭

日本でラッコに会える水族館は、近年ぐんと減っています。1990年代のピークには全国で120頭以上が飼育されていました。ところが2020年代には、わずか3頭ほどにまで減ってしまいました。今ラッコがいるのは、三重県の鳥羽水族館と、福岡県のマリンワールド海の中道だけです。

輸入も繁殖も難しい

減った理由は大きく2つあります。一つは、輸入が2003年を最後に途絶えていることです。ワシントン条約で、ラッコの取引が制限されているためです。もう一つは、飼育下での繁殖がとても難しいことです。国内で成功した例はごくわずかで、いるラッコの高齢化も進んでいます。水族館でラッコに会える機会は、年々貴重になっています。

ケルプの森を守る主役

ラッコは、ただかわいいだけの動物ではありません。海の森を守る、大切な役割をになっています。その鍵が、大好物のウニです。

海藻ケルプに囲まれて浮かぶラッコ
海藻(ケルプ)に囲まれて暮らす(USFWS, パブリックドメイン

ウニを食べてケルプを守る

ウニは海藻(ケルプ)を食べる生き物です。ラッコがたくさんウニを食べると、ウニが増えすぎず、ケルプの森が守られます。逆にラッコがいなくなると、ウニが爆発的に増えて海藻を食べつくします。そうして海底は岩ばかりの「ウニの荒野」に変わってしまいます。実際に、ラッコが消えた海でこうした変化が観察されています。

キーストーン種の代表

ケルプの森は、多くの魚や貝のすみかであり、二酸化炭素を吸収する働きもあります。ラッコのように、たった1種いるだけで生態系全体を支える生き物を「キーストーン種(かなめ石の種)」と呼びます。ラッコはその代表としてよく知られています。かわいい見た目の裏で、海の森を支える大きな仕事をしています。

クズリ
クズリは、北のさむい森や雪原にすむ、イタチの仲間です。体は小さめですが、自分よりずっと大きな動物にも立ち向かう強さと気の荒さで知られ、「最強のイタチ」「小さな猛獣」などと呼ばれます。見た目は小さなクマのようで、太い体とするどいつめを持ってい...

参考

画像出典

アイキャッチ画像:Marshal Hedin, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons(16:9にトリミングして使用)。本文中の画像は各キャプションに出典を記載しています。

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