ハイエナ

哺乳類

ハイエナは、アフリカや西アジアの草原・乾燥地にすむ、肉食の哺乳類です。「死肉をあさる悪者」というイメージを持たれがちですが、じつは自分で狩りもする、かしこくて力強い動物です。骨まで噛みくだく強力なあごを持ち、種類によってはメスが群れを率います。世界には4種がいて、中にはシロアリだけを食べる変わり種までいます。イヌにもネコにも見えますが、じつはどちらとも別の「ハイエナ科」という独自のグループです。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:食肉目 Carnivora
  • 亜目:ネコ亜目 Feliformia
  • 科:ハイエナ科 Hyaenidae

現生する4種

  • ブチハイエナ Crocuta crocuta
  • シマハイエナ Hyaena hyaena
  • カッショクハイエナ Parahyaena brunnea
  • アードウルフ Proteles cristata

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体長 約55〜165cm・体重 約8〜85kg(種による。最大はブチハイエナ)
分布アフリカ全域・中東・南アジア(インド北西部)
生息環境サバンナ・乾燥した草原・半砂漠・岩場
食べ物死肉・獲物(骨まで食べる)。アードウルフはシロアリ
寿命野生でおよそ12〜25年(種による)
保全状況ブチ・アードウルフ=低懸念(LC)/シマ・カッショク=準絶滅危惧(NT)

ハイエナってどんな動物?

イヌでもネコでもない、ハイエナ科

ハイエナは、見た目がイヌによく似ています。しかし、じつはイヌの仲間ではありません。分類のうえでは「ネコ亜目」に入り、ネコやマングースに近い独自の「ハイエナ科」というグループです。前あしが後ろあしより長いため、背中が後ろに向かってなだらかに下がった、独特の体つきをしています。よく発達した鼻を持ち、遠くの死肉のにおいもかぎ分けられます。多くは夜に活動する夜行性です。

骨まで噛みくだく、最強クラスのあご

ハイエナのいちばんの武器は、そのあごです。幅が広くがんじょうな頭骨に、太い咀嚼の筋肉がつき、哺乳類の中でもとくに強い力でものを噛みます。ライオンが食べ残した骨さえ、ばりばりと噛みくだいて食べてしまうほどです。丈夫な胃で骨や皮まで消化できるため、ほかの動物が食べ残したものを、むだなく利用できます。この力が、ハイエナを「サバンナの掃除屋」にしているのです。

ライオン
ライオンは、アフリカの草原にすむ大型のネコのなかまです。ネコの仲間でただ一種、「プライド」と呼ばれる群れをつくって暮らします。オスの立派なたてがみと堂々とした姿から、「百獣の王」と呼ばれてきました。分類と学名分類階層界:動物界 Animal...

死肉あさりだけじゃない ― 狩りの名手

ハイエナには「他人の獲物を横取りする、ずるい動物」というイメージがあります。でも、これは大きな誤解です。とくにブチハイエナは、自分たちで狩りをする、すぐれたハンターです。群れで力を合わせ、ヌーやシマウマ、インパラなどの大きな草食動物を追いつめて仕留めます。食べているもののうち、自分で狩った獲物のほうが多いという報告もあるほどです。むしろ、ライオンのほうがハイエナの獲物を横取りすることも少なくありません。獲物をめぐって、ライオンとハイエナは、たがいにゆずらないライバルどうしなのです。

メスが群れを率いる、ふしぎな社会

ブチハイエナの群れには、とてもめずらしい特徴があります。多くの動物ではオスが強いのに対し、ブチハイエナはメスがオスより大きく、強いのです。群れは「クラン」と呼ばれ、多いときには数十頭にもなりますが、その中でいちばん上に立つのはメスです。母から娘へと順位が受けつがれる、メス中心の社会をつくります。さらにメスのからだには、オスとよく似た特殊なつくりがあり、赤ちゃんもそこを通して産みます。そのため出産はとてもたいへんで、ハイエナならではの大きな特徴として、研究者からも注目されています。

「笑い声」でおしゃべりする

ハイエナといえば、「ヒヒヒッ」と笑うような、あの独特の鳴き声が有名です。この「笑い声」は、じつは楽しくて笑っているわけではありません。おもに、えものを前にして興奮したときや、強い相手に追いつめられたときに出す声です。ハイエナはこの笑い声のほか、遠くまで響く「ウォーッ」という声など、さまざまな鳴き声を使い分けます。声は一頭ずつびみょうに違い、仲間はそれを聞き分けて、だれの声かを見分けているといわれます。声によるおしゃべりが、とても発達した動物なのです。

世界の4種のハイエナ

ハイエナ科には、いま4種がいます。それぞれ大きさも、食べ物も、暮らしぶりも違います。

ブチハイエナ(いちばん大きく、狩りもうまい)

ブチハイエナ
ブチハイエナ。全身の黒い斑点が名前の由来(Timothy A. Gonsalves, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

4種の中でいちばん大きく、体重は最大85kgにもなります。全身に黒い斑点があり、メス中心の大きな群れをつくります。狩りが得意で、サバンナの頂点に立つ動物の一つです。

ブチハイエナ
ブチハイエナは、アフリカのサバンナにすむ、ハイエナ科でいちばん大きな動物です。全身にちらばる黒い斑点と、メスが群れを率いるめずらしい社会で知られています。かむ力は哺乳類でも屈指で、太い骨さえばりばりと砕いてしまいます。死肉をあさるイメージが...

シマハイエナ(体のしま模様とたてがみ)

シマハイエナ
シマハイエナ。体の黒いしまと、背中のたてがみが目印(Rushikesh Deshmukh DOP, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

体に黒いしま模様があり、背中には立派なたてがみがあります。北アフリカから中東、インドまで広く分布し、おもに死肉を食べます。おどろくと、たてがみを立てて体を大きく見せます。

シマハイエナ
シマハイエナは、アフリカ北部から中東・中央アジア・インドまで広く暮らす、体に黒いしま模様をもつハイエナです。背中の長い毛(たてがみ)を立てて体を大きく見せるのが得意で、アジアにすむ唯一のハイエナでもあります。分類と学名界:動物界門:脊索動物...

カッショクハイエナ(長い毛の南アフリカ種)

カッショクハイエナ
カッショクハイエナ。長くて濃い茶色の毛におおわれる(Bernard DUPONT, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

長くて濃い茶色の毛を持つ、南部アフリカのハイエナです。乾いた大地や海岸で、死肉をさがして単独で歩き回ります。数が少なめで、準絶滅危惧種に指定されています。

カッショクハイエナ
カッショクハイエナは、南部アフリカの砂漠や海岸に暮らす、全身が長い茶色の毛におおわれたハイエナです。ナミブ砂漠の海岸ではアザラシの死がいをあさって歩くことで知られ、ハイエナの仲間でいちばん数が少ない、めずらしい種でもあります。分類と学名界:...

アードウルフ(シロアリを食べる最小種)

アードウルフ
アードウルフ。ハイエナ科で最小で、シロアリを主食にする(Dawson, CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons

ハイエナ科でいちばん小さく、体重は8〜14kgほど。ほかのハイエナと大きく違い、主食はなんとシロアリです。ねばつく舌で、1年に数十万匹ものシロアリをなめとって食べます。骨を砕くあごは持たず、歯も小さくなっています。

アードウルフ
アードウルフは、ハイエナの仲間なのに大きな動物を襲わず、シロアリばかりを食べて暮らす小さな動物です。細長い顔と大きな耳を持ち、一晩でおよそ30万匹ものシロアリを、長いねばねばの舌でなめとります。ハイエナ科でいちばん小さく、いちばん変わった食...

生態系の掃除役と、人との関係

ハイエナは、死んだ動物をすばやく食べて片づけ、病気の広がりをおさえる「掃除役」として自然の中で大切な役割をになっています。骨まで食べるため、栄養を土にもどす働きもあります。いっぽうで、映画『ライオン・キング』などのえいきょうもあり、「悪者」「ずるい動物」というイメージが世界中に広まってしまいました。実際には、家畜をおそうこともあるため、人ににくまれて駆除されることもあります。誤解の多い動物ですが、じつはかしこくたくましく、生態系になくてはならない存在なのです。

参考

  • Wikipedia「Hyena」英語版(ハイエナ科は食肉目ネコ亜目でネコ・マングースに近い/現生4種/骨を砕く強いあご/ブチハイエナはメス優位の母系社会でメスに偽陰茎がある/アードウルフはシロアリ食)
  • IUCN Red List(ブチ・アードウルフ=LC、シマ・カッショク=NT)
  • 各種のくわしい出典は、上の4種のリンク(種ごとのページ)を参照

画像出典

アイキャッチ画像: Diego Delso, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

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