カモノハシ

単孔類

カモノハシは、オーストラリアにすむ、とても変わった哺乳類です。カモのようなくちばしを持ち、卵を産みます。それでいて、赤ちゃんは乳で育つ、めずらしい動物です。くちばしで電気を感じ取り、オスは毒を持つなど、ふしぎな特徴にあふれています。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:単孔目(カモノハシ目)Monotremata
  • 科:カモノハシ科 Ornithorhynchidae
  • 属:カモノハシ属 Ornithorhynchus
  • 種:カモノハシ Ornithorhynchus anatinus

和名・英名

  • 和名:カモノハシ(漢字で「鴨嘴」)
  • 英名:Platypus(プラティパス)

名前の由来

「カモノハシ」という名前は、カモのくちばしに似た口から来ています。漢字でも「鴨の嘴(くちばし)」と書きます。英語の Platypus は、ギリシャ語で「平たい足」という意味の言葉からできました。学名の Ornithorhynchus は「鳥のくちばし」を意味します。名前のどれもが、あのくちばしに由来しています。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体長 約40〜50cm・体重 約1〜2kg(オスがメスより大きい)
分布オーストラリア東部とタスマニア島。日本にはいない
生息環境川・小川・湖などの淡水の水辺
食べもの肉食(水底の虫の幼虫・エビ・ザリガニ・貝など)
体温約32度(人の37度より低い)
保全状況IUCN: NT(準絶滅危惧)

卵を産む、めずらしい哺乳類

カモノハシの全身
水面を泳ぐカモノハシ(Peterdvv / Bobisbob, CC BY 1.0, via Wikimedia Commons)

カモノハシは「何類」?

カモノハシは、鳥類でも爬虫類でもなく、哺乳類です。ただし、ふつうの哺乳類とは違う点があります。それは、赤ちゃんを産むのではなく、卵を産むことです。哺乳類のなかで、卵を産むのはごく一部だけです。この仲間は「単孔目(たんこうもく)」と呼ばれます。カモノハシと、ハリモグラだけがこの仲間です。

有袋類とは違う仲間

カモノハシは、カンガルーやコアラと同じ「有袋類」とよく混同されます。しかし、この2つは別の仲間です。有袋類は、未熟な赤ちゃんを産み、おなかの袋で育てます。いっぽうカモノハシは、袋ではなく卵から子をかえします。どちらもオーストラリアにすむため、まちがえられやすいだけです。卵を産む哺乳類は、有袋類よりもさらにめずらしい存在です。

卵からかえり、乳で育つ

メスは、巣穴の中で2個ほどの小さな卵を産みます。卵は、17mmほどのやわらかい殻におおわれています。10日ほどあたためると、赤ちゃんがかえります。生まれた赤ちゃんは、母親の乳を飲んで育ちます。卵を産みながら、乳で子を育てる。この2つを合わせ持つことが、カモノハシが哺乳類とされる理由です。

乳首のない授乳

カモノハシには、乳首がありません。そのかわり、おなかの皮ふからにじみ出るように乳を出します。赤ちゃんは、母親の毛ににじんだ乳をなめて飲みます。ふつうの哺乳類とは、乳のあたえ方まで変わっています。

寄せ集めのような姿

泳ぐカモノハシ
水辺のカモノハシ。くちばしと平たい尾が見える(PeteWalsh13, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

三つの動物を合わせた体

カモノハシの体は、まるで何種類もの動物を寄せ集めたようです。カモのようなくちばし、ビーバーのような平たい尾、カワウソのような水かきのある足を持ちます。それぞれの部分が、水辺の暮らしにうまく役立っています。

平たい尾と、水かきの足

ビーバーに似た平たい尾は、泳ぐときの舵になります。この尾には脂肪をたくわえ、非常食のようにも使います。足には水かきがあり、水中をぐいぐいと進めます。陸を歩くときは、水かきを折りたたんで、つめで土をほります。

動物でも指おりの密な毛皮

体は、こげ茶色の短い毛でびっしりおおわれています。この毛は、動物のなかでもとくに密で、カワウソにつぐ厚さです。毛と毛のあいだに空気をためこみ、冷たい水をはじきます。厚い毛皮のおかげで、水の中でも体温を保てます。

骨格と、大昔からの姿

カモノハシは、大昔の哺乳類の特徴を今に残しています。足が体の横から生えるつくりは、爬虫類にも似ています。オスの後ろ足には、毒を出すするどい「けづめ」があります。こうした古い特徴から、カモノハシは哺乳類の成り立ちを知る手がかりとして注目されてきました。

カモノハシの仲間は、とても古くから地球にいました。化石でたどると、恐竜がいた時代にまでさかのぼります。長い年月のあいだ、その姿を大きく変えずに生きのびてきました。卵を産む古いタイプの哺乳類が、今も生きていること自体がめずらしいのです。

くちばしで電気を感じる

カモノハシのくちばし
水中を泳ぐカモノハシ(Issac I Navarro, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

目・耳・鼻を閉じて狩る

カモノハシは、水にもぐって、水底のえさをとります。水の中では、目も耳も鼻も閉じてしまいます。目が見えない状態で、どうやってえさを見つけるのでしょうか。その答えが、あのくちばしにあります。カモノハシは、目でなくくちばしを使って、えものを探し当てます。

4万個の電気センサー

カモノハシのくちばしには、約4万個もの電気を感じるセンサーがならんでいます。生きものが体を動かすと、ごくわずかな電気が生まれます。カモノハシは、えものの筋肉が動くときの微弱な電気を、このセンサーでとらえます。まっ暗な水底でも、動く虫やエビの位置を正確につかめます。目のかわりに電気で「見る」、めずらしい狩りのやり方です。

オスだけが持つ毒

カモノハシのオスは、後ろ足に毒のあるけづめを持っています。この毒は、おもにオスどうしの争いに使われると考えられています。人が刺されると、はげしい痛みにおそわれます。その痛みは、数週間から数か月も続くことがあるとされます。命にかかわることはまれですが、なかなか消えないつらい毒です。いっぽうメスには、この毒のけづめがありません。哺乳類で毒を持つ動物は、とてもめずらしい存在です。

胃のない食事

胃も、歯もない

カモノハシには、胃がありません。食べたものは、食道から腸へ直接送られます。また、大人のカモノハシには歯もありません。胃も歯もない、変わった体のつくりをしています。

ほおにためて、すりつぶす

歯のかわりに、くちばしの中には固いパッドがあります。水底からすくい取った虫や貝を、まずほおの中にためこみます。そして水面にうかび上がり、パッドでゆっくりとすりつぶして食べます。小さなじゃりを一緒にのみこみ、すりつぶしを助けているともいわれます。

川辺の暮らしと子育て

巣穴と川の暮らし

カモノハシは、川や小川のほとりで暮らします。川岸の土に、長い巣穴をほって住みかにします。巣穴は、長いもので30mにもなることがあります。ふだんは1匹で暮らし、明け方や夕方に活発になります。体温は約32度と、ほかの哺乳類より低めです。それでも、厚い毛皮のおかげで冷たい水にも強い動物です。

天敵と、減っていく数

カモノハシをおそう天敵には、大きなヘビや猛禽、水辺のオオトカゲなどがいます。近年は、人がもちこんだキツネなども脅威になっています。川のダムや水の汚れ、干ばつによって、すみかも失われてきました。生息数は、ヨーロッパ人が入植して以来、3割ほど減ったとされます。IUCNは、カモノハシを準絶滅危惧(NT)に分類しています。

どこで会える?

オーストラリアの川

野生のカモノハシに会えるのは、オーストラリア東部とタスマニア島です。静かな川や小川で、明け方や夕方に水面へ出てきます。クイーンズランド州のユンゲラや、ケアンズの近くの川などが、観察地として知られます。水面をすべるように泳ぐ姿や、小さな波紋が、そこにいる目印になります。

日本では会えない

日本の動物園や水族館では、カモノハシを見ることができません。カモノハシは、とてもデリケートで飼育がむずかしい動物です。そのため、オーストラリアの外で飼われることは、ほとんどありません。カモノハシに会いたいときは、オーストラリアまで行く必要があります。

光るふしぎと、発見の歴史

紫外線で青緑に光る

近年、カモノハシに新たな一面が見つかりました。紫外線を当てると、毛が青緑色に光るのです。この「生物蛍光」と呼ばれる性質は、哺乳類ではめずらしいものです。暗い時間に活動するカモノハシにとって、身を守る役に立っているのかもしれません。ただし、その理由はまだよく分かっていません。

「にせもの」と疑われた発見

1799年のカモノハシの図
1799年、はじめて記載されたときのカモノハシの図(Frederick Polydore Nodder, Public domain, via Wikimedia Commons)

カモノハシの標本が、はじめてヨーロッパに届いたのは1799年のことです。あまりに変わった姿から、学者たちは「作りもの」だと疑いました。いくつもの動物をつなぎ合わせた、いたずらだと考えたのです。ある学者は、はさみで縫い目を探したという話も伝わっています。本物と認められるまで、時間がかかった動物でした。今では、そのふしぎな姿が世界中で愛されています。

参考

  • Wikipedia(英語版)「Platypus」(単孔目・電気感覚・毒・生物蛍光・発見史)
  • IUCN Red List:Ornithorhynchus anatinus(NT・分布と脅威)
  • オーストラリアの博物館・保全団体の資料(生態・生息数の減少)
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