リュウグウノツカイ

深海魚類

リュウグウノツカイは、深海にすむ、とても長い魚です。銀色にかがやくリボンのような体と、真っ赤な背びれを持ちます。硬骨魚のなかで、いちばん長い部類に入ります。「地震の前ぶれ」として語られることもありますが、研究では、地震との統計的なつながりは確かめられていません。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:条鰭綱 Actinopterygii
  • 目:アカマンボウ目 Lampriformes
  • 科:リュウグウノツカイ科 Regalecidae
  • 属:リュウグウノツカイ属 Regalecus
  • 種:リュウグウノツカイ Regalecus russelii

和名・英名

  • 和名:リュウグウノツカイ(漢字で「竜宮の使い」)
  • 英名:Oarfish/King of herrings(ニシンの王の意味)

名前の由来

「リュウグウノツカイ」という名前は、竜宮城からの使い、という意味です。銀色にかがやく神秘的な姿から、竜宮の使者に見立てられました。日本の海で見られるのは Regalecus russelii という種です。よく似た仲間に、おもに大西洋にすむ Regalecus glesne がいます。英語では、頭の赤い飾りを冠に見立て、「ニシンの王さま(King of herrings)」とも呼ばれます。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 ふつう3m前後・確実な記録では最大8mほど(体重は最大270kg超)
分布世界の暖かい海の深海。日本の近海でも見つかる
生息環境外洋の中層。水深200〜1000mほどの、うす暗い深海
食べものおもにプランクトン(オキアミなどの小さな甲殻類)
体の特徴うろこ・歯・浮き袋を持たない

硬骨魚で、いちばん長い魚

リュウグウノツカイの長い体
浜に打ち上げられたリュウグウノツカイの仲間。長い体がよく分かる(Gary Dickson, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons)

全長8mのリボンの体

リュウグウノツカイは、骨のある魚(硬骨魚)のなかで、もっとも長い部類に入ります。ふつうでも3mほど、確実な記録では8mに達した個体もいます。11mに達したという報告もあります。体は左右にうすく、細長いリボンのような形をしています。かつては17mといった説もありましたが、今では確かではないとされています。大きく見えても、体はうすっぺらで、見た目より軽い魚です。

銀白色の体と、真っ赤な背びれ

体は全体が銀白色にかがやき、うすい青の線がうっすらと入ります。背びれは体の端から端まで一本に続き、あざやかな紅色をしています。頭の上には、背びれの前のほうが長くのびた、赤い飾りがあります。うろこはなく、つるりとした銀色の肌をしています。この美しい姿が、竜宮の使いと呼ばれるゆえんです。

大きな目と、とび出す口

顔には、体のわりに大きな目があります。光のとぼしい深海で、わずかな光をとらえるのに役立ちます。口は小さめですが、前へつき出すように開きます。この口をのばして、水中のプランクトンを吸いこみます。おそろしげな見た目とはうらはらに、狩りの道具は持たない、おだやかな顔つきの魚です。

立って泳ぎ、プランクトンを食べる

リュウグウノツカイの頭と赤い背びれ
銀白色の頭と、体のわりに大きな目(john_barkla, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons)

体を縦にして泳ぐ

深海で泳ぐリュウグウノツカイは、体を縦に立てた姿が観察されています。長い背びれを波打たせるように動かし、静かに上下します。魚らしく横向きにすいすい泳ぐのとは、まったく違う泳ぎ方です。うす暗い中層の海を、ゆらゆらとただよいながら暮らしています。

大きな体で、小さなプランクトンを食べる

これほど大きな体を持ちながら、リュウグウノツカイはおとなしい魚です。食べているのは、オキアミなどの小さなプランクトンです。歯を持たず、海水ごとプランクトンを吸いこんで食べます。大きな口は、こわい捕食者のためではなく、小さなえさを集めるためのものです。見た目の迫力とは違い、静かにえさをこす魚です。

卵と、小さな幼魚

リュウグウノツカイは、海の表面近くに卵を産むと考えられています。卵は、海面をただよいながら育ちます。かえったばかりの幼魚は、数cmほどの小ささです。幼魚のうちは、背びれの飾りが長くのび、親とは少し違う姿をしています。大きな体に育つまでの暮らしには、まだ分からないことが多く残されています。

尾を切り離す、ふしぎな体

リュウグウノツカイには、変わった能力があります。体の後ろの部分を、自分から切り離してしまうのです。これは「自切(じせつ)」と呼ばれ、トカゲが尾を切り離すのと似ています。リュウグウノツカイの大切な内臓は、体の前のほう(頭に近い側)に集まっています。そのため、後ろの長い部分を失っても、生きていくことができます。打ち上げられた個体の尾が短いのは、この自切のあとであることが多いようです。ただし、なぜ体を切り離すのかは、まだよく分かっていません。

「地震の前ぶれ」は本当か

打ち上げられたリュウグウノツカイ
海岸に打ち上げられたリュウグウノツカイの仲間(Katia Cao, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons)

竜宮の使いと、地震の言い伝え

リュウグウノツカイは、ふだん深海にいて、めったに姿を見せません。そのため、浜に打ち上げられると、大きなニュースになります。深海の魚が海面に現れることから、「大きな地震の前ぶれではないか」と語られてきました。とくに、大きな地震のあとには、この言い伝えが思い出されます。神秘的な見た目も、不吉な予感を強めてきたのでしょう。

研究で調べると、関係はなかった

では、この言い伝えは本当なのでしょうか。研究者が、過去の記録をきちんと調べました。リュウグウノツカイをふくむ深海魚が現れた時期と、地震が起きた時期を、長い年月にわたって照らし合わせたのです。2019年に発表された研究では、両者に統計的にはっきりした関係は見つかりませんでした。深海魚の出現から地震を予知できる、という証拠はない、ということです。深海魚が打ち上げられるのは、弱ったり、海流に流されたりした結果と考えられています。ふしぎな言い伝えですが、今のところ、地震とのつながりを示す証拠は見つかっていません。

人魚や海の怪物の正体?

海の大蛇として描かれたリュウグウノツカイの仲間
海の大蛇のように描かれた図(1860年ごろ)(Harper’s Weekly, Public domain, via Wikimedia Commons)

リュウグウノツカイは、昔の伝説とも結びつけられてきました。細長い体をくねらせて泳ぐ姿は、海に現れる大蛇「シーサーペント」の正体の一つと考えられています。銀色にかがやくその姿は、人魚の話の元になったともいわれます。深海からまれに現れる大きな魚は、昔の人の想像をかきたててきました。今も、その全ての暮らしが分かっているわけではありません。

食べられる? どこで見られる?

身は水っぽく、食用には向かない

「あんなに大きいなら、食べられるのか」と気になる人もいます。リュウグウノツカイの身は、水分が多く、やわらかいのが特徴です。市場に出回る、ふつうの食用魚ではありません。打ち上げられた個体が食べられた、という報告もまれにありますが、一般的な食材ではありません。同じ深海の大きな魚でも、食卓に上る魚とは事情が違います。

生きた姿は、なかなか見られない

生きたリュウグウノツカイを、水族館で飼うことはとてもむずかしいものです。深海の環境を水そうで再現するのが難しく、長くは生きられません。ふだん目にできるのは、標本や、冷凍された体の展示がほとんどです。自然の海で泳ぐ生きた姿が、くわしく撮影されるようになったのも近年のことで、2010年ごろの映像がよく知られています。山口県や福井県など、日本海側の海岸に打ち上げられることが多く、そのたびに人々の注目を集めます。

参考

  • Wikipedia(英語版)「Giant oarfish」(大きさ・体・自切・地震研究)
  • Wikipedia(日本語版)「リュウグウノツカイ」(Regalecus russelii の分類・地震説の否定)
  • 地震学の研究(2019年、深海魚の出現と地震の関係を検証した論文)

画像出典

サムネイル画像: Sandstein, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

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