メンダコは、深海にすむ、平たくて丸いタコです。頭の左右にある「耳」のような部分と、愛らしい姿で人気があります。イカのなかまと思われがちですが、8本の腕を持つタコのなかまです。水族館の人気者ですが、飼うのがとてもむずかしい生きものでもあります。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:軟体動物門 Mollusca
- 綱:頭足綱 Cephalopoda
- 目:八腕形目(タコ目)Octopoda
- 亜目:有触毛亜目(ヒゲダコ亜目)Cirrina
- 科:メンダコ科 Opisthoteuthidae
- 属:メンダコ属 Opisthoteuthis
- 種:メンダコ Opisthoteuthis depressa
和名・英名
- 和名:メンダコ(漢字で「面蛸」)
- 英名:Flapjack octopus(平たいパンケーキのようなタコの意味)
名前の由来
「メンダコ」の名前は、平たくてまるい姿からつきました。漢字では「面蛸」と書き、お面のような平たい形にちなむとされます。英語では「フラップジャック(平たいパンケーキ)のようなタコ」と呼ばれます。どちらの名前も、この平べったい姿から来ています。八本の腕を持つ、深海のタコのなかまです。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 体長 20cmほど(比較的小さなタコ) |
|---|---|
| 分布 | 日本の近海など。深海にすむ |
| 生息環境 | 水深およそ200〜1000mの、海底の近く |
| 食べもの | ヨコエビなど、海底の小さな甲殻類 |
| 体の特徴 | 平たい体・ヒレ・腕をつなぐ膜。墨袋を持たない |
平たい体と、「耳」の正体

円盤のような、平たい体
メンダコの体は、上からおしつぶしたように平たい形をしています。ふつうのタコのように、丸いふくろ状の頭を持ちません。円盤のような、まるくて平たい姿です。体はやわらかく、寒天のようにぷにぷにしています。この変わった形が、多くの人をひきつける愛らしさになっています。
小さな目と、赤みがかった体
体の色は、赤みがかった色をしていることが多いです。うす暗い深海では、赤い色は黒く見え、目立ちにくくなります。小さな目は、平たい体のふちの近くにあります。光のとぼしい深海に合わせて、体はやわらかく、軽くできています。ふつうのタコとは、ずいぶん違う体つきです。
「耳」に見えるのは、ヒレ
メンダコの頭の左右には、「耳」のように見える部分があります。これは、耳ではなく、小さなヒレです。ただし、メンダコのヒレは小さいため、ぐいぐい泳ぐための力にはなりません。おもに、体の向きをかえたり、姿勢をたもったりする舵(かじ)の役目をしています。まるでゾウの耳のようにも見えることから、「耳」と呼ばれています。
傘と触毛 ― 深海ダコの体

腕をつなぐ膜(傘)
メンダコには、タコらしく8本の腕があります。その腕と腕のあいだは、大きな膜でつながっています。この膜は「傘(かさ)」と呼ばれ、かさを広げたような形になります。泳ぐときは、この傘をふわりと開いたり閉じたりして、クラゲのように水をおし出します。小さなヒレで向きをととのえながら、深海の中をゆっくりとただよいます。腕には吸盤が一列にならび、そのわきには「触毛(しょくもう)」という細い毛が生えています。この毛で、まわりのようすを感じ取ります。
墨を持たないタコ
ふつうのタコは、敵におそわれると墨をはいて逃げます。しかし、メンダコは墨を持っていません。墨をためる袋そのものが、なくなっているのです。光のとどかない暗い深海では、墨をはいても、目くらましの役には立ちません。役に立たない墨袋は、長い進化のなかで失われたと考えられています。深海の暮らしに合わせて、体を変えてきたタコです。
深海の底ぐらしと、食事
メンダコは、水深200〜1000mほどの、うす暗い深海にすんでいます。海底の近くを、傘をゆっくり動かして、ふわふわとただよいます。食べているのは、ヨコエビなどの小さな甲殻類です。海底にいる小さな生きものを、腕でつかまえて食べます。大きな体でおそう狩りではなく、静かにえさをさがす暮らしです。深海の底で、ゆっくりと生きているタコです。
卵を一つずつ産む
深海の暮らしは、繁殖のしかたにもあらわれます。メンダコのなかまは、卵を一つずつ、海底に産みつけると考えられています。深海には季節の移りかわりが少なく、一年を通してゆっくりと繁殖するとみられます。深海での子育てのようすには、まだ分からないことが多く残されています。生きた姿を見ることさえ難しい、なぞの多いタコです。
ダンボオクトパスとの違い
メンダコとよく似た深海ダコに、「ダンボオクトパス」がいます。どちらも、ヒレを持つ「有触毛タコ」という深海ダコの仲間です。ディズニー映画のゾウ「ダンボ」のように、大きな耳(ヒレ)を持つことから、その名で呼ばれます。ダンボオクトパスの体は、メンダコより丸みがあり、耳のヒレが大きく目立ちます。いっぽうメンダコは、体がぺたんと平たく、円盤のような姿です。すむ深さにも違いがあり、ダンボオクトパスのほうが、より深い海にすむとされます。近い仲間ですが、姿を見ると見分けられます。
食べられる? 飼えるの?

身は水っぽく、食用には向かない
「タコなら食べられるのでは」と思う人もいます。しかし、メンダコの体は、水分が多くやわらかいものです。ふつうのタコのように、こりこりとした歯ごたえはありません。味は海水のようで、おいしくないともいわれます。そのため、食用のタコとしては使われません。深海性で数も多くなく、市場に出回る食材でもありません。同じタコでも、食卓に上るマダコなどとは事情が違います。
水族館でも、すぐに弱ってしまう
メンダコは、水族館でもとくに飼育がむずかしい生きものです。深海の高い水圧や、冷たく暗い環境を、水そうで再現するのが難しいのです。体がやわらかくもろいため、あみですくうだけでも傷ついてしまいます。展示できても、多くは数日から数十日ほどしか生きられません。長く飼えた例として、東京のサンシャイン水族館が、展示76日・飼育78日という国内最長級の記録を残しています(2022年)。生きたメンダコに会えたら、それはとても幸運なことです。深海の人気者は、今も多くの謎を残したままです。
タコのなかまを、まとめて知る

参考
- Wikipedia(日本語版)「メンダコ」(Opisthoteuthis depressa の分類・墨袋・飼育の難しさ)
- Wikipedia(英語版)「Opisthoteuthis」「Cirrate octopus」(有触毛タコ・ヒレ・触毛)
- 水族館の飼育記録(展示日数・生態の観察)

