メンダコ

イカ・タコ類(頭足類)

メンダコは、深海にすむ、平たくて丸いタコです。頭の左右にある「耳」のような部分と、愛らしい姿で人気があります。イカのなかまと思われがちですが、8本の腕を持つタコのなかまです。水族館の人気者ですが、飼うのがとてもむずかしい生きものでもあります。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:軟体動物門 Mollusca
  • 綱:頭足綱 Cephalopoda
  • 目:八腕形目(タコ目)Octopoda
  • 亜目:有触毛亜目(ヒゲダコ亜目)Cirrina
  • 科:メンダコ科 Opisthoteuthidae
  • 属:メンダコ属 Opisthoteuthis
  • 種:メンダコ Opisthoteuthis depressa

和名・英名

  • 和名:メンダコ(漢字で「面蛸」)
  • 英名:Flapjack octopus(平たいパンケーキのようなタコの意味)

名前の由来

「メンダコ」の名前は、平たくてまるい姿からつきました。漢字では「面蛸」と書き、お面のような平たい形にちなむとされます。英語では「フラップジャック(平たいパンケーキ)のようなタコ」と呼ばれます。どちらの名前も、この平べったい姿から来ています。八本の腕を持つ、深海のタコのなかまです。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ体長 20cmほど(比較的小さなタコ)
分布日本の近海など。深海にすむ
生息環境水深およそ200〜1000mの、海底の近く
食べものヨコエビなど、海底の小さな甲殻類
体の特徴平たい体・ヒレ・腕をつなぐ膜。墨袋を持たない

平たい体と、「耳」の正体

メンダコの平たい体
円盤のように平たいメンダコの仲間(NOAA Ocean Exploration, Public domain, via Wikimedia Commons)

円盤のような、平たい体

メンダコの体は、上からおしつぶしたように平たい形をしています。ふつうのタコのように、丸いふくろ状の頭を持ちません。円盤のような、まるくて平たい姿です。体はやわらかく、寒天のようにぷにぷにしています。この変わった形が、多くの人をひきつける愛らしさになっています。

小さな目と、赤みがかった体

体の色は、赤みがかった色をしていることが多いです。うす暗い深海では、赤い色は黒く見え、目立ちにくくなります。小さな目は、平たい体のふちの近くにあります。光のとぼしい深海に合わせて、体はやわらかく、軽くできています。ふつうのタコとは、ずいぶん違う体つきです。

「耳」に見えるのは、ヒレ

メンダコの頭の左右には、「耳」のように見える部分があります。これは、耳ではなく、小さなヒレです。ただし、メンダコのヒレは小さいため、ぐいぐい泳ぐための力にはなりません。おもに、体の向きをかえたり、姿勢をたもったりする舵(かじ)の役目をしています。まるでゾウの耳のようにも見えることから、「耳」と呼ばれています。

傘と触毛 ― 深海ダコの体

メンダコの腕と膜
メンダコ(Opisthoteuthis depressa)。腕をつなぐ膜が見える(Yuki Ito, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

腕をつなぐ膜(傘)

メンダコには、タコらしく8本の腕があります。その腕と腕のあいだは、大きな膜でつながっています。この膜は「傘(かさ)」と呼ばれ、かさを広げたような形になります。泳ぐときは、この傘をふわりと開いたり閉じたりして、クラゲのように水をおし出します。小さなヒレで向きをととのえながら、深海の中をゆっくりとただよいます。腕には吸盤が一列にならび、そのわきには「触毛(しょくもう)」という細い毛が生えています。この毛で、まわりのようすを感じ取ります。

墨を持たないタコ

ふつうのタコは、敵におそわれると墨をはいて逃げます。しかし、メンダコは墨を持っていません。墨をためる袋そのものが、なくなっているのです。光のとどかない暗い深海では、墨をはいても、目くらましの役には立ちません。役に立たない墨袋は、長い進化のなかで失われたと考えられています。深海の暮らしに合わせて、体を変えてきたタコです。

深海の底ぐらしと、食事

メンダコは、水深200〜1000mほどの、うす暗い深海にすんでいます。海底の近くを、傘をゆっくり動かして、ふわふわとただよいます。食べているのは、ヨコエビなどの小さな甲殻類です。海底にいる小さな生きものを、腕でつかまえて食べます。大きな体でおそう狩りではなく、静かにえさをさがす暮らしです。深海の底で、ゆっくりと生きているタコです。

卵を一つずつ産む

深海の暮らしは、繁殖のしかたにもあらわれます。メンダコのなかまは、卵を一つずつ、海底に産みつけると考えられています。深海には季節の移りかわりが少なく、一年を通してゆっくりと繁殖するとみられます。深海での子育てのようすには、まだ分からないことが多く残されています。生きた姿を見ることさえ難しい、なぞの多いタコです。

ダンボオクトパスとの違い

メンダコとよく似た深海ダコに、「ダンボオクトパス」がいます。どちらも、ヒレを持つ「有触毛タコ」という深海ダコの仲間です。ディズニー映画のゾウ「ダンボ」のように、大きな耳(ヒレ)を持つことから、その名で呼ばれます。ダンボオクトパスの体は、メンダコより丸みがあり、耳のヒレが大きく目立ちます。いっぽうメンダコは、体がぺたんと平たく、円盤のような姿です。すむ深さにも違いがあり、ダンボオクトパスのほうが、より深い海にすむとされます。近い仲間ですが、姿を見ると見分けられます。

食べられる? 飼えるの?

水族館のメンダコ
水族館の暗い水そうを泳ぐメンダコの仲間(Bill Abbott, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons)

身は水っぽく、食用には向かない

「タコなら食べられるのでは」と思う人もいます。しかし、メンダコの体は、水分が多くやわらかいものです。ふつうのタコのように、こりこりとした歯ごたえはありません。味は海水のようで、おいしくないともいわれます。そのため、食用のタコとしては使われません。深海性で数も多くなく、市場に出回る食材でもありません。同じタコでも、食卓に上るマダコなどとは事情が違います。

水族館でも、すぐに弱ってしまう

メンダコは、水族館でもとくに飼育がむずかしい生きものです。深海の高い水圧や、冷たく暗い環境を、水そうで再現するのが難しいのです。体がやわらかくもろいため、あみですくうだけでも傷ついてしまいます。展示できても、多くは数日から数十日ほどしか生きられません。長く飼えた例として、東京のサンシャイン水族館が、展示76日・飼育78日という国内最長級の記録を残しています(2022年)。生きたメンダコに会えたら、それはとても幸運なことです。深海の人気者は、今も多くの謎を残したままです。

タコのなかまを、まとめて知る

タコ【総合】
タコは、8本の腕を持つ、海にすむ軟体動物のなかまです。世界には約300種が知られています。身近なマダコやミズダコから、猛毒のヒョウモンダコ・擬態の名人ミミックオクトパス・深海のメンダコまで、その姿はさまざまです。体の色を変え、道具を使うほど...

参考

  • Wikipedia(日本語版)「メンダコ」(Opisthoteuthis depressa の分類・墨袋・飼育の難しさ)
  • Wikipedia(英語版)「Opisthoteuthis」「Cirrate octopus」(有触毛タコ・ヒレ・触毛)
  • 水族館の飼育記録(展示日数・生態の観察)

画像出典

サムネイル画像: Ed Bowlby, NOAA/Olympic Coast NMS; NOAA/OAR/Office of Ocean Exploration, Public domain, via Wikimedia Commons

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