メジナ

魚類

メジナは、日本の磯でよく釣られる人気の魚です。夏と冬で食べるものが変わり、それにつれて身の味まで変わります。よく似たクロメジナは、どこで産卵しているのかが今も分かっていません。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:条鰭綱 Actinopterygii
  • 目:サンフィッシュ目 Centrarchiformes
  • 科:メジナ科 Girellidae
  • 属:メジナ属 Girella
  • 種:メジナ Girella punctata Gray, 1835

和名・英名

  • 和名:メジナ(眼仁奈、目仁奈)
  • 英名:largescale blackfish

所属する目が、近年になって変わった

分類の位置は、参照する資料によって違います。メジナ科をサンフィッシュ目に置く見方が、現在は広まっています。いっぽう2015年や2017年の論文では、今もスズキ目 Perciformes として扱われています。魚類の高次分類はこの十年ほどで大きく組み替えられており、どちらの表記も文献の中で生きています。

シーボルトの標本画に、この魚がいる

揺らいでいるのは目の位置だけではありません。江戸時代の1823年から1829年にかけて、川原慶賀がシーボルトのために標本画を描きました。その中に、この魚の図があります。そこでは Girella melanichthys という名が使われていました。

この名は、現在ではメジナ Girella punctata の異名として扱われるのが一般的です。ただしFishBaseは、これを有効な別種とみなす文献もあると注記しています。二百年前に描かれた一枚が、今も分類の問いを抱えたまま残っていることになります。

川原慶賀による1823〜1829年のメジナの標本画(Girella melanichthys として描かれたもの)
Richardson, Public domain, via Wikimedia Commons

和名より「グレ」のほうが通る

黒潮生物研究所は、和名よりも釣り魚としての呼び名である「グレ」のほうが広く知られているだろう、と書いています。地方名はほかにも多く、地域ごとに呼び分けられてきました。

  • クチブト(伊豆・関西)
  • ヒコヤ、チカイ(北陸)
  • ツカヤ(丹後)
  • クロヤ(舞鶴・山口)
  • クロンベ(愛知南部)
  • クロアイ(山陰)

ただし、これらの地方名にはクロダイと共通するものが混じります。同じ呼び名が別の魚を指すこともあるので、注意が要ります。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長60cm以上に達するとされる(FishBaseは最大50.0cm)。よく獲れるのは40cmほどまで
分布北海道南部から南(琉球列島を除く)、台湾、東シナ海
生息環境外海に面した浅い海の岩礁帯。幼魚は潮だまりや流れ藻
食べ物夏は甲殻類・ゴカイなど、冬は主に海藻
産卵期2〜6月(伊豆海域では3〜4月に成熟)
寿命従来は8〜10年とされたが、2026年の研究では最大でオス23年・メス12年の報告

夏と冬で、食べるものが変わる

夏は甲殻類やゴカイ、冬は海藻

メジナの食性は雑食ですが、一年じゅう同じものを食べているわけではありません。夏は甲殻類やゴカイといった小さな動物を主に捕らえ、冬になると主に海藻を食べます。季節に応じて食べるものが入れ替わる魚で、釣りの餌もそれに合わせて変えられます。

体の作りも、この暮らしに合っています。口は小さく、岩に付いた海藻や小動物をついばむのに向いた形です。外海に面した浅い岩礁帯という、波の当たる場所を生活の場にしています。FishBaseはこの魚を、温帯の岩礁に結びついて暮らす海水魚として整理しています。

磯臭さが薄れるのは冬

食性の変化は、そのまま味の変化として現れます。夏の身は磯臭いとされますが、冬は主に海藻を食べるため磯臭さが薄れ、旬とされてきました。黒潮生物研究所も、磯臭ささえなければとても美味な魚だと評しています。

撒き餌で変わったという見方もある

ただし、この説明には留保が付きます。磯釣りでオキアミ類が撒き餌として大量に使われるようになり、食性が変化したのか磯臭さがなくなったともいわれます。季節による違いなのか、人の撒く餌による変化なのか、はっきり切り分けられているわけではありません。

近縁のイスズミは、臭くて食べられない

ここには、まだ答えの出ていない問いがあります。近縁のイスズミの仲間は、生態も生息場所もよく似ています。ところがこちらはなかなか臭く、あまり食用にされません。それならなぜメジナは旨いのか、と黒潮生物研究所は問いを立てています。似た場所で似た暮らしをしていても、味は同じにならないわけです。

青緑を帯びた灰色と、高い体高

数百匹の群れを作ることがある

単独でいる印象を持たれがちですが、群れる魚です。黒潮生物研究所によれば、高知県の沖の島の浅場では数百匹からなる大群を作ることがあり、その姿は圧巻だといいます。同じ高知県の大月エリアでは最も人気のある釣り魚のひとつで、休日の沖合の岩場はグレ狙いの釣り人であふれます。

死ぬと青みが薄れて黒くなる

体はクロダイなどに似て左右に平たく、体高が高くなります。体色は青緑色を帯びた灰色で、腹は銀色です。生きているうちは青みがありますが、死ぬと青緑色が薄れて黒みが増します。

成魚は全長60cmを超えることもありますが、よく漁獲されるのは40cmほどまでです。これはA3の紙の長い辺とほぼ同じ長さにあたります。ただし最大の大きさは資料によって差があり、FishBaseは全長50.0cmを最大値として挙げています。魚屋やスーパーの鮮魚売場で「黒目鯛」として売られているものは、この魚にあたります。

クロメジナとオキナメジナとの見分け

日本産のメジナ属は3種です。いちばん紛らわしいのはクロメジナで、見分けには3つの点を使います。鰓蓋の縁が黒くない・鱗の付け根に黒斑がある・尾鰭の切れこみがごく浅い、の3点です。クロメジナは全長70cmに達し、尾鰭がはっきり二叉して上下の先端が尖ります。その形から、釣り人には「尾長グレ」と呼ばれています。

もう1種のオキナメジナは全長45cmほどで、上唇が厚く、若魚の胴体に一本の黄色い横帯が入ります。琉球列島ではこのオキナメジナのほうが多く、メジナとクロメジナは少なくなります。FishBaseもメジナの分布を「北海道南部から南、ただし琉球列島を除く」としており、この住み分けと符合します。

3〜4月に生まれ、潮だまりで育つ

伊豆では3〜4月に成熟し、4〜7月に潮間帯へ

産卵期は2〜6月とされます。日本大学の水族生態学研究室は、下田市場を通じて成魚サイズの個体を集め、成熟度を調べました。その結果、メジナの生殖腺は3〜4月によく発達していました。そこから、伊豆海域では3〜4月に生まれた個体が付近に着底し、4〜7月に潮間帯で育つと考えられています。

稚魚が見られるのは、岩礁海岸の潮だまりや流れ藻の周りです。波の当たる岩場そのものが、小さいうちの育ち場になっています。

稚魚の見分けは、DNAで解いた

この研究には長く障壁がありました。成魚なら尾鰭の形や鰓蓋後縁の色、鱗の数で判別できるのに、小さな稚魚に同じ基準を当てはめるのは難しかったのです。そこで研究室では、遺伝子を調べて両種を簡便に見分ける方法を開発しました。ミトコンドリアDNAを切り分けて型を比べる、PCR-RFLPという手法です。

この判別法が効いて、伊豆半島南東部や相模湾での成育状況が見えるようになりました。伊豆半島南東部ではクロメジナの稚魚が1〜6月と長く出るのに対し、メジナの稚魚は4〜7月に出ます。相模湾東部では、メジナの稚魚が4〜8月に現れます。

クロメジナの産卵場は、まだ誰も知らない

伊豆にいる稚魚は、よそから流れてきている

同じ成熟度の分析で、クロメジナの生殖腺はまったく発達していませんでした。つまりクロメジナは、伊豆海域では産卵していないことになります。そこで見つかる着底稚魚は、別の海域から流れ着いた浮遊仔稚魚だと考えられます。

釣り人によく知られた魚でありながら、クロメジナの産卵場については現在まで報告例がありません。一般には産卵期を11〜12月とする見方がありますが、どこで産んでいるのかは謎のままです。

黒潮の上流で、完熟した卵が見つかった

研究室では産卵海域を突きとめるため、南方海域から成魚サイズの個体を集めて成熟度を調べてきました。その結果、黒潮上流域で獲れた個体から完熟状態の卵細胞が見つかっています。次の産卵期にはさらに個体を集めて分析する予定とされ、研究は核心に近づいています。

寿命は8〜10年ではなかった

2026年に、最大23年という報告が出た

寿命についての研究は乏しく、長らく8〜10年という報告が知られてきました。ところが2026年の研究では、最大でオス23年・メス12年という報告が出ています。身近な釣り魚でありながら、どれだけ生きるのかという基本的なことが、つい最近まで分かっていなかったことになります。

オスとメスで、数字が倍近く違う

報告された最大値は、オスが23年でメスが12年でした。ただし報告はまだ少なく、この差がどこまで一般的なのかは、これからの調査を待つところです。

磯竿は、この魚のために作られた

専用の竿が生まれるほどの人気

釣り上げられたメジナ(茨城県・波崎新港)
Rakurakuda, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

釣り人の間での人気は高く、食用としても磯釣りの対象としても親しまれています。「磯竿」と呼ばれる範疇の釣竿は、本種を釣ることを目的として作られたほどです。餌にはオキアミや海藻類、ゴカイが使われ、ルアーを使った釣り方もあります。

冬の身は、癖のない白身

活け〆して一晩寝かせたメジナの刺身
Rakurakuda, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

漁は釣りや定置網などの沿岸漁業で行われます。冬の新鮮なメジナは、癖のない淡白な白身です。刺身・叩き・カルパッチョ・焼き魚・西京漬・煮付け・唐揚げ・鍋料理と、幅広く使われます。

参考

画像出典

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