オポッサム

オポッサム 有袋類

オポッサムは、南北アメリカに広く分布する有袋類です。とくにキタオポッサムは、北アメリカで唯一の有袋類として知られます。敵に襲われると死んだふりをすることで有名で、たくさんの歯と、枝をつかむ尾を持ちます。名前の似た「ポッサム」(オーストラリアの有袋類)とは、別の仲間です。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:オポッサム目 Didelphimorphia
  • 科:オポッサム科 Didelphidae

和名・英名

  • 和名:オポッサム(キタオポッサム など)
  • 英名:Opossum(Virginia opossum など)

「オポッサム」という呼び名

「オポッサム」は、南北アメリカに住むオポッサム科の有袋類をまとめて呼ぶ名前です。100種以上が知られ、その多くが中央・南アメリカに住みます。小さなネズミほどの種から、ネコくらいの種まで、大きさもさまざまです。よく知られるのは、北アメリカに住むキタオポッサムです。この種は、北アメリカに住む唯一の有袋類でもあります。

大きさ・分布などの基本データ

大きさキタオポッサムで頭胴長 約35〜50cm/尾長 約25〜35cm(ネコくらい)
分布南北アメリカ。キタオポッサムは北アメリカ
生息環境森林・草地・都市の近くまで。木の上にも登る
食べ物昆虫・果実・小動物・死がい・残飯など(雑食)
寿命野生でおよそ2〜4年と短い
保全状況キタオポッサムは数も多く、絶滅の心配は小さいとされる

有袋類とは、おなかの袋(育児のう)の中で子を育てる哺乳類のなかまです。カンガルーやコアラも有袋類です。

オポッサムの全身
キタオポッサム。北アメリカで唯一の有袋類です。撮影:Juan Cruzado Cortés(CC BY-SA 4.0)

死んだふり

オポッサムでよく知られているのは、死んだふりをする行動です。英語では「play possum(オポッサムを演じる)」という言い回しがあるほど、有名な習性です。オポッサムは大きな敵とまともに戦うことができません。そこで身につけたのが、この死んだふりだと考えられています。

死んだふりをするオポッサム
死んだふりをするオポッサム。口を開け、舌を出したまま動かなくなります。撮影:Tony Alter(CC BY 2.0)

敵の前で動かなくなる

自分では止められない反応

強い敵に襲われて追いつめられると、オポッサムは横に倒れて動かなくなります。口を開けて舌を出し、目を見開いたまま、まるで死んだように見えます。この状態は、数分から数時間も続くことがあります。このあいだ、心臓の動きや呼吸もゆっくりになるとされます。敵がいなくなると、少しずつ動き出して起き上がります。この行動は、わざと演じているというより、強い恐怖によって自分では止められずに起きる反応と考えられています。

くさいにおいも出す

死んだふりのあいだ、オポッサムは尻の近くから、臭い汁を出します。腐った肉のような臭いで、生き物の死骸を思わせます。動かず、においも死がいのようになることで、多くの敵は食べる気をなくします。生きた獲物を襲う敵の多くは、死んだものには興味を示さないためです。この一連の反応は、生まれつき備わったものと考えられています。

体のつくり

つかむ尾と後ろ足の親指

枝をつかむ尾

オポッサムの尾は毛がなく、ものに巻きつけてつかむことができます。木に登るときの、大切な支えです。子どものオポッサムは、尾で短い時間ぶら下がることもあります。尾は体を支えるだけでなく、巣に使う葉や草を巻いて運ぶのにも使われます。ただし、大人が尾だけでぶら下がって眠るという話は、正しくないとされています。

器用な後ろ足

後ろ足には、人の親指のように向きの違う指があります。この指で枝をしっかりつかめるため、木登りが得意です。尾と後ろ足を使い、木の上を器用に動き回ります。

オポッサムの顔
とがった鼻先と、たくさんの歯。撮影:Matthew Gerke(CC BY 4.0)

たくさんの歯

オポッサムの口には、50本もの歯がならんでいます。これは、北アメリカに住む陸の哺乳類の中でもっとも多い数です。敵を脅すときには、この歯をむき出しにして、大きな口を開けます。とがった歯は、虫の殻や小さな骨をかみくだくのに向いています。体は灰色っぽい毛におおわれ、顔は白っぽく、耳や尾の先は黒っぽい色をしています。とがった鼻先と細長い顔も、オポッサムの見た目の特徴です。

何でも食べる掃除屋

掃除屋のような食生活

何でも口にする

オポッサムは、昆虫・果実・木の実・小さな動物・鳥の卵など、いろいろなものを食べる雑食です。動物の死骸や、人の出した残飯も食べます。落ちているものを片づける掃除屋のような役目も果たし、夜のうちに、広い範囲を歩き回って食べ物を探すのが日課です。食べ物の少ない冬でも、こうした何でも食べる力が、生きのびる支えになるとされます。一方で、庭やごみ置き場に居ついて、困りものになることもあります。

「ダニを食べる」という話

オポッサムは「体についたダニを大量に食べてくれる」と言われ、益獣として紹介されることがあります。しかし、近年の研究で野生のオポッサムの胃を調べたところ、ダニはほとんど見つかりませんでした。この話は、飼育下の実験から広まったもので、野生での実態とは違うと考えられています。

たくさんの子を育てる

オポッサムは有袋類なので、母親の袋の中で子を育てます。生まれたばかりの子は、体長1cmほどのとても小さな姿です。一度にたくさんの子が生まれ、袋の中の乳首にたどり着いた子だけが育ちます。乳首の数はふつう13ほどで、それより多く生まれた子は育ちません。袋の中で2か月ほど過ごしたのち、子は袋の外へ出ます。母親の背中に乗る時期を経て、生後3〜4か月ほどで独り立ちします。オポッサムの寿命は短く、多くの子を残すことで数を保っています。

若いオポッサム
若いオポッサム。撮影:Northern-Virginia-Photographer(CC0)

ヘビの毒に強い体

オポッサムは、ヘビの毒に強いことでも知られています。血の中に、毒の働きを打ち消す特別なたんぱく質を持っているとされ、毒ヘビにかまれても平気なことがあります。また、体温が低めなため、狂犬病などの病気にかかりにくいともいわれています。この毒への強さは、新しい薬の研究の面からも注目されています。これらの特徴は、外敵や病気から身を守るのに役立っていると考えられています。

人との関わり

オポッサムは、都市や町の近くでもよく見られます。ごみをあさることから嫌われることもありますが、害虫や動物の死骸を片づける役目も果たしています。夜に道路へ出て、車にひかれてしまう事故も多く見られます。おとなしい性質で、追いつめられないかぎり、人を攻撃することはめったにありません。北アメリカでは、けがをしたオポッサムを保護する施設もあります。歯をむき出して威嚇することはあっても、多くは死んだふりで切り抜けようとします。

「オポッサム」と「ポッサム」

名前がよく似た「オポッサム」と「ポッサム」は、しばしば混同されますが、別の仲間です。オポッサムは南北アメリカに、ポッサム(フクロギツネなど)はオーストラリアなどに住みます。どちらも有袋類ですが、住む大陸も、たどってきた進化の道すじも違います。名前が似ているのは、それぞれ別々に名づけられたためです。見た目でも、オポッサムの尾は毛がなく、ポッサムの尾はふさふさしている点が違います。

フクロギツネ(ポッサム)
「ポッサム」の名で親しまれるフクロギツネ。オーストラリアの木の上で暮らす有袋類で、枝をつかむ尾やユーカリ食、都市の屋根裏暮らし、ニュージーランドでの外来害獣問題まで紹介します。

参考

  • IUCN Red List: Didelphis virginiana(Virginia Opossum)評価ページ
  • Animal Diversity Web(ミシガン大学): Didelphis virginiana の解説
  • ダニの食性に関する研究(2021年、野生個体の胃内容の調査)
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