イワガニ

甲殻類・軟体動物

イワガニは外洋に面した岩場に住む小型のカニで、本州から沖縄までの磯を中心に、ごく普通に見られます。水に浸からず岩の上で活動することが多く、波打ち際を素早く走り回ります。同じ種は太平洋の反対側、北アメリカの西海岸にも住んでいます。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:節足動物門 Arthropoda
  • 綱:軟甲綱 Malacostraca
  • 目:十脚目 Decapoda
  • 下目:短尾下目(カニ下目) Brachyura
  • 科:イワガニ科 Grapsidae
  • 属:イワガニ属 Pachygrapsus
  • 種:イワガニ Pachygrapsus crassipes Randall, 1840

和名・英名

  • 和名:イワガニ(岩蟹)
  • 英名:Striped shore crab/Lined shore crab
  • 別名:アブラガニ(地方名。タラバガニの仲間のアブラガニとは別種)

いくつもの科に分けられた旧イワガニ科

以前のイワガニ科は、多くのカニを含む大きなまとまりでした。百科事典の解説によると、近年の研究で5つの科に分けられ、そのうち元の名前を引き継いだのが今のイワガニ科です。ほかにモクズガニ科・ベンケイガニ科・ショウジンガニ科・ホウキガニ科の4つが新たに分かれました。磯でよく一緒に見られるイソガニは、このときモクズガニ科に移っています。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ甲羅の幅3.5〜4cmほど(500円玉の1.5倍ほど)。オスの方が大きい
分布日本では北海道の函館から沖縄まで。朝鮮半島と、北アメリカの太平洋岸(オレゴン州からメキシコのバハ・カリフォルニア付近まで)
生息環境外洋に面した岩場の、満潮線(潮が最も満ちたときの水際)付近
食べ物海藻が中心の雑食
保全状況IUCN:未評価(NE)

細い線としわが並ぶ黒緑色の甲羅

左右の縁から内側へ向かう線

甲羅は前の方がやや広い四角形で、表面は平らで光沢があります。黒緑色の地には、左右の縁から内側へ向かう緑色の細い線としわが、ほぼ平行に何本も並びます。英名の striped shore crab(しま模様の磯のカニ)も、この線に由来するとされます。はさみは紫がかった色で、上面にまだら模様が入ります。

岩の隙間にいるイワガニ。甲羅に細い線が並ぶ
Kai Medina (mk170101), CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

イソガニとの見分け方

同じ磯に住むイソガニとは色合いが似ているため、次の点を合わせて見ると見分けやすくなります。

見る場所イワガニイソガニ
甲羅の表面縁から内側へ向かう細い線としわが平行に並ぶほぼ滑らかで、緑灰色と紫のまだら
歩脚(歩くための脚)横縞模様がなく、硬い毛が生える緑灰色と紫の横縞が入る
暮らし方あまり水に入らず、岩の上を走り回る石の下や物陰に潜む

水より岩の上を好む暮らし

時間の半分以上を陸上で過ごす

岩の割れ目やくぼみに住み、水に浸かっているより、露出した岩の上で活動している時間の方が長いとされます。北アメリカでの観察によると、時間の半分以上を陸上で過ごし、普段はえらを湿らせるときに自ら水に入ります。水の外でも、最長でおよそ70時間(3日ほど)生きられます。

それでも、陸の暮らしに寄ったカクベンケイガニやアカテガニほど、水から離れてはいません。敵に追われて逃げ場を失うと、海へ飛び込むこともあります。

水しぶきのかかる岩の上にいるイワガニ
Jerry Kirkhart from Los Osos, Calif., CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

敵から身を守る暮らし

敵が近づくと、素早く岩の隙間や潮だまりへ逃げ込みます。人が岩場に立つと隙間からじっと様子をうかがい、しばらく動きがなければ、多くの個体が再び岩の上へ姿を現します。北アメリカでの記録では、昼は岩の割れ目に隠れ、捕食される危険の少ない夜に出てくることが多いとされます。これらの記録では、天敵にカモメ・タコ・ネズミ・アライグマなどが挙げられ、特に若い個体は多くの生き物に狙われます。

海藻から小さな貝、フナムシまで食べる

海藻を中心にした雑食

主に岩の上に生える海藻を食べますが、死んだ魚なども口にし、フナムシのような動く獲物も捕らえます。食べる海藻は、緑色・赤色・褐色のさまざまな種類にわたります。動物では、ゴカイの仲間・イガイ(ムール貝の仲間)・カサガイ・巻貝・ヤドカリなどの記録があります。イガイは大きなものより小さなものを好み、脱皮直後で殻の柔らかい仲間を食べることもあります。

イガイが付いた岩の間に身を潜めるイワガニ
Björn S…, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

餌の取り方と仲間同士の順位

岩場の個体は夜に獲物を狩ることが多く、潮だまりの個体は昼でも海藻を食べることが中心になります。餌をめぐって仲間同士で激しく争うものの、決まった縄張りを守ることはありません。同じ場所に住むうちに、仲間の間に優劣の順位ができていきます。

夏に産卵し、幼生は海を漂う

6〜7月が産卵の盛り

交尾は少なくとも年に1回行われ、メスは交尾の前に脱皮します。産卵の盛りは6月から7月で、甲羅の幅3.5cmのメスが抱える卵は約5万粒にのぼります。

卵は約30日後に、ゾエア幼生(親とは似ていない、海を漂う幼生)としてかえります。幼生は約1か月の浮遊生活の間に7回脱皮し、メガロパ幼生(カニに近い形の幼生)になります。さらに1回脱皮すると、甲羅の幅3.5mmほどの小さなカニの姿になります。

1年たたずに繁殖できる成長の速さ

成長は速く、メスはかえってから約11か月、甲羅の幅約1.5cmで繁殖できるようになります。オスはさらに早く、約7か月・甲羅の幅1.2cmほどで成熟します。1年たたずに次の世代を残せることになります。

太平洋の両岸に分かれた集団

DNAで調べた東西の集団の関係

イワガニは日本・朝鮮半島と北アメリカの太平洋岸という、太平洋を挟んだ両側に分かれて住んでいます。こうした分布は珍しく、どちらかが原産地で、もう一方には人の手で運ばれたのではないかという説もありました。

その後、細胞の中のミトコンドリアのDNAを比べる研究が行われました。アジア側と北アメリカ側の集団は、80万年前から120万年前に分かれたと推定されています。この結果から、日本のイワガニは人に運ばれたものではなく、もともと住んでいたものと考えられています。

北アメリカ西海岸の、フジツボの付いた岩の上にいるイワガニ
Björn S…, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

人との関わり

磯遊びや料理での利用

波の荒い岩場でも潮が引くと岩の上で活発に動くため、磯遊びでよく捕まえられます。料理に使うには身が少ないものの、濃いカニの風味が出ます。そのため味噌汁の具にされるほか、パスタのソースなどイタリア料理に使われることもあります。

カニ【総合】
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参考

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