スナガニ

甲殻類・軟体動物

スナガニは、北海道南部から九州の砂浜に深い巣穴を掘って住む、甲羅の幅2〜3cmほどのカニです。長い脚で素早く走り、人の気配を感じるとすぐ巣穴へ逃げ込みます。海水浴場でも巣穴が見られますが、砂浜の減少や海岸の整備で数を減らしている地域もあります。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:節足動物門 Arthropoda
  • 綱:軟甲綱 Malacostraca
  • 目:十脚目 Decapoda
  • 下目:短尾下目(カニ下目) Brachyura
  • 科:スナガニ科 Ocypodidae
  • 属:スナガニ属 Ocypode
  • 種:スナガニ Ocypode stimpsoni Ortmann, 1897

和名・英名

  • 和名:スナガニ(砂蟹)
  • 英名:Ghost crab(ゴーストクラブ。スナガニ属の仲間の総称)

学名の由来

種小名の stimpsoni は、北西太平洋の無脊椎動物の研究で知られるアメリカの動物学者、ウィリアム・スティンプソンにちなむ名前です。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ甲羅の幅はオス約2cm、メス約3cm(1円玉から、500円玉よりひと回り大きいほど)
分布北海道南部から九州。国外では朝鮮半島・中国東岸・台湾
生息環境水のきれいな砂浜
食べ物動物が中心の雑食
保全状況IUCN:未評価(NE)。環境省のランクは指定なし。いくつかの県のレッドリストに掲載(下記)

満潮線の近くに掘る深い巣穴

直径2〜3cmの丸い穴が目印

満潮線(潮が最も満ちたときの水際)の近くに、深さ数十cmから1m(大人の腰の高さほど)の巣穴を掘ります。潮が満ちてこないほどの高さにある直径2〜3cm(500円玉ほど)の丸い穴は、スナガニかその仲間の巣穴の可能性が高いとされます。

掘り出した砂は、穴の周りに薄く積み上がります。持ち主のいる巣穴では周りの砂が湿っていて、捨てられた巣穴では乾いているため、両者を区別できます。

砂浜の巣穴から顔を出したスナガニ
ふうけ, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

コメツキガニより高い場所に大きな穴

同じ砂浜に住むコメツキガニと比べると、スナガニはより高い位置に、より大きな巣穴を掘ります。穴のそばに残る砂の塊も、コメツキガニの砂団子より大きく、形がいびつです。

長崎県の砂浜で巣穴に入りかけたスナガニ
ふうけ, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

夜の砂浜での暮らしと食べ物

夏の夜に動き、冬は巣穴で冬眠

主に夏の夜に活発に動き、日中は巣穴の中で過ごすことが多いとされます。日中の警戒心は強く、人など大きく動くものに気付くと素早く巣穴へ逃げ込みますが、夜はそれほど警戒しません。冬になると、砂の中の巣穴で冬眠します。

神奈川県の砂浜にいるスナガニ
Nesnad, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

小さな動物から藻類、ウミガメの子まで

食べ物は動物が中心で、二枚貝・小さな甲殻類・昆虫などを好むほか、砂の中の珪藻(けいそう。小さな藻の仲間)も口にします。夜の砂浜を歩き回っては、打ち上げられた動物の死体や藻類をあさります。砂浜で卵からかえったばかりのウミガメの子を捕らえることもあります。

体の形と色の変化

箱のような甲羅と、左右で違うはさみ

大人の甲羅は立方体に近い形で、背中側がやや膨らんでいます。オスもメスも左右のどちらかのはさみが大きく、大きい方の内側には粒の列が並びます。長くがっしりした歩脚(歩くための脚)のおかげで、砂の上を素早く走れます。

目は大きく、視力に優れます。巣穴に入るときは、目の付いた柄(眼柄)を倒して、目の横のくぼみに収めます。

夏に朱色になるオス

夏の繁殖期になると、オスは体全体が朱色に変わります。次の写真は台湾で撮影された、赤みの強い個体です。

砂浜で体を持ち上げた赤いスナガニ(台湾)
Johnsonwang6688, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

白黒まだら模様の若い個体

若い個体は、コメツキガニに似た白黒のまだら模様をしています。コメツキガニの若い個体と比べると、甲羅が平たく脚が長いうえ、この頃から走るのが速いので区別できます。

南から来るツノメガニとの見分け方

甲羅の後ろの白い「D」の模様

日本の砂浜には、熱帯・亜熱帯を分布の中心とする仲間も4種います。ツノメガニ・ミナミスナガニ・ナンヨウスナガニ・ホンコンスナガニで、主に南日本の太平洋沿岸や、瀬戸内海などの内湾で見られます。

若い個体同士では、スナガニとツノメガニの見分けは非常に難しいとされます。スナガニの甲羅の後ろには、白い「D」の字を向かい合わせたような模様が1対あります。ツノメガニではこの部分が褐色の模様で、甲羅に対して脚がより長いことも見分けの手掛かりです。

温暖化で分布を広げる南の仲間

黒潮の影響が強い太平洋側の砂浜では、温暖化によって南の仲間が分布を広げています。住む場所や餌をめぐって、スナガニとの競争が起きている可能性が指摘されています。

日本海側の砂浜では今もスナガニが大半を占めますが、ツノメガニやナンヨウスナガニの若い個体が見つかる場所も出てきました。兵庫県の淡路島の東岸では、近年はツノメガニの方が多く見られます。

砂浜の変化で減るスナガニ

兵庫県では絶滅危惧Ⅱ類相当のBランク

環境省のレッドリストには載っていません。一方、広島県・愛媛県・山形県は準絶滅危惧としています。準絶滅危惧は、今は絶滅の危険が小さいものの、条件次第で危うくなる段階を指す区分です。兵庫県は2014年の改訂で、絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増している段階)に相当するBランクに加えました。

兵庫県の瀬戸内海側では、砂浜そのものが減ったために数が少なくなりました。日本海側では多く見られますが、海水浴場では毎年のように海岸の整備が行われています。兵庫県のレッドデータブックは、他の場所から運び込んだ砂で作り直した砂浜では、数が明らかに少なくなると記しています。

砂浜の環境を測る指標

スナガニの仲間の巣穴を数えると、その砂浜にどれくらいの数が住んでいるかが分かります。そのため、人が砂浜を利用する影響を測る指標(物差しになる生き物)として注目されています。兵庫県の日本海側で23か所の砂浜を調べた研究では、22か所で巣穴が見つかりました。

見つからなかった1か所は、浜坂漁港の小さな砂浜です。以前の調査では巣穴の多い場所でしたが、2011年の岸壁の整備と港の工事で砂浜が失われました。その後の調査では、スナガニの仲間も見られなくなっています。

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参考

画像出典

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