ミミックオクトパス

甲殻類・軟体動物

ミミックオクトパスは、ほかの生きものに姿を変える「擬態の名人」として知られるタコです。ミノカサゴやウミヘビ、ヒラメなど、15種類ほどに化けるといわれます。色を変えるだけでなく、体の形や動きまで似せる点で、ほかのタコと大きく異なります。1998年にインドネシアの海で見つかった、比較的新しく知られた種です。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:軟体動物門 Mollusca
  • 綱:頭足綱 Cephalopoda
  • 目:八腕形目(タコ目)Octopoda
  • 科:マダコ科 Octopodidae
  • 属:Thaumoctopus
  • 種:ミミックオクトパス Thaumoctopus mimicus

和名・英名

  • 和名:定まった和名はなく、「ミミックオクトパス」「ミミックタコ」と呼ばれる
  • 英名:Mimic octopus(まねをするタコ)

名前の由来

「ミミック(mimic)」は、英語で「まねをする」という意味です。ほかの生きものに化ける習性が、そのまま名前になりました。学名の mimicus も、同じ「まねる」に由来します。発見が1998年と新しく、日本語の名前はまだ定着していません。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長 約60cm(腕を含む。胴は細め)
分布インド洋〜太平洋西部(インドネシアなど。おもに熱帯の海)
生息環境濁った砂泥(さでい)の海底。河口付近の浅い海
食べもの肉食(小魚・カニなど)
特徴ほかの生きものへの擬態。色・形・動きを変える
発見1998年、インドネシア・スラウェシ島沖

化けるタコ ― 擬態の名人

砂地のミミックオクトパス
砂地で擬態するミミックオクトパス(Steve Childs, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons)

ふだんは地味、危険を感じると派手に

ミミックオクトパスの本来の色は、うすい茶色です。砂地にまぎれる、目立たない体をしています。ところが、敵が近づくと一変します。白と茶色のしま模様を浮かべ、毒を持つ生きものになりすまします。派手な姿は、身を守るための変装です。

化ける相手は、さまざま

ミノカサゴ・ウミヘビ・クラゲ

化ける相手は、どれも危険な生きものです。腕を放射状に広げれば、毒のトゲを持つミノカサゴになります。6本の腕を隠し、残りの2本をまっすぐ伸ばせば、ウミヘビそっくりです。胴をふくらませて腕を後ろに流せば、クラゲのようにも見えます。相手に応じて、化け方を巧みに使い分けます。

いちばんの得意技は「ヒラメ」

数ある変装のなかでも、とくに得意なのがヒラメへの擬態です。8本の腕を体の後ろにまとめ、平たい姿で砂の上をすべります。ある研究では、1匹のタコが5日間で500回近くもヒラメに化けたと報告されています。ヒラメの姿は、このタコがもっとも好んで使う変装のようです。

どうやって、化けているのか

腕を伸ばすミミックオクトパス
腕を伸ばし、ウミヘビのような姿をとる(Steve Childs, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons)

色だけでなく、形と動きまで

皮ふを自在にあやつる

タコの仲間は、皮ふの色や模様をすばやく変えられます。ミミックオクトパスは、それに加えて体の形と動きまで操ります。色を変えるだけのカメレオンとは、ここが大きく違います。別の生きものそのものに「なりきる」点が、このタコの真骨頂です。姿・模様・泳ぎ方の三つを組み合わせて、相手をだまします。

色が見えないのに、まわりに溶けこむ

タコは、色をほとんど見分けられないと考えられています。それでも、まわりの砂やサンゴの色に、みごとに溶けこみます。体の表面が光をよく反射し、色ではなく明るさをまわりに合わせているようです。自分に色が見えなくても、周囲に合わせて姿を変えられるのは、大きな謎の一つです。

状況に合わせて、相手を選ぶ

このタコは、ただやみくもに化けるわけではありません。状況を見て、化ける相手を選んでいる可能性が指摘されています。ある観察では、スズメダイにつきまとわれたタコが、その天敵であるウミヘビに化けました。相手の弱点をついた、賢い変装です。まねる能力は、長い進化のなかで身につけた行動と考えられています。

砂地の暮らしと、狩り

海底を移動するミミックオクトパス
砂地を移動するミミックオクトパス(Silke Baron, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons)

濁った砂泥地の底で

ミミックオクトパスがすむのは、濁った砂泥の海底です。岩やサンゴの少ない、隠れ場所の乏しい環境です。身を隠す岩かげがない代わりに、擬態が身を守る手段になります。何もない砂地こそ、この変装の名人が力を発揮する舞台です。おもに熱帯の浅い海で暮らします。

化けて狩る、攻撃的な擬態

砂を滑って、獲物をさがす

狩りのときは、体から水を吹き出して砂の上をすべります。そうして、小魚やカニなどの獲物をさがします。砂の中にひそむ獲物を、腕でさぐり出すこともあります。大きな体ではありませんが、器用な腕をあやつる狩人です。

仲間のふりで、獲物に近づく

擬態は、身を守るためだけのものではありません。獲物に近づくためにも使われます。たとえば、警戒心の強いカニに、その配偶相手のカニを装って近づくことが観察されています。相手を油断させてから、一気にとらえます。だますための変装を、狩りにも生かしています。

発見と、近い仲間

1998年、インドネシアで見つかった

ミミックオクトパスが知られるようになったのは、1998年のことです。インドネシアのスラウェシ島沖、濁った河口の海底で見つかりました。それまで、これほど多彩に化けるタコは知られていませんでした。今では、インドネシアを中心に、インド洋から太平洋西部の広い範囲で確認されています。比較的最近になって、その多彩な擬態能力が明らかになった種です。

近縁の「ウンダーパス」と、飼育のむずかしさ

ミミックオクトパスの近い仲間に、「ウンダーパス」というタコがいます。こちらも、複数の生きものに化ける擬態の名手です。いくつもの動物を積極的にまねると分かっているタコは、この2種ほどしか知られていません。擬態のしくみや進化には、まだ多くの謎が残されています。飼育は難しいとされ、水族館でもめったに見られません。その本来の姿は、熱帯の砂泥地にもぐって観察するのが基本です。

タコのなかまを、まとめて知る

タコ【総合】
タコは、8本の腕を持つ、海にすむ軟体動物のなかまです。世界には約300種が知られています。身近なマダコやミズダコから、猛毒のヒョウモンダコ・擬態の名人ミミックオクトパス・深海のメンダコまで、その姿はさまざまです。体の色を変え、道具を使うほど...

参考

  • Wikipedia(英語版)「Mimic octopus」(擬態する動物・分布・発見・生態)
  • Wikipedia(日本語版)「ミミックオクトパス」(擬態・分布)
  • 擬態に関する研究論文・各水族館の解説(ヒラメ擬態の観察など)

画像出典

サムネイル画像: Rickard Zerpe, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

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