メジロダコ

甲殻類・軟体動物

メジロダコは、ヤシの殻を持ち運んで隠れ家にする、道具を使うタコです。無脊椎動物で初めて「道具を使う」と確認された、注目の種です。さらに、6本の腕を折りたたんで2本の腕だけで歩く、めずらしい二足歩行でも知られます。英語では「ココナッツオクトパス」と呼ばれ、その知恵と行動が世界を驚かせました。

スポンサーリンク

分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:軟体動物門 Mollusca
  • 綱:頭足綱 Cephalopoda
  • 目:八腕形目(タコ目)Octopoda
  • 科:マダコ科 Octopodidae
  • 属:Amphioctopus
  • 種:メジロダコ Amphioctopus marginatus

和名・英名

  • 和名:メジロダコ(目白蛸)
  • 英名:Coconut octopus(ココナッツオクトパス)/Veined octopus(網目のタコ)

名前の由来

英語名の「ココナッツオクトパス」は、ヤシ(ココナッツ)の殻を使う習性にちなみます。もう一つの英名「ヴェインド・オクトパス」は、体に走る網目模様(vein=葉脈)に由来します。和名のメジロダコは、目のまわりの色合いから名づけられたとされます。学名の marginatus は「ふちどられた」という意味です。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ胴5〜10cm・腕を含め最大30cmほど(中形のタコ)
分布インド洋・紅海〜太平洋西部(東南アジアなど、熱帯の海)
生息環境砂や泥の海底。水深190mまで。貝殻やゴミの多い場所を好む
食べもの肉食(カニ・エビ・貝など)
特徴ヤシの殻を使う道具使用・二足歩行・網目模様
近縁マダコ科。擬態で知られるミミックオクトパスなどの仲間

道具を使うタコ ― ヤシの殻の隠れ家

殻を抱えるメジロダコ
貝殻をかかえるメジロダコ(Rickard Zerpe, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons)

殻を運んで、隠れ家をつくる

20mも運び、球形に組み合わせる

メジロダコは、海底に落ちたヤシの殻を拾い集めます。半分に割れた殻を、腕にかかえて運びます。ときには20mもの距離を運んだ記録があります。2枚の殻を組み合わせると、ボールのような隠れ家のできあがりです。その中に体を丸めて、身を守ります。

「本物の道具使用」といえる理由

ほかのタコも、落ちている殻に隠れることはあります。メジロダコが際立つのは、殻を「あとで使うために」持ち運ぶ点です。今すぐ使わない道具を、わざわざ運んで用意します。この「先を見越した準備」こそ、本物の道具使用と評価されました。ヤシの殻のほか、貝殻や人の捨てたビンを使うこともあります。

2009年、無脊椎動物で初めて確認

この行動は、2009年にオーストラリアの博物館の研究者が報告しました。インドネシアの海で、殻を運ぶメジロダコがはっきり撮影されました。それまで、道具を使う動物といえば、サルや鳥などが知られていました。背骨を持たない無脊椎動物での道具使用は、これが初めての確かな例とされます。小さなタコの行動が、動物の知能の見方を広げました。

2本足で歩く、めずらしいタコ

海底を歩くメジロダコ
砂の上を移動するメジロダコ(Jens Petersen, CC BY 2.5, via Wikimedia Commons)

6本で変装し、2本で歩く

転がるヤシの実に化ける?

メジロダコは、後ろの2本の腕を転がすようにして歩きます。残りの6本の腕は、体に巻きつけて丸い形をつくります。研究者は、この姿が「転がるヤシの実」に見せかけているのではないか、と考えました。まるまって歩くことで、敵の目をあざむいている可能性があります。歩きながら変装する、変わった移動のしかたです。

骨がないのに、二足歩行

タコの体には、背骨も殻もありません。骨組みのない体で二足歩行をする動物は、とてもめずらしいものです。じっさい、それができるのはタコの仲間だけだと指摘されています。二足で歩くタコは、いまのところ数種しか知られていません。柔らかい体で器用に歩く、タコならではの芸当です。

網目模様と、体つき

名前になった「網目」

メジロダコの体には、枝分かれした暗い線が走っています。この模様が葉脈(ようみゃく)のように見えることから、「網目のタコ」の英名がつきました。腕はふだん暗い色をしていて、吸盤は白っぽく目立ちます。胴は5〜10cmほどで、腕を含めた全長は大きいもので30cmほどです。この明暗の対比が、砂地でのよい目印になります。

目の下の三角と、色の変化

目のすぐ下には、明るい三角の模様があらわれることがあります。タコの仲間らしく、まわりに合わせて体の色や模様を変えられます。砂にまぎれるときは地味に、警戒するときは目立つ色にもなります。中形の体を、状況に応じて自在に変える、器用な生きものです。

砂泥地の暮らしと、狩り

砂地のメジロダコ
砂地で暮らすメジロダコ(Rickard Zerpe, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons)

隠れ場所の乏しい砂地で

メジロダコがすむのは、熱帯の砂や泥の海底です。岩やサンゴが少なく、身を隠す場所に乏しい環境です。だからこそ、殻を持ち運んで隠れ家にする知恵が生きます。貝殻やゴミの多い砂地には、たくさんのメジロダコが見られることもあります。何もない砂地を、道具でしのいで暮らすタコです。

カニや貝を食べる

食べているのは、おもにカニやエビ、貝などです。とくに、砂にもぐるカラッパというカニをよく捕らえます。腕で獲物をつかまえ、硬いくちばしで殻を割って食べます。つかまえた獲物を、殻の隠れ家に持ち帰って食べることもあります。砂地にひそむ獲物を、器用な腕でさぐり出す狩人です。

命がけの子育て

殻の中で、卵を守る

隠れ家を、産室にする

メスは、ヤシの殻などの隠れ家の中で卵を産みます。安全な殻の内側は、卵を育てる格好の部屋です。運んできた道具は、子育ての場としても役立ちます。外敵の多い砂地で、卵を守るための工夫です。

メスは食べずに、死をむかえる

卵を産んだメスは、そばを離れずに世話を続けます。その間はほとんど餌をとらず、自分の体を消耗させていきます。多くのタコと同じく、卵がかえるころには力尽きます。短い一生の最後は、次の世代のために使われます。道具の名手も、子育てには命をかけます。

タコのなかまを、まとめて知る

タコ【総合】
タコは、8本の腕を持つ、海にすむ軟体動物のなかまです。世界には約300種が知られています。身近なマダコやミズダコから、猛毒のヒョウモンダコ・擬態の名人ミミックオクトパス・深海のメンダコまで、その姿はさまざまです。体の色を変え、道具を使うほど...

参考

  • Wikipedia(英語版)「Amphioctopus marginatus」(道具使用・二足歩行・分布・繁殖)
  • Melbourne Museum ほかの研究報告(2009年・道具使用の観察)
  • 各水族館・海洋研究機関の解説(生態・行動)

画像出典

サムネイル画像: Nick Hobgood, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

タイトルとURLをコピーしました