ヤドカリ【総合】

エビ・カニ類(十脚類)

ヤドカリは、巻貝の殻に体を入れて背負って暮らす甲殻類の仲間です。体が大きくなると殻を引っ越す「宿替え」で知られ、殻をめぐって仲間どうしで争うこともあります。同じ仲間からは、殻を捨てて大きく育ったヤシガニやタラバガニも生まれました。

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分類と学名

ヤドカリは、エビやカニと同じ十脚目のなかの、ヤドカリ上科というグループの総称です。カニに近い「異尾類(いびるい)」の仲間で、世界には1000種以上がいるとされます。ホンヤドカリ科やオカヤドカリ科など、いくつもの科に分かれています。

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:節足動物門 Arthropoda
  • 綱:軟甲綱 Malacostraca
  • 目:十脚目 Decapoda
  • 下目:異尾下目 Anomura(ヤドカリの仲間)
  • 上科:ヤドカリ上科 Paguroidea

和名・英名

  • 和名:ヤドカリ(宿借・寄居虫)
  • 英名:Hermit crab(隠者のカニ)

名前の由来

「ヤドカリ」は、貝殻という宿を借りて暮らすようすから付いた名前です。漢字では「宿借」や「寄居虫」と書きます。英名の Hermit crab は「隠者(いんじゃ)のカニ」という意味で、殻にこもる姿にちなみます。中国語でも「寄居蟹」と書き、どの言葉も殻を借りる暮らしを名前にしています。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ数mmの小型種から、殻を含めて10cmを超える大型種まで
分布世界の海に広く分布。熱帯・亜熱帯には陸で暮らすオカヤドカリもいる
生息環境潮間帯・岩礁・サンゴ礁・砂泥の底から深海まで
食べ物藻類・生物の死がい・デトリタスなど(雑食)
天敵タコ・肉食魚・大型のカニなど
仲間の数世界で1000種以上

貝殻を背負う体のつくり

ヤドカリの体は、殻に入るために大きく変わったつくりをしています。この体があるからこそ、貝殻を家にして暮らせます。ふだんは殻から前半分だけを出して歩き回り、危険を感じると素早く殻に引っこみます。

貝殻を背負ったヤドカリ
巻貝の殻に体を入れて歩くヤドカリ。前半分だけを殻の外に出す

柔らかい腹を殻で守る

巻貝に合わせた螺旋の腹

ヤドカリの腹は、長くて柔らかい袋のような形をしています。多くの動物と違って硬い殻におおわれておらず、無防備な部分です。この腹は、巻貝の内側に合わせて、らせん状にねじれています。柔らかい腹を貝殻の中で守っているからこそ、体を軽くして動き回れます。

左右で違うハサミ

ヤドカリのハサミは、左右で大きさが違うものが多く見られます。大きいほうのハサミは、殻に引っこんだとき、入り口にふたをする役目をもちます。敵が来ても、このハサミがしっかり戸を閉めて体を守ります。左右がそろっていない体は、貝殻の中で暮らすうちに変わってきたものと考えられています。

脚のはたらき

ヤドカリが歩くのに使うのは、ハサミのすぐ後ろにある2対の脚です。残りの短い脚は、貝殻の内側をつかんで、殻がずれないように保つ役目をもちます。この仕組みのおかげで、殻を背負ったままでも速く動けます。砂浜では、ヤドカリが通ったあとに小さな足あとが点々と残ります。

宿替え——貝殻の引っ越し

ヤドカリといえば、貝殻を替える「宿替え」が有名です。体が大きくなると、今の殻が窮屈になり、新しい殻へ引っ越します。ちょうどよい殻を探すことは、ヤドカリの暮らしで大きな意味をもちます。

新しい貝殻に引っ越すヤドカリ
新しい貝殻を見つけて引っ越すヤドカリ。成長に合わせて殻を替える

成長すると殻を替える

ハサミで殻の大きさを測る

ヤドカリは、空いた貝殻を見つけると、すぐには入りません。まず殻の入り口にハサミを当てて、大きさをたしかめるとされます。今の体に合う殻だと分かると、古い殻からすばやく新しい殻へ乗り換えます。合わないときは、また別の殻を探しに向かいます。

殻をめぐる争い

ヤドカリにとって、体に合う貝殻はいつも足りていません。そのため、殻の奪い合いが起きることも珍しくないとされます。ときには、ほかのヤドカリが入っている殻から、その持ち主を引きずり出して奪うこともあります。海岸で目立つ場所を動いている貝は、そのほとんどがヤドカリの入った殻だといわれます。

貝殻でないものを使うヤドカリ

ヤドカリが使うのは、たいてい巻貝の殻です。しかし、なかには変わった住みかを使う種もいます。細長いツノガイの殻に入るものや、二枚貝の殻を背負うものが知られます。近ごろでは、人が捨てたペットボトルのふたなどのプラスチックごみを、貝殻の代わりに使うヤドカリも見つかっています。

いろいろなヤドカリと仲間

ヤドカリの仲間は種類がとても多く、海の中だけでなく陸にもいます。さらに、進化のなかで貝殻を捨てて大きく育った仲間もいて、姿はさまざまです。

海のヤドカリと陸のオカヤドカリ

日本の海岸では、ホンヤドカリやイソヨコバサミなど、小さなヤドカリを潮だまりでよく見かけます。いっぽう、熱帯や亜熱帯の海岸には、陸の上で暮らす「オカヤドカリ」の仲間がいます。オカヤドカリも、卵からかえった幼生の時期は海の中で育つとされます。大人になると陸へ上がり、湿った海岸ぞいで生活します。

殻を捨てた仲間、ヤシガニとタラバガニ

ヤドカリの仲間には、成長すると貝殻を必要としなくなったものもいます。世界最大級の甲殻類ヤシガニは、幼いうちは貝殻に腹を隠します。しかし育つと腹まで硬い殻におおわれ、貝殻を手放します。カニに見えるタラバガニも、この異尾類の仲間です。タラバガニの腹(ふんどし)が左右で非対称なのは、かつてヤドカリのような姿だった名残と考えられています。

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タラバガニ
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暮らしと生態

ヤドカリは、海辺の掃除屋ともいえる暮らしをしています。落ちたものを食べて片づけ、自身もほかの生き物の餌になります。さらに、ほかの生き物と手を組んで身を守る関係も知られています。

イソギンチャクを背負ったヤドカリ
貝殻の上にイソギンチャクを付けたヤドカリ。たがいに助け合う関係にある

食べ物と天敵

ヤドカリは、藻や生き物の死がい、海底の細かな有機物などを食べる雑食です。落ちたものを幅広く食べるため、海辺をきれいにする役目もはたしています。天敵は、タコや肉食の魚のほか、カラッパのような大型のカニです。危険がせまると殻に引っこみ、ハサミで入り口をふさいで身を守ります。

イソギンチャクとの共生

たがいに助け合う関係

ヤドカリのなかには、背負った貝殻の上にイソギンチャクを乗せて暮らす種がいます。イソギンチャクには毒のある刺胞があり、これがタコなどの天敵を近づけません。ヤドカリはこの毒で身を守ってもらえます。いっぽうイソギンチャクは、動けないはずが、ヤドカリに運ばれて広い範囲へ移動できます。どちらも得をする「相利共生(そうりきょうせい)」の関係です。

引っ越しがいらないヤドカリ

深海には、共生をさらに一歩進めたヤドカリもいます。背負ったイソギンチャクが分泌物で殻のような構造を作り、ヤドカリはそのなかに入って暮らします。この殻は、ヤドカリの成長に合わせて大きくなります。そのため、こうしたヤドカリは貝殻の引っ越しをする必要がありません。

人とのかかわり

ヤドカリは、その珍しい姿から、ペットとしても親しまれています。ただし、日本に住む陸のオカヤドカリには、注意すべき決まりがあります。

陸を歩くオカヤドカリ
陸で暮らすオカヤドカリ。日本産は国の天然記念物に指定されている

ペットのオカヤドカリ

日本に住むオカヤドカリは、全種が国の天然記念物に指定されています。そのため、旅行先の砂浜などで見つけても、勝手に捕まえて持ち帰ることはできません。ペットとして飼われているものは、許可を受けた業者がとった個体で、これを購入して飼うことは認められています。飼育下では海で幼生を育てるのが難しく、繁殖はあまり進んでいません。

貝殻とプラスチックごみ

ヤドカリの暮らしは、貝殻という限りある資源に支えられています。近年は、その貝殻の代わりに、海岸に散らばったプラスチックごみを背負うヤドカリが各地で観察されています。ふたやかけらを住みかにする姿は、海のごみ問題と、ヤドカリにとっての貝殻の大切さの両方を映し出しています。

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参考

  • ヤドカリ(ja.wikipedia.org)分類・体のつくり・宿替え・共生・下位分類
  • オカヤドカリ(ja.wikipedia.org)天然記念物指定・生態・飼育
  • Hermit crab(en.wikipedia.org)分布・生活史・貝殻利用

画像出典

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