オオルリ

鳥類

オオルリは夏の間だけ日本の山にやってくる小さな青い鳥です。姿の美しさで「青い鳥」御三家に、さえずりの美しさで日本三鳴鳥に数えられます。どちらも通称ですが、両方に名を連ねるのはこの鳥だけです。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:鳥綱 Aves
  • 目:スズメ目 Passeriformes
  • 科:ヒタキ科 Muscicapidae
  • 属:オオルリ属 Cyanoptila
  • 種:オオルリ Cyanoptila cyanomelana

和名・英名

  • 和名:オオルリ(大瑠璃)
  • 英名:Blue-and-white flycatcher/Japanese flycatcher

学名は「濃い青の羽」

属名 Cyanoptila は古代ギリシャ語の kuanos(濃い青)と ptilon(羽)を合わせたものです。種小名 cyanomelana も kuanos に melas(黒)を重ねた形で、雄の青と黒の配色をそのまま名前にしています。

記載は1829年、オランダの鳥類学者テミンクによるものです。当初はヒタキ属 Muscicapa に置かれましたが、1847年にブライスが、翼の長さや嘴の寸法など構造上の違いを理由に独立した属へ移しました。和名の「大瑠璃」は瑠璃色の鳥のなかで大きいという意味です。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長16〜17cm、翼開長は約27cm。スズメより少し大きい
体重20g前後。長野県軽井沢の実測では雄21.2g、雌19.8g(英語圏の資料は平均25gとする)
分布日本・南千島・朝鮮半島・中国北東部・アムール・ウスリーで繁殖。冬は海南島・台湾・フィリピン・ボルネオ・インドシナなどで越冬
生息環境低山帯から山地帯の森林。とくに日陰で湿気のある沢沿いの斜面。繁殖期はおおむね標高1200mまで
日本での時期夏鳥。4月下旬ごろ渡来し、10月ごろまで見られる
食べ物飛んでいる昆虫とその幼虫が中心。クモ類や木の実も食べる
保全状況IUCN: LC(軽度懸念)。ただし個体数は減少傾向

二つの「三」に数えられる鳥

口を開けてさえずるオオルリの雄
枝にとまって口を開ける雄。さえずりは高く澄んだ声で通る。Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

姿の三家と、声の三家

青い鳥御三家=オオルリ・コルリ・ルリビタキ

日本で見られる青い小鳥のうち、オオルリ・コルリ・ルリビタキの3種は「青い鳥」御三家と呼ばれます。いずれも瑠璃色を思わせる背中を持ち、オオルリはこのなかで最も大きい種です。

日本三鳴鳥=ウグイス・オオルリ・コマドリ

さえずりの美しい鳥として古くから並べられてきたのが、ウグイス・コマドリ・オオルリの3種です。日本三鳴鳥と呼ばれます。ウグイスの「ホーホケキョ」、コマドリの「ヒンカララ」に対し、オオルリは「ピリーリー」と表されます。姿と声、どちらの三家にも入るのはオオルリだけです。

クッ、クッの地鳴きと、ジジッで締めるさえずり

オオルリの声には普段の地鳴きと繁殖期のさえずりがあります。地鳴きはクッ、クッという短い音です。さえずるのは雄が中心ですが、雌もさえずることがあります。

最後に付く「ギチ、ギチ、ギチ」

さえずりは高く澄んだ口笛のような声です。「ピィーヒィーリリ、ピピーピィーリ、ジジッ」のように表されます。最後に「ギチ、ギチ、ギチ」や「ジジッ」という濁った音を付けるのが特徴とされます。

キビタキやクロツグミの声を混ぜる

雄はレパートリーを複数持ち、その内容は個体ごとにかなり違います。キビタキやクロツグミ、ホオジロなど他種のさえずりを真似て自分のレパートリーに混ぜることもあります。そうした場合でも締めの濁り音は残るとされます。

翼と尾から先に青くなる

雄の青と、雌の褐色

雄は背中が濃い青、喉から胸が黒

尾羽の付け根の白斑が見えるオオルリの雄
雄の後ろ姿。外側の尾羽の付け根に白い斑がある。Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

成鳥の雄は頭から尾までの背面が光沢のある濃い青です。顔から喉、胸の上部と脇にかけては黒く、腹から下は白くなります。青と黒と白の三色がはっきり分かれるので、光の下ではよく目立ちます。

外側の尾羽の付け根には白い斑があります。これは雄成鳥の特徴で、飛び立った瞬間や尾を広げたときに見えます。青の濃さには個体差があり、深い青から明るいコバルトブルーまで幅があります。

雌は全身が茶褐色

茶褐色をしたオオルリの雌
雌。全身が茶褐色で、青は出ない。Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

雌は頭から背中にかけて灰色がかった茶褐色で、喉の中ほどと腹が淡い白です。胸と脇は褐色を帯びます。体は雄より平均してやや小さく、頭の輪郭も小さめに見えます。キビタキの雌やコサメビタキと似ているため、雌だけを見て種を決めるのは難しいとされます。

若い雄は翼と尾から青くなる

体は褐色で翼と尾が青いオオルリの若い雄
若い雄。頭と胸は雌と同じ褐色で、翼と尾に先に青が出る。Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

全身が青くなるまで2年から3年

雄が成鳥のような青い羽になるまでには、2年から3年かかると考えられています。それまでの若い雄は体つきも羽色も雌によく似た茶褐色です。腰や肩羽、翼の雨覆、尾羽の側から先に青が現れます。

見分けの手がかりは大雨覆と尾の青

茶色い個体が雌か若い雄かは、翼の大雨覆と尾に青が出ているかで見分けられます。雌は年齢にかかわらず、大雨覆と尾に青が出ないのが通常です。まれに青みを帯びる雌もいるとされます。

渓流の岩壁にコケで巣を作る

巣は隠れた窪みに

木の根元の隙間、岩壁、建物の屋根の下

巣を作るのは雌だけです。材料はおもにコケで、落ち葉や根を混ぜて椀形にまとめます。置く場所は木の根元にできた隙間や岩壁など、屋根のある自然の構造物です。建物の屋根の下に作ることもあります。木の枝に巣をかける小鳥とは、この点が違います。

軽井沢の森での調査では、滑りやすい斜面が選ばれることが多いと報告されています。哺乳類の捕食者が簡単には近づけない急斜面・コケの生える湿った岩崖・崩れやすい土崖といった場所です。

抱卵は雌だけで約14日

産卵期は5月から7月ごろです。一腹の卵数は3個から5個で、主に4個から5個とされます。軽井沢では1回目の繁殖で5個、2回目ややり直しの繁殖では4個のことが多いという記録があります。

温めるのは雌だけで、抱卵はおよそ14日です。雛は約12日で巣立ち、その後10日ほど家族で行動し、雌雄そろって餌を運びます。

托卵される側の鳥

オオルリの巣にはほかの鳥が自分の卵を産みこむことがあります。日本ではジュウイチによる托卵が記録されています。中国での調査では、カッコウやホトトギスも相手として挙げられています。

飛ぶ虫を空中で捕らえる

ヒタキ科の名のとおり、餌のとり方は空中での捕食です。枝に止まって周囲を見張り、飛んでいる昆虫を見つけると飛び出して捕らえ、また枝へ戻ります。活動がもっとも盛んなのは朝の時間帯です。

地面に降りたオオルリの雄
地上に降りた雄。王朝威, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

普段は樹上で過ごし、餌をとるために地面へ降りることは稀とされます。

昆虫のほかにクモや木の実も

主食は昆虫とその幼虫ですが、クモ類も捕らえます。木の実を食べることもあり、ヨウシュヤマゴボウの実が記録されています。

飼い鳥だった歴史と、いまも続く違法飼育

和鳥四品のひとつ

姿と声の両方が評価された結果、オオルリは古くから飼い鳥として人気がありました。キビタキ、コマドリ、ミヤマホオジロと並んで「和鳥四品」の一つに挙げられています。声を楽しむために野鳥を飼う文化が、長く続いていたことになります。

いまは鳥獣保護管理法で規制されている

現在は鳥獣保護管理法によって、愛玩を目的とした捕獲が禁止されています。それでも違法に捕獲された個体がペットショップなどで売られたり飼われたりする事例は、毎年のように確認されています。飼われる個体はほとんどが雄で、生後1年に満たないものが多いとされます。

一方で、飼育下での繁殖に取り組む施設もあります。豊橋総合動植物公園は自然繁殖で1991年、人工繁殖で2003年に繁殖賞を受けています。

どこで会える

花の咲く枝にとまるオオルリの雄
渡ってきたころの雄。日本には4月下旬ごろに姿を見せる。Alpsdake, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

低山の渓流沿いを、4月下旬から

会いやすいのは低山帯から山地帯の、渓流に沿ったよく茂った森です。林のなかの湖のほとりや、牧場と林の境でも見られます。渡ってくるのは4月下旬ごろで、10月ごろまで日本にとどまります。

雄はなわばりを持ち、繁殖期には梢の高い位置でさえずります。姿を探すより先に声で気づくことが多く、声のする方向の梢を見上げるのが手順になります。

渡りの時期は市街地の公園でも

春と秋の渡りの時期には、市街地の公園で観察されることがあります。山まで行かなくても出会える機会がある一方、滞在は短く、同じ場所で続けて見られるとは限りません。

栃木県の県鳥に指定されている

栃木県はオオルリを県の鳥に指定しています。県は理由として、美しい鳴き声と鮮やかな瑠璃色の姿が県のシンボルにふさわしいことを挙げています。県内では4月から5月ごろに渡来し、10月初めごろまで見られるとしています。場所として日光・那須・矢板・宇都宮などを挙げています。

近縁のチョウセンオオルリ

かつてオオルリの亜種とされていた鳥に、チョウセンオオルリ Cyanoptila cumatilis がいます。中国中部で繁殖し、冬はマレー半島やスマトラ島、ジャワ島へ渡ります。現在は別種として扱われます。

和名に朝鮮の名が付くのは、かつてアムールから中国北東部、北朝鮮で繁殖する個体群をこの名で呼んでいた名残です。環境省が2009年に出した識別マニュアルもその扱いを採っています。現在その個体群は亜種 intermedia として扱われます。

オオルリ自身は2亜種に分かれる

オオルリには2つの亜種が認められています。基亜種 C. c. cyanomelana は日本と南千島で繁殖します。もう一方の C. c. intermedia は中国東北部から朝鮮半島、ロシア南東部で繁殖します。冬はどちらも東南アジアへ渡り、基亜種は台湾や海南島でも越冬します。

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