ノスリは、草地や農地でネズミなどを狙う、ずんぐりとした中型のタカです。トビより色が淡く、丸みのある体つきをしています。杭や電柱にとまって待ち伏せたり、空中で止まる停空飛翔から急降下したりして獲物をとらえます。かつて鷹狩に使えないタカとして「くそとび」と呼ばれた歴史でも知られます。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:鳥綱 Aves
- 目:タカ目 Accipitriformes
- 科:タカ科 Accipitridae
- 属:ノスリ属 Buteo
- 種:ノスリ Buteo japonicus
和名・英名
- 和名:ノスリ(鵟)
- 英名:Eastern buzzard
名前の由来
「ノスリ」という名の由来は、地表すれすれを擦るように低く飛ぶ姿にあるとされます。かつてヨーロッパノスリなどと同じ種とされていましたが、2008年の分子系統の研究をきっかけに、別種として分けられました。学名の japonicus は「日本の」を意味します。漢字では「鵟」と書きます。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長 約50〜60cm/翼を広げた幅 約100〜140cm(メスがやや大きい) |
|---|---|
| 体重 | 約500〜1300g |
| 分布 | ユーラシア東部。日本では山地で繁殖し、冬は南西諸島を除く全国へ |
| 生息環境 | 山地の林/冬は平地の農地・草地・河川敷など |
| 食べ物 | ネズミなどの小型哺乳類を中心に、昆虫・爬虫類・両生類・小鳥など |
| 寿命 | 野生でおよそ10〜20年とされる |
| 保全状況 | 種全体は普通に見られる/亜種オガサワラノスリは絶滅危惧・天然記念物 |

ずんぐりした褐色のタカ
カラスほどの丸い体
大きさとメスの優位
ノスリは、全長50〜60センチメートルほどの中型のタカです。大きさはカラスと同じくらいで、翼を広げた幅は1メートルを超えます。ワシやタカのなかまと同じく、メスのほうがオスよりやや大きめとされます。飛ぶと翼の幅が広く、全体にどっしりとした印象を受けます。
トビより淡い色と短い丸尾
体の上面は褐色で、腹側は淡い褐色をしています。同じく身近なトビとくらべると、全体に色が淡く、尾は短くて丸みを帯びます。トビの尾が「く」の字にへこむのに対し、ノスリの尾はまるく開きます。頭も体もずんぐりとして見えるのが、ノスリらしい姿です。
淡褐色の腹と黒い喉
腹側は白っぽい淡褐色で、胸のあたりに褐色の斑が入る個体が多く見られます。喉には黒っぽい羽毛があり、虹彩は褐色です。羽の色には個体差があり、白っぽいものから濃いものまで幅があります。この色の幅の広さも、ほかの猛禽と見分けにくい一因とされます。上空を舞うときは、翼の下面の白さと、翼の先の黒い部分がよく目立ちます。

ネズミを狙う草地のハンター
停空飛翔からの急降下
空中で止まって探す
ノスリは、羽ばたきながら空中の一点にとどまる「停空飛翔(ホバリング)」をおこないます。この姿勢で地上の獲物を探し、見つけると翼をすぼめて急降下し、足でつかみとります。風の力もつかって空中に止まるため、あまり羽ばたかずに長くとどまることもあります。開けた草地や農地は、地上の小動物を見つけやすい狩り場です。ホバリングで少しずつ場所を変えながら、根気よく獲物を探すこともあります。
杭や電柱での待ち伏せ
ノスリは、飛びながら狩るだけでなく、杭・電柱・立ち木の先などにとまって待ち伏せもします。高い場所から地上を見張り、獲物が動いた瞬間に舞いおりてとらえます。冬の農地でよく見られるのが、電線や畑の支柱の上でじっととまる姿です。地表すれすれを擦るように低く飛んで、獲物に近づくこともあります。
何を食べるのか
ネズミなどの小動物
ノスリの食べ物は、ネズミやモグラなどの小型哺乳類が中心です。田畑のネズミをよくとらえるため、農業の害獣を減らす鳥として役立つ面もあります。魚をとるミサゴや小鳥を襲うオオタカとは、狙う獲物が大きく異なります。
幅広い獲物
小型哺乳類のほかに、カエル・ヘビ・トカゲ・昆虫・小鳥なども食べます。季節や場所によって、とれるものを幅広くとらえて暮らします。獲物を選びすぎないことは、農地から河川敷まで、いろいろな環境で生きていける強みにもなっています。地上の獲物を主に狙う点は、木々のあいだで小鳥を追うタカとは対照的です。

冬に身近になるタカ
山で繁殖し、冬は平地へ
ノスリは、北海道から九州までの山地の林で繁殖します。繁殖地では一年じゅう暮らす留鳥ですが、寒くなると多くが平地へ移動します。秋には山から下り、春になるとまた山へ戻る個体も少なくありません。冬には、農地や河川敷、田んぼの上を舞う姿が各地で見られるようになります。冬に平地へ下りて数が増えるため、農地や河川敷で観察される機会が多くなるとされます。
枝を組む巣と子育て
繁殖期には、樹上や断崖の上に、木の枝を組んだ巣をつくります。日本では4〜5月ごろに2〜4個の卵を産みます。卵はおよそ33〜35日で孵り、ヒナは50日ほどで飛べるようになります。親は狩った小動物を巣に運び、ヒナを育てます。気に入った営巣地には、年をこえて同じつがいが戻ってくることもあるとされます。
「くそとび」と呼ばれた鷹
鷹狩に使えなかったタカ
ノスリは、奈良時代には「くそとび」と呼ばれていたと伝えられます。オオタカのように鳥を追う鋭い狩りをせず、鷹狩の道具として使いにくかったためだといわれます。いっぽうで現在は、農地のネズミを減らす鳥として見直されています。しかし、農地のネズミを減らす働きは、農作物を守るうえで昔から役立ってきました。地上の小動物をとらえる暮らしは、身近な生態系のなかで一定の役割を担っています。

似た猛禽との見分け
トビ・オオタカ・サシバとの違い
空を舞うノスリは、ほかの身近な猛禽とまぎれやすい鳥です。色の淡さ・尾の形・狙う獲物といった手がかりで見分けられます。とくに飛び方や尾の形は、遠くからでも判断の助けになるとされます。
| ノスリ | カラス大でずんぐり。色が淡く、尾は短い丸尾。停空飛翔でネズミを狙う |
|---|---|
| トビ | やや大きく色が濃い。尾は「く」の字にへこむ。腐肉や生ゴミも食べる |
| オオタカ | 灰色で翼が短く尾が長い。森や街で小鳥・ハトを追う |
| サシバ | ノスリより小型の夏鳥。カエルやヘビを好み、秋に大群で渡る |
飛んでいるときは、翼の下面の白さと丸みのある短い尾が、ノスリを見分ける目印になります。水辺で白い頭が目立つミサゴとも、色や狩り方で区別できます。

ノスリの豆知識
「ピーエー」と鳴く声
ノスリは、猛禽のなかではよく鳴く鳥として知られます。声は「ピーエー」「ピーヨー」と聞こえる、高くのびる声です。とくに繁殖期には、飛びながらさかんに鳴きます。声は、なわばりの主張や、つがいのやりとりでも使われるとされます。上空で輪を描いて舞いながら、よく通る高い声で鳴くこともあります。
カラスに追われることも
ノスリがゆっくり舞っていると、カラスの群れに追いかけられることがあります。カラスは、自分たちのなわばりに入った猛禽を、しつこく追い立てる習性をもちます。ノスリは強く反撃することが少なく、追われながら場所を移すことも多いようです。のんびりとした飛び方とあわせて、気弱な猛禽と紹介されることもあります。
島で暮らす絶滅危惧の仲間
ノスリには、島ごとに分かれた亜種がいます。大東諸島で暮らしていたダイトウノスリは、すでに絶滅したとされます。小笠原諸島のオガサワラノスリは絶滅危惧とされ、世界でも小笠原にしかいない鳥として、天然記念物に指定されています。これらの島の亜種は、狭い範囲だけで暮らすため、環境の変化の影響を受けやすいとされます。広く見られる本州のノスリと違い、限られた島の仲間は数がとても少なく、手あつく守られています。
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参考
- ウィキペディア「ノスリ」(分類・大きさ・食性・繁殖・亜種・名前の由来)
- サントリー「日本の鳥百科」ノスリ(生態・鳴き声・季節の分布)
- 日本野鳥の会 BIRD FAN「ノスリ」(形態・見分け)
画像出典
- アイキャッチ・止まる姿:Buteo japonicus — NOZO, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons
- ずんぐりした姿:Eastern Buzzard — Andrew Bazdyrev, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
- 電柱での待ち伏せ:Eastern Buzzard on the pole — harum.koh (Kobe, Japan), CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
- 冬の樹上:Eastern Buzzard — Kudaibergen Amirekul, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- 飛翔:Eastern Buzzard — 王朝威, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
- 顔:Buteo japonicus — Kudaibergen Amirekul, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons


