タイワンリスは台湾からやってきたリスで、今は鎌倉や伊豆大島など日本各地に住み着いています。1951年に江ノ島の飼育小屋が台風で壊れ、逃げた54匹が橋を渡って鎌倉へ入ったと言われています。2005年には特定外来生物に指定され、飼うことは原則できなくなりました。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:哺乳綱 Mammalia
- 目:ネズミ目(齧歯目) Rodentia
- 科:リス科 Sciuridae
- 属:クリハラリス属(ハイガシラリス属) Callosciurus
- 種:クリハラリス Callosciurus erythraeus
- 亜種:タイワンリス Callosciurus erythraeus thaiwanensis
和名・英名
- 和名:タイワンリス(台湾栗鼠)
- 英名:Pallas’s squirrel / Red-bellied tree squirrel
種の名と、亜種の名
種としての名前はクリハラリスで、アジアの広い範囲に分布しています。そのうち台湾だけにいる亜種がタイワンリスで、日本に定着したのはこちらにあたります。環境省も「クリハラリスの中の台湾の固有亜種をタイワンリスといいます」と説明しています。駆除や法令の文書では、種の名であるクリハラリスが使われます。
かつては、別種のハイガシラリスの一亜種とする説もありました。しかし台湾にハイガシラリスは分布しないという見方から、今はクリハラリスの一亜種として扱われています。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 頭胴長(尾を除く) 約20〜22cm/尾長 約17〜20cm(尾まで入れると約40cm) |
|---|---|
| 体重 | 約360g(種全体では310〜460g) |
| 原産地 | 台湾 |
| 日本での分布 | 伊豆大島・神奈川県南東部・静岡県東伊豆町・岐阜市(金華山)・大阪市(大阪城)・和歌山市(友ヶ島、和歌山城)・長崎県・熊本県ほか |
| 生息環境 | 常緑広葉樹林のほか、市街地の緑地・公園・鎮守の森 |
| 食べ物 | 果実・種子・花・葉が主。昆虫やカタツムリも食べる |
| 寿命 | 飼育下で最長17年の記録 |
| 法令上の扱い | 特定外来生物(2005年指定・外来生物法) |
台風で小屋が壊れ、54匹が橋を渡った

始まりは1935年、伊豆大島の公園から
日本にタイワンリスが現れたのは1935年で、伊豆大島の公園から飼育個体が逃げ出したのが最初とされます。逃げた個体はそこから分布を広げ、やがて島内の全域で見られるようになりました。
その後は観光用に放されたり、飼われていた個体が逃げ出したりして、各地に定着していきます。住み着いた先には金華山・大阪城・和歌山城・友ヶ島と、公園や城跡が目立ちます。人が集まる緑地に運ばれ、そこで増えたという経過が地名から読み取れます。
1951年、江ノ島植物園の54匹
神奈川県に入った経路については、言い伝えが残っています。1951年、江ノ島植物園は伊豆大島から連れてきた54匹のタイワンリスを飼育していました。ところが台風で飼育小屋が壊れ、逃げ出した個体が弁天橋を渡って鎌倉市内へ入ったと言われています。そこで繁殖し、住み着きました。
ただし、この経路が確かめられているわけではありません。鎌倉市内の個体については、別荘地で飼われていたものが逃げて野生化したとする説もあります。どちらにしても、島から運ばれた少数の個体が出発点だった点は変わりません。
九州にも、国外にも広がった
環境省の九州環境局は、生息が確認されている場所として四か所を挙げています。長崎県の壱岐市と五島市、熊本県の宇土半島、大分県の高島です。ペットとして流通していた個体が逃げたり放されたりして野外に住み着き、果樹などの農作物や樹木に被害が出ています。
日本の外でも、アルゼンチン・フランス・ベルギー・イタリア・オランダで人が持ちこんだ個体が定着しています。市街地の緑地や公園、鎮守の森にも適応できることが、定着の広さにつながっています。
灰褐色の背に、赤みを帯びた腹

ニホンリスより一回り大きい
日本にいる個体は、尾を除いた頭胴長が20〜22cm・尾長が17〜20cmほどで、体重は360g前後になります。尾まで入れるとおよそ40cmですから、在来のニホンリスより一回り大きい体つきです。体毛は短く、背中が灰褐色なのに対して腹は淡い褐色から赤褐色になります。背面に黒い毛が混じるのも特徴です。
種全体で見ると頭胴長は16〜28cm、尾は11〜26cm、体重は310〜460gと幅があります。オスとメスは大きさも見た目もよく似ていて、外見では区別がつきにくいとされます。
30を超える亜種で、色がまるで違う

クリハラリスには30を超える亜種が知られており、毛色は亜種によってかなり変わります。インド北東部の個体群のように腹が鮮やかな赤になるものがある一方、腹の赤みがほとんど目立たない個体群もあります。
この色の幅は、分類のうえでは手掛かりにも悩みの種にもなってきました。細かな模様や色合いは亜種を見分けるのに使われます。ただし変異の大きい他のリスと、種のレベルで区別するのは難しいとされています。名前に入っている「赤い腹」も、いつでも当てになるとは限りません。
木の実も昆虫も食べ、木の上に巣を作る

昼行性で、枝から枝へ1mほど跳ぶ
タイワンリスは昼に活動し、普段は単独で行動します。ただし幼いうちは、兄弟と一緒に動くことがあります。枝から枝へは1mほど跳び、林の上のほうを主な生活の場にしています。
鳴き声は「ワンワン」「クックッ」と表され、小型犬の声に間違えられることもあります。声はよく通り、姿が見えなくても近くにいることが分かります。
果実・種子が主で、昆虫も食べる
食べ物は植物が主体で、樹木の果実・種子・花・葉をよく食べます。そのうえでアリやセミのような昆虫やカタツムリを捕らえることもあり、雑食といってよい幅があります。餌の少ない冬には人家の近くに現れることも多く、ツバキの蕾や収穫前の果実、樹皮まで口にします。
妊娠は47〜49日、普通は2頭を産む
繁殖期は決まっておらず、一年を通して繁殖します。前の子を乳離れさせると、すぐ次の交尾に向かうこともあります。日本では年に1〜2回、なかには年3回繁殖した例も報告されています。
巣立ちは40〜50日、1年で親になる
妊娠期間は47〜49日で、生まれる子は最大4頭、普通は2頭です。子は40〜50日ほどで巣を離れ、1歳で繁殖できる体になります。飼育下では、17年生きた記録があります。
細い枝を集めて、樹上に巣を作る
繁殖期には細い枝を集め、樹上に巣を作ります。木の葉が落ちた冬には巣が丸見えになり、葉のない季節のほうが観察しやすくなります。葉で作る巣のほかに、樹洞をすみかにすることもあります。
木に登るヘビを、声を上げて追い立てる
タイワンリスは捕食者を見つけると鳴いて周囲に知らせます。木に登ってくるヘビに対しては、集まって追い立てる行動が観察されています。子を守っているメスは、とくにこれに加わりやすいとされます。逃げるだけでなく、数を頼みに押し返します。
天井裏に住み着き、電線をかじる

洗濯物を汚し、天然記念物の樹皮を剥ぐ
鎌倉市で報告されている被害は、暮らしの場面にそのまま重なります。
- 民家の天井裏に住み着く
- 庭の果樹をかじる
- 物干し竿を伝い歩いて洗濯物を汚す
- 電線や電話線をかじる
被害は、文化財にも及びました。英勝寺では、市の指定天然記念物であるワビスケの樹皮が剥がされる被害が出ています。樹皮を食べる性質が、そのまま文化財の被害につながりました。
伊豆大島では、電線の被膜を替えた
伊豆大島では、送電線を渡ったりかじったりすることで停電が起きる心配がありました。そこで、被害を未然に防ぐために、特別な皮膜で覆った電線へ張り替える対応がとられました。
人工林のスギとヒノキも剥がされる
長崎県の壱岐市や五島市では、植林したスギやヒノキの樹皮が剥がされ、果樹や農作物も食べられています。かご罠や捕獲檻を使った駆除が行われていますが、繁殖力が強いため、簡単には減りません。
環境省は、九州が農林業の盛んな地域であることをふまえ、他の地域に侵入させないことが大切だとしています。見かけても餌付けをしない、別の場所へ運ばないという呼びかけは、ここに理由があります。
在来の生きものへの影響
1980年代に入ると個体数が増え、分布も広がりました。在来種のニホンリスと競合し、地域によってはその絶滅の要因になりかねないと懸念されています。影響は鳥にも及び、コゲラやシジュウカラが使う樹洞の入り口をかじって広げてしまいます。中にいる雛や卵を食べる被害も報告されています。
2005年に特定外来生物になった

飼うことは原則できない
規制されるのは飼育・運搬・放出
2005年、外来生物法によってクリハラリスは特定外来生物に指定されました。これにより、飼育や運搬、野外へ放つことは原則として禁止されています。姿だけを見て飼いたいと思う人もいますが、今は選べる相手ではありません。
※ 特定外来生物とは、外来生物法にもとづいて指定された生きものです。生態系や人の暮らし・農林水産業に被害を及ぼすおそれがあるとされ、飼育・栽培・運搬・輸入・野外への放出などが規制されます。
例外としての金華山リス村
もっとも、例外がないわけではありません。岐阜市の金華山には、タイワンリスと触れ合える「金華山リス村」があり、動物園として飼育展示が続けられています。
捕獲檻を無料で貸し出す
被害の大きい神奈川県などでは、県の方針に沿って市町村が捕獲檻を無料で貸し出しています。「タイワンリス捕獲檻」と呼ばれる箱型の檻で、業者を通じて住民に届けられ、捕獲された個体は業者へ引き渡されます。住民が自分で檻を仕掛けられる仕組みが、対策の中心になっています。
数字は減りはじめている
鎌倉市が餌付けの禁止と捕獲に踏み切ったのは、逃げ出してから半世紀近くたった1999年でした。捕獲を始めてからは、捕獲数も被害の相談件数も年々減っているとされています。
リスの仲間について
日本には在来のニホンリスやエゾリスがいて、タイワンリスはその暮らしの場へ後から入ってきました。

参考
- Wikipedia「タイワンリス」
- Wikipedia(英語)「Pallas’s squirrel」
- 環境省 九州環境局「外来生物対策-クリハラリスについて~九州の生息域等~」
- 環境省「特定外来生物等一覧」
画像出典
- Lin Scott, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
- Charles J. Sharp, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
- Rejoice Gassah, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
- Rejoice Gassah, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
- Wang.QG, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
- laiet17, CC0, via Wikimedia Commons
- Yoshi Canopus, CC0, via Wikimedia Commons


