アブラガニ

甲殻類・軟体動物

アブラガニは、北太平洋の冷たい海で暮らすタラバガニの仲間です。姿はタラバガニとよく似ていますが、甲羅の中央にある突起の数で見分けられます。かつてはタラバガニと偽って売られ、国が不当表示として取り締まったこともあります。

スポンサーリンク

分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:節足動物門 Arthropoda
  • 綱:軟甲綱 Malacostraca
  • 目:十脚目 Decapoda
  • 下目:異尾下目(ヤドカリ下目) Anomura
  • 科:タラバガニ科 Lithodidae
  • 属:タラバガニ属 Paralithodes
  • 種:アブラガニ Paralithodes platypus (Brandt, 1851)

和名・英名

  • 和名:アブラガニ(油蟹)
  • 別名:アオガニ(青蟹)
  • 英名:Blue king crab

「油」の由来はカニミソと甲羅の光沢の2説

和名の「アブラ」の由来には2つの説があります。カニミソが脂っこいからとする説と、甲羅の表面に油を塗ったような光沢があるからとする説です。

一方、別名のアオガニと英名の blue king crab は、体の青みから付いた名前です。生きたアブラガニは、タラバガニより青みを帯びています。英語ではタラバガニ科のカニをまとめて king crab(キングクラブ)と呼びます。blue king crab は「青いキングクラブ」という意味です。なお、アオガニの名はワタリガニ科の別のカニの標準和名にも使われています。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ甲羅の幅は約20cm(大人の手のひらを広げたほど)。タラバガニよりやや小さい
分布ベーリング海・オホーツク海・カムチャツカ半島沖・北海道の北東の沖など
生息環境冷たい海の海底。オスの漁獲サイズの個体は平均して水深70mほど
食べ物海底の小動物。タラバガニ科のカニはゴカイ・貝・ヒトデ・ウニなどを食べる
成熟メスは約5歳、オスは約6歳とされる
寿命分かっていない。20〜30年という推定がある
保全状況IUCN:未評価(NE)

タラバガニとの見分け方は、甲羅中央の突起の数

アブラガニは4本、タラバガニは6本

カニの甲羅には、筋や溝で区切られた「H」の字のような模様があります。その中央の下の区画を心域と呼び、ここに並ぶ突起の数が見分けの手掛かりになります。豊洲市場協会によると、この突起はアブラガニが4本でタラバガニが6本です。ごくまれに、5〜6本を持つアブラガニも見つかります。

方眼の上に置かれたアブラガニのメスを背中側から見た姿。甲羅に突起が並ぶ
Scott Van Sant, Public domain, via Wikimedia Commons

色と脚にも違いがある

突起のほかにも、色やはさみ、脚の裏に違いがあります。ただ全体の姿はよく似ており、店頭で並べられると見分けにくいカニです。

アブラガニタラバガニ
甲羅中央の突起4本6本
大きさタラバガニよりやや小さいアブラガニより大きい
はさみやや長いアブラガニより短め
脚の裏の色色素がない色素がある
体の色全体に淡く、青みを帯びる赤みが強い
タラバガニ
「カニの王様」タラバガニは、実はカニではなくヤドカリに近い仲間。あしが8本に見える理由、ズワイガニとの違い、アブラガニとの見分け方まで。

カニと呼ばれるヤドカリの仲間

甲羅の内側にしまわれた、最後の1対の脚

アブラガニは、タラバガニやハナサキガニと同じく、分類上はヤドカリの仲間(異尾類)です。ケガニやズワイガニのような本来のカニは、はさみの脚のほかに4対の歩く脚を持ちます。アブラガニの仲間では最後の1対が小さく、甲羅の後ろの内側にしまわれています。

この小さな脚は、メスが腹に抱えた卵を掃除するのに使われます。腹の部分は扇のような形をしており、甲羅の後ろの下側に折りたたまれています。

石の多い浜辺の上にいるアブラガニ
Igor Zagrebin, CC0, via Wikimedia Commons
ハナサキガニ
ハナサキガニは、北海道東部の根室や釧路の沿岸で暮らす、棘の多い大型の甲殻類です。名前に「カニ」と付きますが、タラバガニと同じくヤドカリの仲間に分類されます。茹でると鮮やかな朱色になり、根室を代表する味覚として知られます。分類と学名分類階層界...

ベーリング海の島々に分かれて暮らす

タラバガニより北の、冷たい海

ベーリング海を中心に、チュクチ海の一部やカムチャツカ半島沖、北海道の北東の沖やオホーツク海に分布します。タラバガニより北寄りにいるのは、ベーリング海北部の冷たい水が暮らしに合うためと考えられています。

ただ、その範囲は切れ切れで、タラバガニのように広く連続してはいません。アラスカではプリビロフ諸島とセントマシュー島の周りに大きな群れがあり、入り江の深い湾にも群れが見られます。

アラスカとロシアの沖で、アブラガニの群れが知られている海域を示した地図
DiabeticCharlie, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

冬は深く、春は浅い海へ

成体は毎年、浅い海と深い海の間を行き来します。メスは冬を水深130〜180m(東京タワーの高さの半分前後)で過ごし、冬の終わりに浅い海へ移ります。特に卵を抱えた個体は、水深6〜10mほどの浅瀬まで上がってきます。春に卵がかえると、脱皮と交尾を済ませ、餌を求めて再び深い海へ戻ります。

キングクラブの仲間はゴカイや貝、ヒトデやウニなど海底の生き物を幅広く食べます。一方で魚のマダラやオヒョウ、タコやラッコには食べられ、仲間同士の共食いも起こります。

アラスカの水深18mで、大きなサンゴの陰に身を寄せるアブラガニ
D. Csepp, Public domain, via Wikimedia Commons

1年おきに産卵する繁殖

卵を抱く期間は1年以上

アブラガニのメスは、卵を腹に付けて12〜14か月抱き続けます。抱卵が1年を超えるので次の産卵の時期には間に合わず、多くのメスは1年おきに産卵します。この点で、毎年産卵するタラバガニとは大きく異なります。

卵がかえり始めると、メスは約29日かけて少しずつ幼生を放します。その数は平均で約11万匹にのぼります。日本での研究では、メス1匹あたり平均12万匹という値も出ています。

5段階の幼生を経て海底へ

約10日ずつ過ごす4つのゾエア期

かえったばかりの幼生はゾエアと呼ばれ、海中を漂いながら4つの段階を経て育ちます。1段階はそれぞれ約10日で、水温が低いほど長くかかります。かえってから60時間、つまり3日足らずのうちに餌を見つけないと、その後の脱皮がうまく進まなくなります。

透き通った体をしたアブラガニのゾエア幼生
NOAA, Public domain, via Wikimedia Commons

カニの形になって海底を探す5段階目

5段階目に入ると、幼生はもう餌を食べません。グラウコトエと呼ばれるこの時期の姿は、小さなカニに近い形です。腹を尾のように使って泳ぎながら、住む場所に合う海底を探します。孵化から2.5〜4か月たった7月から9月上旬に、海底に降ります。

アラスカで最も希少なキングクラブ

1981年に最盛期、1999年から漁が止まる

ベーリング海東部でのアブラガニ漁は、1960年代半ばに始まりました。1981年には漁獲量が約6,000トンに達し、最盛期を迎えました。その後は数が減り、プリビロフ諸島では1988年に禁漁になりました。

1990年代後半に3年間だけ漁が再開されましたが、1999年に再び禁漁となりました。以来この海域を狙った漁は行われていないものの、プリビロフ諸島の群れは少ないままです。アラスカ州魚類野生生物局は、アブラガニをアラスカで最も希少なキングクラブとしています。

「タラバガニ」と表示された不当表示事件

日本では、アブラガニはタラバガニより安い値段で取引されます。この価格差が、アブラガニを「タラバガニ」と偽って売る問題につながりました。公正取引委員会は2004年度、アブラガニに関わる不当表示に対し、表示をやめるよう命じる排除命令を出しています。新聞報道によると、対象は百貨店などでした。

カニ【総合】
横歩きや大きなはさみで知られるカニの仲間を、まとめて紹介します。10本のあし・エラ呼吸・脱皮などの体のしくみから、カラッパ・ワタリガニ・シオマネキなど科ごとの代表種、タラバガニがヤドカリの仲間である話まで、日本のカニを図鑑としてまとめます。

参考

画像出典

タイトルとURLをコピーしました