タラバガニは、脚を広げると1mを超える大きな甲殻類です。「カニの王様」とも呼ばれる高級な食材ですが、本当のカニではなく、ヤドカリに近い仲間として知られています。冷たい北の海に住む、力強い姿をした生き物です。
分類と学名
タラバガニは、エビやカニと同じ十脚目のなかの、タラバガニ科に含まれます。名前に「カニ」と付きますが、分類のうえでは、ヤドカリと同じ「異尾類(いびるい)」の仲間です。この仲間には、ヤドカリのほか、木に登るヤシガニなども含まれます。
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:節足動物門 Arthropoda
- 綱:軟甲綱 Malacostraca
- 目:十脚目 Decapoda
- 下目:異尾下目 Anomura(ヤドカリの仲間)
- 科:タラバガニ科 Lithodidae
- 種:タラバガニ Paralithodes camtschaticus
和名・英名
- 和名:タラバガニ
- 英名:Red king crab(赤い王のカニ)
名前の由来
「タラバ」は、「鱈場(たらば)」からきています。魚のタラがとれる漁場で、いっしょにとれることが名前のもとになりました。英名の king crab は「カニの王様」という意味で、その大きさにちなみます。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 脚を広げると1.5m前後。大きいもので体重10kg以上 |
|---|---|
| 分布 | 北太平洋(ベーリング海・オホーツク海など)。バレンツ海にも移入 |
| 生息環境 | 冷たい海の、水深200mより深い砂や泥の底 |
| 食べ物 | 貝・ゴカイ・ウニ・小動物など(雑食) |
| 寿命 | 20年をこえることもある |
| 日本での位置づけ | 高級食材(多くは輸入) |
カニではなくヤドカリの仲間
タラバガニは、名前も見た目もカニそのものです。ところが分類のうえでは、カニではなくヤドカリに近い仲間になります。その証拠は、体のつくりにあらわれています。甲羅の幅は25cmほどにもなり、甲羅や脚には、するどいトゲがびっしり並びます。生きているときの体は、赤黒い色や、こげ茶色をしています。

あしは何本?
見えるあしは8本
本当のカニは、大きなハサミ2本と歩くあし8本の、あわせて10本のあしをもちます。ところがタラバガニは、大きなハサミ2本と歩くあし6本の、あわせて8本しか見当たりません。この「あしが8本に見える」ことが、ヤドカリの仲間である大きな手がかりです。左右のハサミは大きさが違い、右のハサミのほうが大きく、硬いものをくだくのに使われます。
かくれた5対目のあし
小さなあしは、なくなったわけではありません。最後の1対のあしは、ごく小さくなり、甲羅の中にたたまれています。この小さなあしは、えらをそうじするなどの役目をもつとされます。あしの一部が小さくなるのは、ヤドカリの仲間に見られる特徴です。
※ 異尾類は、ヤドカリのようにあしの一部が小さかったり、体が左右で対称でなかったりする甲殻類のグループです。ヤシガニやアサヒガニも、カニに見えて異尾類の仲間です。
ふんどしと体のつくり
左右がゆがんだふんどし
カニの腹の下には、折りたたまれた腹部があり、「ふんどし」と呼ばれます。本当のカニのふんどしは、左右がきれいに対称です。いっぽうタラバガニのふんどしは、左右がゆがんだ形をしています。ハサミの大きさが左右で違うことともあわせて、体が左右で対称になっていません。
ヤドカリからの進化
この左右のゆがみは、貝殻に体を合わせて暮らすヤドカリの、体のつくりの名残と考えられています。大昔、殻を背負う仲間から、殻をはなれて大きく育つように進化したとみられています。カニのような姿になっても、ヤドカリだったころの体のつくりが、今も残っているわけです。
ズワイガニとの違い
タラバガニは、同じ高級ガニのズワイガニとよく比べられます。この二つは、そもそも分類からして違う生き物です。
見た目でわかる違い
ズワイガニは、本当のカニの仲間です。あしが細くて長く、10本のあしが見えます。いっぽうタラバガニは、あしが太くてトゲが多く、見えるあしは8本です。体もタラバガニのほうが大きく、脚を広げた大きさはズワイガニを上回ります。ならべて見ると、脚の太さやトゲの多さで見分けられます。タラバガニの脚は、太いものでは大人の親指ほどの太さがあります。
味とカニミソの違い
味にも違いがあります。タラバガニは太い脚に身がたっぷりつき、食べごたえのある味です。ズワイガニは、身が柔らかく、あまみが強いとされます。また、こくのある「カニミソ」を楽しめるのはズワイガニで、タラバガニのミソは食用にはあまり向きません。これも、タラバガニがカニと違う仲間であることと関わっています。
似た者どうし、アブラガニ
タラバガニによく似たカニに、アブラガニがいます。同じタラバガニ科の仲間で、見た目がよく似ていますが、値段は安めです。そのため、タラバガニと偽って売られることが問題になったこともあります。見分けるめやすは、甲羅の中央にあるトゲの数です。タラバガニは6本、アブラガニは4本とされます。なお、同じタラバガニ科には、根室の名物として知られる花咲ガニもいます。
北の海での暮らし
タラバガニは、冷たく暗い深い海で暮らしています。ふだんの生態には、まだ分かっていないことも多く残されています。

冷たい深海に住む
タラバガニは、水温が0℃前後という、とても冷たい海に住んでいます。ふだんは、水深200mより深い砂や泥の底で暮らします。貝やゴカイ、ウニなど、海底の小さな生き物を食べる雑食です。季節によって、浅い場所と深い場所のあいだを移動することも知られています。長い触角と、柄の先についた目で、暗い海底のようすを探ります。野生では、タラなどの魚や、アザラシに食べられます。
卵と子、脱皮
メスが卵を抱く
メスが一度に抱える卵は、数万から十数万にもなります。これらの卵を、メスは腹の下に抱えて守るとされます。卵からかえった小さな幼生は、海の中をただよいながら育ちます。何度か脱皮をして、数か月かけて大きくなるとされます。やがて海底におりた稚ガニは、たがいに集まって、かたまりのような群れをつくることがあります。これは、外敵から身を守るためと考えられています。繁殖の時期には、大人が浅い場所へ向かって、列をつくるように歩く姿も見られます。
脱皮して大きくなる
タラバガニは、硬い殻を脱ぎかえる脱皮をくり返して大きくなります。脱皮では、古い殻をそのまま残し、体だけが抜け出します。脱皮の直後は殻が柔らかく、外敵におそわれやすい時期です。大きく育つには長い年月がかかり、20年をこえて生きる個体もいます。
人とのかかわり
タラバガニは、その大きさから、世界で高く取引される食材です。日本の食卓にも、冬の味覚として親しまれています。

高級食材としてのタラバ
タラバガニは、king crab の仲間のなかでも、とくに高い値で取引されます。日本で食べられるものの多くは、ロシアやアラスカなどからの輸入品です。北海道でも水あげされますが、その量は多くありません。とくに脚の太い大型のものには、高い値がつきます。漁は、海底に沈めたかごでとる「かご漁」などでおこなわれます。太い脚の身は、ゆでたり焼いたりして食べられます。生きているときは赤黒い色ですが、ゆでると鮮やかな赤色に変わるのが特徴です。
バレンツ海への移入
タラバガニは、1960年代に、旧ソ連によってヨーロッパ北部のバレンツ海へ持ちこまれました。新しい漁場をつくる目的でしたが、その後に数が大きくふえ、もとからいた生き物への影響が心配されています。いっぽうで、貴重な漁業資源にもなっており、増えすぎないよう漁で数を調整する取り組みも行われています。人が生き物を運ぶことが、思わぬ結果をまねいた例の一つです。
関連ページ



参考
- Red king crab(en.wikipedia.org)分類・大きさ・生態・移入・あしのつくり
- タラバガニ(ja.wikipedia.org)異尾類・アブラガニとの見分け・名前の由来
- NOAA Fisheries「Red king crab」分布・生活史
画像出典
- アイキャッチ:Erin Fedewa/NOAA Fisheries, Public domain, via Wikimedia Commons(Red king crab)
- 大きさの写真:Haddock L, U.S. Fish and Wildlife Service, Public domain, via Wikimedia Commons(Red king crab)
- 海底の写真:Sasha Isachenko, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(Paralithodes camtschaticus)
- ゆでたタラバガニ:Tatters, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons(Paralithodes camtschaticus on a plate)


