イソガニ

甲殻類・軟体動物

イソガニは、日本各地の岩場や石の多い海岸で最もよく見られるカニの一つです。石の下に隠れて暮らし、海藻も食べますが、小さな貝などの動物を好みます。原産は北西太平洋ですが、船に運ばれてアメリカやヨーロッパの海岸にも広がり、外来種として問題になっています。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:節足動物門 Arthropoda
  • 綱:軟甲綱 Malacostraca
  • 目:十脚目 Decapoda
  • 下目:短尾下目(カニ下目) Brachyura
  • 科:モクズガニ科 Varunidae
  • 属:イソガニ属 Hemigrapsus
  • 種:イソガニ Hemigrapsus sanguineus (De Haan, 1835)

和名・英名

  • 和名:イソガニ(磯蟹)
  • 英名:Asian shore crab/Japanese shore crab

イワガニ科からモクズガニ科へ

イソガニは、以前の分類ではイワガニ科に入れられていました。現在は、川と海を行き来するモクズガニと同じモクズガニ科に分けられています。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ甲羅の幅は25mmほど(500円玉ほど)。まれに38mmに達する
分布原産地はロシア沿海地方(ウラジオストク付近)のピョートル大帝湾から香港までの北西太平洋。日本では北海道以南の各地
生息環境岩や石の多い海岸の潮間帯(潮の満ち引きで出たり沈んだりする場所)と、そのすぐ下の浅い海
食べ物雑食
保全状況IUCN:未評価(NE)。北アメリカ・ヨーロッパなどでは外来種

物陰に潜みやすい平たい体

やや平たく滑らかな甲羅

体つきはやや平たく、甲羅の表面はほぼ滑らかです。左右の縁には、目の外側の角を含めて3本の歯のような突起が並びます。甲羅は緑灰色と紫のまだら模様で、脚にも同じ2色の横縞が入り、腹側はほとんど白色です。平たい体は石の下に潜むのに向いていて、隠れていた石が動かされると素早く走り出し、別の隙間へ逃げ込みます。

オスのはさみの関節にある袋

はさみは左右同じ大きさで、オスでは大きく発達し、関節に柔らかい袋があります。メスのはさみは小さく、この袋もありません。

岩場の潮間帯での暮らし

海水の影響が強い岩と石の海岸

外洋に面した海岸でも内湾でも見られ、川の水が混じる汽水域にも住みます。ただし多いのは海水の影響が強い場所で、塩分の薄い所にはほとんどいません。隠れ場所のない砂や泥の場所にもいませんが、石・カキの殻・コンクリートの人工物があれば、その陰に潜みます。干潮時には、岩の上で活動する姿も見られます。

動物を好む雑食

雑食で、海藻・小魚・ゴカイ・貝類などを食べますが、海藻より動物を好みます。特によく食べるのは、イガイ(ムール貝の仲間)や巻貝、ヨコエビのような小さな無脊椎動物(背骨のない動物)です。

一方、イソガニ自身は鳥やクロダイ、タコなどに狙われます。イソガニを含む岩場のカニの腹には、ウンモンフクロムシという寄生生物が付くことがあります。

春から夏に卵を抱くメス

日本での繁殖期は4月下旬から8月で、この時期には卵を抱えたメスが見られます。1回に産む卵は最大5万個ほどで、1年に3〜4回産卵することもあります。

卵からかえった幼生はプランクトンとして海を漂い、16〜25日ほどの間に何回か脱皮します。その後、カニに近い形のメガロパ幼生を経て、海底に降りて小さなカニになります。漂う期間が長いため、幼生は発育の間に遠くまで運ばれることがあります。

海を渡って広がる外来種

北アメリカ・ヨーロッパ・オーストラリアへ

原産地の外で初めて見つかったのは、1988年のアメリカ・ニュージャージー州です。幼生は、船体の付着物や、船が重しとして積む海水(バラスト水)に混じって運ばれたと考えられています。その後、北アメリカの大西洋岸ではメイン州からノースカロライナ州まで広がりました。

ヨーロッパでは、1999年にフランスのル・アーヴルとオランダで見つかりました。北海の沿岸やイギリス、スウェーデンにも広がっています。2020年にはオーストラリアのポートフィリップ湾で確認され、ビクトリア州では定着した種として扱われています。

容器に集められたたくさんのイソガニ(外来種として広がった地域で撮影)
Mikeybpt, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

ほかのカニを押しのける急な広がり

侵入先では分布を急速に広げ、競争相手のカニを広い範囲で押しのけてきました。数が多い場所ほど、食べる物の幅が広がることも分かっています。餌をめぐる競争が、食べ物の選び方を変えていると考えられています。

一方、侵入先では甲殻類を食べる魚やもともと住んでいたカニが、数の多いイソガニを食べるようになった例もあります。広がりを抑える有効な手段は、まだ確立していません。

よく似たカニとの見分け方

磯に住む似た姿のカニ

イソガニと見た目の近いカニは、同じ磯に何種類もいます。主な見分けの手掛かりは次のとおりです。

種大きさ(甲羅の幅)見分けの手掛かり
イソガニ25mmほどオスのはさみの関節に柔らかい袋。甲羅は緑灰色と紫のまだら
ケフサイソガニ30mmほどオスのはさみの関節に毛の束。腹側に小さな黒い点が散らばる
ヒライソガニ25mmほど甲羅が膨らまず、ごく平たい。体の色や模様が個体ごとに大きく違う
アカイソガニ25mmほど丸みのある甲羅と赤い体。波しぶきのかかる高い場所に住み、海中にはほとんど入らない

ケフサイソガニには、よく似たタカノケフサイソガニがいます。長く同じ種と混同されていましたが、体の形と遺伝子の違いから2005年に別種とされました。

磯遊びと飼育、釣り餌

日本の岩場で数の多いカニ

日本では岩や石のある海岸に普通に住み、数多く見られます。磯遊びでは、イワガニやオウギガニの仲間とともに、潮が引いた岩場の石の下からよく見つかります。

飼育の条件と生命力

海のカニとしては比較的飼育しやすく、空気を送る装置を使って水をきれいに保った水槽で飼われます。ただし汚れた海水や真水の中では、長くは生きられません。一方で生命力は強く、えらがぬれる程度の海水と適度な温度があれば、水の外でもしばらく生きられます。

釣り餌としての利用

クロダイやイシダイなどの釣り餌として使われ、販売もされています。食用にされることはあまりありませんが、味噌汁などの具にされることがあります。

カニ【総合】
横歩きや大きなはさみで知られるカニの仲間を、まとめて紹介します。10本のあし・エラ呼吸・脱皮などの体のしくみから、カラッパ・ワタリガニ・シオマネキなど科ごとの代表種、タラバガニがヤドカリの仲間である話まで、日本のカニを図鑑としてまとめます。

参考

画像出典

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