イルカ【総合】

哺乳類

イルカは、海にすむ哺乳類です。魚のように見えますが、クジラの仲間で、肺で息をします。高い知能と、超音波で周りを「見る」能力を持ちます。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:哺乳綱 Mammalia
  • 目:鯨偶蹄目(げいぐうていもく)Cetartiodactyla
  • 下目:クジラ類 Cetacea
  • 科:マイルカ科 Delphinidae ほか
  • 代表種:バンドウイルカ Tursiops truncatus

和名・英名

  • 和名:イルカ(漢字で「海豚」)
  • 英名:Dolphin(代表種バンドウイルカは Bottlenose dolphin)

別名・名前の由来

「イルカ」は、一つの種の名前ではありません。クジラの仲間のうち、小型のものをまとめて呼ぶ通称です。漢字では「海豚」と書き、海にすむブタのような生きもの、という見立てからきています。もっとも身近な種がバンドウイルカで、「ハンドウイルカ」とも呼ばれます。水族館でおなじみのイルカの多くが、この種です。

大きさ・分布などの基本データ

大きさバンドウイルカで体長 約2〜4m、体重 約150〜300kg(種によって差が大きい)
分布世界中の暖かい海〜温帯の海(北極・南極の周辺をのぞく)
生息環境海(沿岸〜外洋)。一部には川にすむ仲間もいる
食べもの肉食(魚・イカなど)
寿命20〜40年ほど
保全状況バンドウイルカは IUCN: LC(軽度懸念)。ただし種による

魚ではなく、クジラの仲間

水面に上がってきたバンドウイルカの頭部
頭のてっぺんの噴気孔で息をする(NASA, Public domain, via Wikimedia Commons

肺で息をする哺乳類

イルカは魚のような姿をしていますが、魚ではありません。私たちと同じ、肺で息をする哺乳類です。エラはなく、頭のてっぺんにある「噴気孔(ふんきこう)」という鼻の穴で呼吸します。だから、ときどき水面に上がって空気を吸わなければなりません。子どもは卵ではなくお腹から生まれ、母乳を飲んで育ちます。海にすみながらも、体のつくりは陸の動物に近い仲間です。

イルカとクジラの違いは「大きさ」

イルカとクジラは、同じクジラの仲間です。はっきりした境目はなく、体がだいたい4mより小さいものを「イルカ」、大きいものを「クジラ」と呼び分けているだけです。そのため、同じ種でも呼び名が変わることがあります。水族館の人気者シャチも、いちばん大きなイルカの仲間です。

超音波で「見る」エコーロケーション

水中を泳ぐバンドウイルカの群れ
Kiloueka, Public domain, via Wikimedia Commons

音のはね返りで場所をつかむ

イルカは、音を使って周りをさぐります。「カチカチ」というクリック音を出し、それが物にあたってはね返ってくるのを聞き取ります。はね返りのようすから、獲物の位置や形、まわりの地形までつかめます。これを「エコーロケーション(反響定位)」といいます。にごった海や光のとどかない深みでも、音があれば「見る」ことができます。ひたいのふくらみは、音をまとめて発射するレンズの役目をしています。

仲間を「名前」で呼ぶ

イルカは、クリック音だけでなく、口笛のような「ホイッスル」という音も出します。一頭ごとに、自分だけの決まったホイッスルを持ちます。これが「名前」のように使われ、仲間はその音を覚えて呼び交わします。名前にあたる音を持つ動物は、自然界でもごくわずかです。

とても賢い動物

鼻先でボールをあやつるバンドウイルカ
芸をすばやく覚える賢さ(H. Zell, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

道具を使い、鏡で自分が分かる

海綿を道具にして魚をさがす

イルカは体の割に脳が大きく、その賢さはチンパンジーをうわまわるともいわれます。一部のイルカは、鼻先に海綿(かいめん)をかぶせます。それをクッションがわりにして、砂の底や岩のすき間にかくれた魚をさがします。道具を使う知恵の一例です。この技は、母から子へと受けつがれていくことも分かっています。

鏡にうつる自分が分かる

イルカは、鏡にうつった姿を「自分」だと理解できる、数少ない動物の一つです。これは、自分という存在を意識できる高い知能の証拠だと考えられています。ヒトやチンパンジー、ゾウなど、ごく限られた仲間しか持たない力です。

人とともに歩んできた

芸をすばやく覚えることから、イルカは水族館のショーで活躍してきました。昔はテレビ番組「わんぱくフリッパー」で世界的な人気者になりました。その賢さから、海の中の機雷(きらい)を見つける訓練を受けたり、漁師と協力して魚を網へ追いこんだりする例も知られています。

体のつくり

水面から弧をえがいて跳ぶバンドウイルカの全身
JUAN ROMERO, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

ヒレの中は「指の骨」

イルカの胸のヒレ(胸びれ)の中を見ると、人の手のような指の骨がならんでいます。これは、イルカの祖先がもともと陸を歩く動物で、その手足が海の暮らしに合わせてヒレに変わった名残です。背中の背びれや、水をかく尾びれには骨がなく、こちらは泳ぐために新しく発達した部分です。魚そっくりの体の中に、陸の動物だったころの名残が残っています。

眠りながら泳ぐ

イルカは、自分で意識して息をしています。そのため、ぐっすり眠ってしまうと呼吸を忘れておぼれてしまいます。そこでイルカは、脳を右と左で半分ずつ交代で休ませる、変わった眠り方をします。片方の脳が起きているあいだは、片目を開けたまま泳ぎ続けられます。こうして、息つぎを続けながら眠ります。

子育てと群れ

海面に並んで泳ぐバンドウイルカの群れ(ポッド)
「ポッド」と呼ばれる群れで暮らす(A.Baihaqi, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

「ポッド」という群れで暮らす

イルカは、「ポッド」と呼ばれる群れをつくって暮らします。群れの仲間とは、鳴き交わしながら連らくを取り合います。ときには仲間と協力して、魚の群れを浅瀬や水面に追いこみます。一頭では難しい狩りも、力を合わせて成功させます。

尾から生まれる赤ちゃん

妊娠期間はおよそ12か月で、ふつう1頭の子を産みます。海の中での出産では、赤ちゃんは尾から先に生まれてきます。頭から生まれると、出てくる途中でおぼれてしまうためだと考えられています。生まれた子は、数年のあいだ母乳を飲みながら、群れの中で泳ぎ方や狩りのしかたを覚えていきます。

海の中で暮らすイルカに、陸でいちばん近い親せきはカバだと考えられています。

カバ
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会える場所と豆知識

イルカは、全国の水族館で会えます。沖縄の美ら海水族館をはじめ、各地でジャンプなどの活発な姿を見られます。海に出るホエールウォッチングのツアーで、野生のイルカに出会えることもあります。また、若いイルカがフグをそっとつつき合って遊ぶ姿も観察されています。フグの毒で軽く酔っているのではないか、という説もあります。

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「イルカ」という呼び名は、実は生物分類の正式なグループ名ではなく、クジラ目のうち体長4〜5mより小さい、比較的小型のハクジラ類をまとめて指す慣用の名前です。マイルカ科(Delphinidae)を中心に、ネズミイルカ科(Phocoenidae)、カワイルカ類(アマゾンカワイルカ科、ラプラタカワイルカ科など複数の科)が「イルカ」と呼ばれる仲間に含まれます。逆に、マイルカ科でありながら大型に育つシャチやゴンドウクジラ類は「クジラ」と呼ばれるなど、和名は必ずしも分類とは一致しません。

クジラ偶蹄目(Cetartiodactyla)への統合

クジラ・イルカのなかまは、かつて独立した「クジラ目(Cetacea)」として扱われていましたが、1990年代以降の分子系統解析(DNA解析)で、じつはカバ科と姉妹群であることが明らかになりました。この結果を受けて、現在ではウシやシカと同じ偶蹄目にクジラ類を含めた「クジラ偶蹄目(Cetartiodactyla)」という枠組みが主流になっています。見た目からは想像しにくい話ですが、遺伝子レベルではイルカにいちばん近い陸の動物はカバで、その次にウシ・シカ・ラクダなどが続くという、大きな分類の書き換えが行われた例として教科書にも登場する話題です。

参考

  • IUCN Red List:Tursiops truncatus(LC・分布と保全状況)
  • Wikipedia(英語版)「Bottlenose dolphin」(分類・知能・道具使用・生態)
  • Animal Diversity Web:Tursiops truncatus(形態・繁殖・行動)

画像出典

アイキャッチ画像: Giles Laurent, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(本文中の写真は各キャプションに出典を記載)

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