アフリカヤギは、アフリカ大陸で古くから飼われてきた在来の家畜ヤギをまとめて呼ぶ名前です。特定の一品種を指すのではなく、地域ごとにさまざまな系統がふくまれます。乾燥したきびしい土地でもたくましく生き、木に登って実を食べるヤギがいることでも知られています。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界
- 門:脊索動物門(せきさくどうぶつもん)
- 綱:哺乳綱(ほにゅうこう)
- 目:鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)
- 科:ウシ科
- 属:ヤギ属(Capra)
- 種:ヤギ Capra hircus(家畜ヤギ)
和名・英名
- 和名:アフリカヤギ(アフリカ在来ヤギの通称)
- 英名:決まった1語はなく、代表的な系統は West African Dwarf goat(西アフリカ小型種)
「アフリカヤギ」という呼び方について
「アフリカヤギ」は、生物としては家畜ヤギ(Capra hircus)に含まれます。ただしこれは一つの品種の名前ではなく、アフリカ各地の在来ヤギを指す通称です。西アフリカの小型のヤギから乾燥地帯の大型のヤギまで、数多くの地方系統があります。それらをひとまとめにした呼び方が「アフリカヤギ」です。
基本データ
| 大きさ | 体重 約20〜60kg(系統によって幅が大きい) |
|---|---|
| 分布 | アフリカ大陸の各地(サハラ以南〜北アフリカ) |
| すみか | 草原・かんそう地・農村・山地 |
| 食べもの | 草・木の葉・かたい植物など(草食) |
| 飼い方 | 放牧・遊牧・農家での飼育 |
| 用途 | 乳・肉・毛・皮など |
体の大きさや毛色は系統によって大きく異なります。共通しているのは、少ないえさや水でも生きられる、たくましさです。
「アフリカヤギ」とはどんなヤギか

一つの品種ではない
アンゴラヤギやザーネン種のように名前のついた品種とは違い、「アフリカヤギ」は正式な一品種ではありません。アフリカでは何千年ものあいだ、人々が土地に合わせてヤギを飼い、その地域ごとに独自の系統が生まれてきました。それらをまとめて呼ぶときに使われるのが、この通称です。
見た目のさまざまさ
体格も毛色もいろいろ
アフリカヤギは、体格も毛色も実に多様です。乾燥地のヤギは小柄で引きしまった体つきのものが多く、湿った地域のヤギはがっしりしている傾向があります。角の形も、短く曲がったものから長くねじれたものまでさまざまです。毛色は白・黒・茶・灰色や、それらのぶち模様など、地域ごとに幅があります。
小さな在来種と、その子孫たち
代表的な系統の一つが、西アフリカにすむ小型のヤギ(西アフリカ小型種)です。体重20〜30kgほどと小さく、しめった地域の病気に強いのが特徴です。オスもメスも角を持ち、オスにはあごひげがあります。毛は短くてかたく、こげ茶色に黒い差し色が入ったものが多く見られます。また、南アフリカで肉用に改良された「ボーア種」のように、アフリカの在来ヤギをもとにして世界に広まった品種もあります。
じつは、この西アフリカ小型種は、世界のペット用ヤギのご先祖でもあります。動物園やふれあい牧場で人気の小さなヤギ「ピグミーゴート」や「ナイジェリアンドワーフ」は、アフリカから運ばれたこの小型ヤギをもとに、各国で育てられた子孫です。「アフリカヤギ」という通称の中には、こうした多くの系統がふくまれています。
木に登るヤギ

アルガンの木に登って実を食べる
アフリカヤギで世界的に有名なのが、北アフリカのモロッコで見られる「木に登るヤギ」です。この地方には、アルガンという実のなる木が生えています。乾いた土地では地面のえさが少ないため、ヤギたちはえさを求めて器用に木へ登り、枝の上に立って実や葉を食べます。ヤギは本来、岩場を登るのが得意な動物です。その身軽さを生かし、細い枝の上でも上手にバランスを取ります。
一本の木に何頭ものヤギが登る光景は、モロッコの名物として観光客にも人気です。ただし、道ぞいの一部の場所では、人がヤギを木に登らせて見せていることもあるといわれます。
アルガンオイルとのつながり
アルガンの実からは、美容や料理に使われる貴重な「アルガンオイル」がとれます。かつては、ヤギが実を食べて外に出したかたい種を集め、その中身から油をしぼる方法も使われていました。木に登るヤギは、この地方の産業とも関わりの深い動物です。
きびしい土地を生きる

乾燥と粗食に強い
アフリカヤギの大きな強みは、きびしい環境に耐える力です。水が少ない土地でも長く生きられ、ほかの家畜が食べないような、かたい草やとげのある低木の葉まで食べられます。えさの乏しい乾燥地でも育つため、砂漠や半さばくの周りでも飼うことができます。
ヤギは、地面の草を食べる牛とは違い、少し高い位置の木の葉や芽を好んで食べる性質があります。後ろ足で立ち上がって枝に口をのばすこともあり、ほかの家畜と食べるものが重なりにくいのも利点です。木に登るヤギも、この「高いところの葉を食べる」性質を、いっそう極端にしたものといえます。
子をたくさん産んでふえる
アフリカヤギがたのもしいのは、体の丈夫さだけではありません。西アフリカ小型種は、生まれてから1年〜1年半ほどで子を産めるようになります。1回のお産で双子を産むのがふつうで、三つ子も珍しくありません。お産の間隔は平均で7か月ほどと短く、条件がよければ1年に複数回産むこともあります。数がふえやすいことも、貧しい土地の家庭にとって心強い長所なのです。
人の暮らしを支える家畜
アフリカの多くの地域で、ヤギは人々の暮らしを支える大切な家畜です。乳や肉は日々の食べものになり、毛や皮は衣類や道具の材料になります。えさや手間があまりかからず、乾いた土地でも飼えるため、農業がむずかしい地域でも貴重な財産とされてきました。アフリカヤギは、その土地の暮らしと深く結びついた動物なのです。
豆知識:眠り病に強いヤギ
西アフリカのしめった地域には、ツェツェバエという虫が運ぶ「眠り病(トリパノソーマ症)」という、家畜をおそう病気があります。牛や大型の家畜の多くはこの病気に弱く、飼うのがむずかしい土地が広がっています。ところが西アフリカ小型種のヤギは、この病気に強い体質を持つことが知られています。さらに、おなかに寄生する虫にも強いことが報告されており、薬にたよりにくい環境でも育てやすいヤギです。ほかの家畜が育ちにくい土地でも生き残れることが、この小さなヤギがアフリカで広く飼われてきた理由の一つなのです。

参考
- Porter ほか (2016)『Mason’s World Encyclopedia of Livestock Breeds and Breeding』(西アフリカ小型種の体格・地方系統・派生品種)
- R. T. Wilson (1991)『Small Ruminant Production and the Small Ruminant Genetic Resource in Tropical Africa』FAO(分布・眠り病への耐性)
- Wikipedia(英語版)「West African Dwarf goats」(特徴・繁殖・耐病性)
- Wikipedia(英語版)「Argania(アルガンの木)」(木に登るヤギとアルガンオイル)
画像出典
アイキャッチ画像: Elena Tatiana Chis, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(本文中の写真は各キャプションに出典を記載)


