チョウチョウウオ

魚類

チョウチョウウオは、黄色い体と目を通る黒い帯が目立つ海の魚です。仲間の中でも特に北の海まで分布し、夏から秋には本州の磯やタイドプールで幼魚が見られます。

スポンサーリンク

分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:条鰭綱 Actinopterygii
  • 目:ニザダイ目 Acanthuriformes(従来はスズキ目とされてきた)
  • 科:チョウチョウウオ科 Chaetodontidae
  • 属:チョウチョウウオ属 Chaetodon
  • 種:チョウチョウウオ Chaetodon auripes

和名・英名

  • 和名:チョウチョウウオ
  • 英名:Oriental butterflyfish
  • 別名:ナミチョウ(並チョウ)
  • 沖縄での呼び名:カーサー

江ノ島での呼び名から付いた和名

和名は、神奈川県の江ノ島での呼び名から来ています。サンゴ礁の中を泳ぐ様子を、花畑を飛ぶ蝶に見立てた名前とされます。仲間と区別するため、ダイバーや採集家の間では「ナミチョウ(並チョウ)」とも呼ばれます。

学名は1901年にアメリカの魚類学者ジョーダンとスナイダーが名付けたもので、もとになった標本は長崎で採られました。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ全長約20cm
見た目体は黄色く、体側に暗色の細い縦線が並ぶ。目を通る黒い帯と、その後ろの白い帯がある
分布日本(茨城県以南の太平洋岸・日本海・琉球列島・小笠原諸島など)から、韓国南西部・中国南部・ベトナムまで
生息環境水深1〜30mの岩礁やサンゴ礁。夏は本州の磯やタイドプールにも現れる
食べ物雑食。小型の甲殻類・ゴカイ・藻類・カイメンなど
繁殖卵生。繁殖期にはペアを作る
保全状況IUCN:LC(低懸念)

チョウチョウウオ科で最も北まで広がる種

茨城県以南に定着し、記録は津軽海峡まで

チョウチョウウオは、チョウチョウウオ科の中で最も北まで生息域を広げた種とされます。温帯の海では仲間の中で最も普通に見られるチョウチョウウオ類で、水温10℃の低温にも強い種です。

太平洋側では茨城県以南、日本海側にも分布し、記録は宮城県や津軽海峡にまで及びます。

黒潮に乗って関東の磯へやってくる幼魚

岩陰にいるチョウチョウウオの幼魚。背びれに黒い目玉模様がある
Izuzuki, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

6月中旬に現れ、冬に死んでしまう稚魚

関東の海には、熱帯や亜熱帯で生まれた魚の稚魚が黒潮に運ばれてきます。横須賀市自然・人文博物館の天神島臨海自然教育園では、6月中旬にチョウチョウウオの稚魚が現れます。こうした魚は秋まで磯で見られますが、冬の低い水温で死んでしまいます。

冬を越せずに死ぬこうした魚は、「死滅回遊魚」と呼ばれています。

和歌山では越冬し、東京湾でも11月まで

本州でも、和歌山などでは冬を越す個体が見られます。東京湾では、11月になっても生き残っているチョウチョウウオの幼魚が見つかっています。

本州中部では大きくなっても繁殖しない

本州では、チョウチョウウオの仲間の中で最も早い5月下旬から見え始め、12月下旬まで見られます。ただし本州中部の個体は、大きく育っても卵や精子を作る器官(生殖腺)が発達せず、繁殖はしていません。

目を隠す黒い帯と、幼魚だけの目玉模様

目を通る黒い帯と、その後ろの白い帯

頭には目を通る黒い帯があり、その後ろに白い帯が続きます。黒い帯は目の位置を分かりにくくし、身を守る役割があると考えられています。体は全体に黄色く、細い暗色の縦線が並びます。

幼魚は全体にオレンジ色がかっていて、成長すると黄色みが強くなります。

背びれの目玉模様は、成魚になると消える

背びれの後ろ寄りに黒い目玉模様が残る若いチョウチョウウオ
Izuzuki, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

幼魚の背びれの後ろ寄りには、黒い目玉のような模様があります。この模様は成長につれて消え、成魚には残りません。体の後ろに目玉模様があると、捕食者は頭の位置を見誤りやすくなると考えられています。

幼魚はチョウハンの幼魚とよく似ていて、見分けにくい相手です。

夜は体の色が黒ずむ

チョウチョウウオの仲間は昼に活動し、夜はサンゴや岩の陰に隠れて眠ります。夜の体の色は昼ほど鮮やかではなく、黒ずんで見えます。

骨の兜をかぶった稚魚「トリクチス」

頭が骨の板に覆われたトリクチス期の稚魚(ハタタテダイ属)の図
Albert Günther, Public domain, via Wikimedia Commons

鎧兜のように発達した頭の骨

チョウチョウウオの仲間の稚魚は、頭の周りの骨が板のように発達しています。まるで鎧兜を着けたような姿で、「トリクチス」と呼ばれます。成長すると骨の板はなくなり、親と同じような姿に変わります。

千葉県立中央博物館の海の博物館は、発達した骨が外敵から身を守るのに役立つのではないかと推測しています。

海を漂う卵と、黒潮に運ばれる稚魚

チョウチョウウオの仲間は、水に浮く卵をたくさん海中に放ちます。卵はプランクトンと一緒に流されながらかえり、稚魚はトリクチスの姿でしばらく過ごします。関東の磯に現れる稚魚も、この時期に黒潮に乗って運ばれてきたものです。

ペアで暮らす雑食の魚

甲殻類・ゴカイ・藻類を食べる雑食性

チョウチョウウオは雑食性で、海底にいる小型の甲殻類・ゴカイ・糸状の藻類・カイメンなどを食べます。同じ場所に住む仲間のシラコダイも似たものを食べ、2種が一緒に群れることもあります。

仲間には、サンゴの柔らかい部分(ポリプ)を食べる種もいます。沖縄の八重山諸島では、ヤリカタギやハナグロチョウチョウウオなどの食べるサンゴが調べられました。本種については、英語の資料にサンゴを食べるという記述がある一方、日本語の資料では藻類や小動物が挙がっています。

ペアや、数十匹の群れで泳ぐ

普段はペアで見られることが多く、時には数十匹の群れを作ります。単独で泳ぐ個体もいます。

繁殖の様子はほとんど分かっていない

繁殖期にはペアを作り、決まった相手と繁殖する一夫一妻の関係が見られるとされます。ただし繁殖行動はほとんど知られておらず、産卵の時期など詳しいことは分かっていません。

約130種いるチョウチョウウオの仲間

世界に約130種、日本近海に53種

チョウチョウウオ科の魚は、世界の暖かい海のサンゴ礁などに約130種が住み、日本近海でも53種が見られます。木の葉のように丸く薄い体で、鮮やかな色の種が多いのが特徴です。

科の学名 Chaetodontidae は、ギリシャ語の「髪の毛」と「歯」から来ています。口に毛のように細い歯が並ぶことを表したとみられます。英語では、バタフライフィッシュと呼ばれます。

ヤッコの仲間とは、えらぶたの棘で見分ける

姿がよく似たキンチャクダイ科の魚は、ヤッコの仲間とも呼ばれます。キンチャクダイ科はえらぶたに強い棘をもちますが、チョウチョウウオ科にはこの棘がありません。

稚魚の時期にも違いがあり、キンチャクダイ科やカゴカキダイ科の魚はトリクチスの時期を経ません。

チョウハンとは、体側の線の向きで見分ける

体側に斜めの帯があるチョウハン
Brian Gratwicke, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

チョウハンも目を通る黒い帯と白い帯をもち、チョウチョウウオとよく似ています。チョウチョウウオの体側には細い縦線が並ぶのに対し、チョウハンには幅の広い暗色の斜めの帯があります。さらに尾の付け根の近くには、涙のような形の黒い斑が入ります。

体長は25cmに達し、チョウチョウウオより大きくなります。

市場に出ない白身と、水族館での展示

血合いのきれいな、うま味のある白身

チョウチョウウオが鮮魚として市場に出回ることはありません。それでも食べることはでき、血合いのきれいな白身でうま味があるとされます。

見た目からは想像しにくい脂ののった白身だという評価がある一方で、時々臭みのある個体もいます。

観賞魚としては少なく、水族館の図鑑に並ぶ

水族館の水槽で泳ぐチョウチョウウオ
Totti, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

観賞魚として売られることもありますが、その数は多くありません。鳥羽水族館の「生きもの図鑑」には、チョウチョウウオのほかチョウハンやトゲチョウチョウウオなど、十数種の仲間が並んでいます。

参考

画像出典

タイトルとURLをコピーしました