ブルーギル

ブルーギルの成魚・水中での姿 硬骨魚類

ブルーギルは、体長15〜25cmになるサンフィッシュ科の淡水魚で、北米原産の外来種として日本の池や湖に広く定着しています。学名は Lepomis macrochirus。体は青灰色〜緑褐色で、鰓蓋(えらぶた)の後端に黒い斑点があり、この「青いえら(Bluegill)」が英名と和名の由来になっています。日本では特定外来生物法により、飼育・運搬・放流・販売が原則禁止されている魚です。

1960年に当時の皇太子明仁親王(現・上皇陛下)が米国訪問時に贈られた15匹が国内へ持ち込まれ、これが日本での初めての導入とされています。研究用と食用養殖の期待から一部が放流されたものの、旺盛な繁殖力と雑食性で在来のタナゴ類やモロコ類・水生昆虫を圧迫し、琵琶湖では在来魚の激減の主因の一つに数えられるまでになりました。上皇陛下ご自身が2007年に「心を痛めています」と公式発言されたことでも知られる、外来種問題の象徴的な魚です。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:条鰭綱 Actinopterygii
  • 目:スズキ目 Perciformes
  • 科:サンフィッシュ科 Centrarchidae
  • 属:ブルーギル属 Lepomis
  • 種:ブルーギル Lepomis macrochirus

和名・英名

  • 和名:ブルーギル
  • 別名:ブルーサンフィッシュ/英名 Bluegill をそのまま音訳したもの
  • 英名:Bluegill(ブルーギル)

別名と名前の由来

  • 和名「ブルーギル」:英名 Bluegill をそのまま日本語に音訳した命名。「Blue(青い)+Gill(えら)」の意味で、鰓蓋の後端にある黒〜青紫色の斑点に由来します。日本語の伝統的な魚名(〜ダイ・〜ハギ)に当てはめず、英名のカタカナ表記が定着した珍しい例です。
  • 英名「Bluegill」:鰓蓋の後端にある黒い突起(弁)が青色に見えることから。この突起はサンフィッシュ科の共通特徴で、種によって色が異なります。
  • 属名 Lepomis:古代ギリシャ語で「うろこのある鰓蓋」の意味。この属のサンフィッシュ類に共通する鰓蓋の形状に由来します。
  • 種小名 macrochirus:ラテン語で「大きな手」の意味。大きく発達した胸びれ(=手のような形)にちなむ命名です。

大きさ・生息などの基本データ

大きさ全長 約15〜25cm(最大40cm)/体重 平均100〜400g(最大2kg以上)/体高が高く「板状」の体型
体色基本色:青灰色〜緑褐色(環境で変化)/体側に7〜10本のぼんやりした暗色横帯/繁殖期のオス:喉から胸が鮮やかなオレンジ色に染まる/鰓蓋の後端に濃紺〜黒の突起(弁)/背びれ棘は硬く鋭い
分布原産地:北アメリカ東部(カナダ南部〜メキシコ北部)/移入分布:日本・韓国・欧州・南米・アフリカ・オセアニアなど世界各地/日本国内では北海道を除くほぼ全国に定着
生息環境流れの緩やかな河川中〜下流/湖沼/ため池/用水路/池・堀・城の水路など人工水域にもよく適応/水草が茂る岸辺を好む/低酸素・水温変化に強い
食性雑食性/水生昆虫・小型魚類・稚魚・魚卵・甲殻類・軟体動物・水草の芽まで幅広く食べる/在来種の卵と稚魚を大量に捕食するため生態系への影響が大きい
繁殖5〜9月に繁殖/オスが浅場の砂礫底に円形の産卵床(ネスト)を作り、複数のメスを誘引/1腹1万〜6万個の卵を産む個体もある/オスが孵化まで卵を守る子育て行動
寿命野生下 約5〜10年/飼育下では11年の記録もある
保全状況IUCN:LC(軽度懸念・原産地では普通種)/日本では2005年から特定外来生物法により飼育・運搬・放流・販売が原則禁止/琵琶湖では駆除対象
ブルーギルの成魚・黒背景で体色がわかる
USFWS Mountain Prairie, Public domain, via Wikimedia Commons(体色の詳細)

青いえらと縦帯─見た目の特徴

鰓蓋の後端の黒い弁

「ブルー」の由来

ブルーギル最大の識別点は、鰓蓋(えらぶた)の後端にある濃紺〜黒色の突起(弁状の張り出し)です。この部分が青紫色〜黒に染まり、光の当たり方によっては金属光沢の青に見えます。「青いえら=Bluegill」の英名はここに由来し、日本でもそのままカタカナ名として定着しました。同じサンフィッシュ科の他種(パンプキンシード等)にもこの突起はありますが、色が異なるため種の見分けの決め手になります。

体側の縦帯とオスの婚姻色

体側には7〜10本のぼんやりした暗色の横帯が入り、状況によって濃さが変化します。繁殖期(5〜9月)のオスは、この地味な体色に加えて喉から胸が鮮やかなオレンジ色〜赤色に染まる婚姻色を見せます。ネスト(産卵床)を守るオスはとくに派手な色になり、ペットショップの写真映えするサンフィッシュのイメージはこの繁殖期の姿から広まっています。

体高の高い「板状」の体型

体は横に平たく、体高が高い「板状」の体型が特徴です。この形は水中で瞬時に方向転換するのに向いており、水草の茂みや障害物の間で小魚や水生昆虫を待ち伏せ捕食する狩りに適応しています。同じような体型の在来種(フナ・ヘラブナ)と混同されることもありますが、鰓蓋の黒い弁と体側の縦帯で区別できます。

ブルーギル・全身の色調が分かる個体
Fredlyfish4, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons(ミシシッピ大学野外ステーション)

皇室献上の経緯と日本への定着

1960年に皇太子が持ち帰った15匹

ブルーギルが日本に初めて導入されたのは1960年で、当時の皇太子明仁親王(現・上皇陛下)が米国訪問時にシカゴ市長からプレゼントされた15匹が起点です。当初は水産研究のため水産庁に寄贈され、食用養殖の可能性が期待されました。試験養殖の過程で一部が全国の試験場に配布・放流された結果、繁殖力の強さと環境適応力によって全国の池や湖・河川に定着していきました。

上皇陛下の「心を痛めています」発言

2007年、上皇陛下(当時の天皇陛下)は全国豊かな海づくり大会の記念式典で、次のように述べられました。「50年ほど前、アメリカから、当時の皇太子であった私がブルーギルを持ち帰ってきました。(中略)持ち帰った15匹が今、日本各地に定着し、在来種を圧迫していることに心を痛めています」。この発言は皇室外来種問題への強い関心を示すものとして広く報道され、外来種の恐ろしさを社会に印象づける契機になりました。

特定外来生物への指定

ブルーギルは2005年6月1日に施行された「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」の第一次指定で特定外来生物に指定されました。以降、次の行為が原則禁止されています。

  • 飼育・栽培(学術・展示目的の許可制を除く)
  • 運搬(生きた個体の持ち歩き)
  • 販売・譲渡(有償・無償を問わず)
  • 野外への放流
  • 輸入

釣り上げたブルーギルはその場でリリースするか、持ち帰って食用にするなど「生きた状態で場所を移す」ことなく処理する必要があります。違反には個人3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。

ブルーギル・水族館展示個体
Ltshears, Public domain, via Wikimedia Commons(ルイビル動物園)

生態系への影響と駆除の取り組み

琵琶湖での被害

ブルーギルの影響が最も深刻に現れているのが琵琶湖です。1965年ごろに琵琶湖に導入された後、1980年代以降に爆発的に増加し、2000年代のピーク時には湖内魚類全体の推定資源量の半分近くを占めるまでになりました。その影響で、モロコ類(ホンモロコ・スゴモロコ)・タナゴ類・イサザなどの琵琶湖固有種や在来種が激減し、伝統漁業の水揚げも大きく減りました。滋賀県は「琵琶湖ルール」として釣り上げたブルーギル・オオクチバスの持ち帰りを条例で義務化し、湖岸に回収BOXを設置する対策を続けています。

捕食と競合の両面

ブルーギルは雑食性で、直接的に在来種の卵や稚魚を大量に食べます。同時に、水生昆虫・甲殻類・水草の芽まで幅広く餌にするため、在来の小型魚類(モロコ・タナゴなど)と食物を巡って競合します。「直接捕食+餌の奪い合い」の二重の圧力が、在来生態系にとって深刻な脅威となっています。

駆除と食用活用

駆除の取り組みは全国で行われており、駆除大会・釣り大会・回収BOX・漁業者による網掛けなどが実施されています。捕獲されたブルーギルは白身で臭みが少なく、フライ・唐揚げ・南蛮漬け・煮付けなどに向いた食材として活用が進んでいます。滋賀県では「湖魚レシピ」として学校給食に取り入れる試みや、料理店で「ビワパール」の名で商品化する取り組みも広がっており、駆除と消費を結びつけた取り組みが定着しつつあります。

ブルーギル・水中の姿
USFWS Mountain-Prairie, Public domain, via Wikimedia Commons(水中のブルーギル)

釣りと飼育─法律に基づく扱い

釣りは可能・持ち歩きはNG

ブルーギル釣り自体は禁止されていません。むしろ「駆除に協力する釣り」として推奨されており、初心者でも手軽に釣れる魚として親しまれています。ただし釣った個体を「生きたまま」他の水域に運ぶ・自宅で飼うのは違法です。琵琶湖など指定地域では条例で「その場でのリリース禁止」が定められているため、釣ったら回収BOXに入れるか、持ち帰って食用にする必要があります。

ペットとしての飼育は不可

2005年の特定外来生物指定以前は観賞魚として飼育されていた個体もいましたが、現在は個人による新規飼育はできません。既存飼育個体の継続飼育も許可制で、環境省への申請・許可が必要です。水槽内で飼うと大きく育ち攻撃性が強くなるため、他魚との混泳もほぼ不可能で、法的にも生物学的にも家庭飼育向きではない魚です。

ブルーギル・スミソニアン動物園の展示個体
David J. Stang, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons(スミソニアン国立動物園)

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