フグ

硬骨魚類

フグは、危険がせまると体をまん丸にふくらませる魚です。多くの種が、体の中にテトロドトキシンという強い毒を持っています。日本では高級な食材として親しまれますが、調理には専用の免許が必要です。世界には多くの種類のフグがいます。

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分類と学名

分類階層

  • 界:動物界 Animalia
  • 門:脊索動物門 Chordata
  • 綱:条鰭綱 Actinopterygii
  • 目:フグ目 Tetraodontiformes
  • 科:フグ科 Tetraodontidae(トラフグなど)
  • おもな属:トラフグ属 Takifugu など

和名・英名

  • 和名:フグ(河豚)
  • 英名:Pufferfish(ふくらむ魚)

名前の由来

フグ科の学名 Tetraodontidae は、ギリシャ語の「4つの歯」に由来します。上下に2枚ずつ、くちばしのような丈夫な歯を持つことにちなみます。漢字の「河豚」は、ふくらんだ姿やブーブーと鳴く声を豚に見立てた名とされます。英名の pufferfish も、「ふくらむ魚」という意味です。

大きさ・分布などの基本データ

大きさ種による。多くは数cm〜数十cm(50cmを超える種も)
分布世界の暖かい海が中心。淡水にすむ種もいる
生息環境浅い海・岩礁・干潟など。一部は川や湖
食べもの貝・エビ・カニ・藻など(丈夫な歯で殻を割る)
多くの種がテトロドトキシン(おもに肝臓・卵巣)
人との関わり日本では高級食材。調理には免許が必要

なぜふくらむのか

水を吸ってふくらんだフグ
水を吸ってまん丸にふくらんだフグ(James St. John, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons)

水を吸って、ボールになる

胃をふくらませるしくみ

フグは、口から一気に水を吸いこんで体をふくらませます。ふくらむのは胃の一部で、ゴム風船のようによく伸びる作りです。フグには肋骨(ろっこつ)や腰の骨がなく、体を大きく広げられます。数倍の大きさのボールになることで、敵に食べられにくくなります。多くの種は皮ふにとげを持ち、ふくらむと外に立つものも。

危険が去れば、もとに戻る

ふくらんだフグは、危険が去ると水をはき出してもとに戻ります。ふくらんだままになってしまうわけではありません。ただし、水の外で空気を吸いこんでふくらむと、うまく戻れないことがあります。むやみに驚かせてふくらませるのは、フグの体に負担をかける行為です。ふくらむのは、あくまで最後の防御手段なのです。

泳ぎが遅いのを補う武器

フグは、体のわりに泳ぎが上手ではありません。小さなひれを細かく動かし、ゆっくりと泳ぎます。すばやく逃げられないぶん、ふくらむ体と毒が身を守る武器になります。動きは遅くても、その場で向きを変えるような細かい動きは得意です。じっくり獲物に近づいて食べる暮らしに、この泳ぎ方は合っています。

強い毒、テトロドトキシン

小さなフグの顔のアップ
大きな目が目立つ小型のフグ(Parazelsus, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons)

どこに、どれくらいの毒か

肝臓や卵巣に多い

フグの毒は、体のどこにでもあるわけではありません。多くは、肝臓や卵巣などの内臓にたまっています。種によっては、皮ふや筋肉に毒がある場合もあります。どこに毒があるかは、フグの種類しだいです。だからこそ、素人が見分けて食べるのはとても危険です。

青酸カリよりずっと強い

テトロドトキシンは、自然界でも指折りの強い毒です。同じ重さで比べると、青酸カリの約1000倍もの強さともいわれます(諸説あります)。この毒は神経に作用し、しびれや呼吸の麻痺(まひ)を引き起こします。今のところ、効き目を消す特効薬はありません。フグの毒が「こわい毒」として知られるのは、このためです。

毒はどこから来るのか

もとは海の細菌から

じつは、フグは自分の体で毒をつくっているわけではありません。毒のもとは、海の中にいる細菌がつくり出しています。その細菌を持つ生きものを食べることで、毒が体にたまっていきます。食物連鎖を通じて、少しずつフグの内臓に集まっていくのです。フグ自身は、その毒に強い体を持っているため平気です。

毒のないフグもつくれる

毒が食べもの由来なら、毒を持たせない育て方もできます。実際に、毒のもとを含まないえさで育てる養殖の研究が進んでいます。こうして育てたフグは、毒をほとんど持たないことが分かっています。「無毒のフグ」は、この考え方から生まれたものです。ただし安全の管理はきびしく、扱いには専門の知識が欠かせません。

だから、調理には免許がいる

フグを料理して出すには、専用の免許が必要です。毒のある部分を正しく取り除く、確かな技術が求められるためです。とくに毒の強い肝臓は、店で出すことが禁じられています。家庭で釣ったフグを自分でさばくのは、たいへん危険です。安全に味わうには、必ず資格を持つ人の手を通すことが大切です。

4本の歯と、貝を割る力

名前の由来にもなった歯

フグの口の中には、くちばしのような丈夫な歯があります。上下に2枚ずつ、あわせて4枚の板のような歯が並びます。この歯は一生のび続けるため、硬いものをかんで削る必要があります。学名の「4つの歯」も、この特徴から付けられました。じょうぶな歯は、フグの暮らしを支える大切な道具です。

おもなえさは、貝やエビ

フグは、貝やエビ、カニなどを好んで食べます。丈夫な歯で、硬い貝の殻もかみ割ってしまいます。海底の小さな生きものを探しながら、ゆっくりと食べ歩きます。種類によっては、藻などの植物を食べるものもいます。硬い殻を割れる歯こそ、フグの食を広げる強みです。

いろいろなフグ

黄色いフグ
鮮やかな黄色のフグ。丸い体と小さな口が目立つ(NOAA Fisheries/Nate Hayes, Public domain, via Wikimedia Commons)

トラフグ ― 食用の王様

トラフグは、食用として最も高く評価されるフグです。身のうまみが強く、料理店では高級食材としてあつかわれます。肝臓などに強い毒を持つため、調理には資格が欠かせません。天然ものは数が少なく、養殖もさかんに行われています。冬が旬とされ、鍋や刺身で親しまれてきました。

クサフグ ― 身近な毒フグ

クサフグは、日本の海辺でよく見られる小型のフグです。堤防釣りで、狙っていないのに釣れることも多い魚です。小さくても強い毒を持つため、食べてはいけません。初夏から夏にかけて、大群で浜に押し寄せて産卵する姿が知られています。身近ながら、あなどれない毒フグの代表です。

ハリセンボン ― とげの多い近縁

ハリセンボンは、全身のとげで知られるフグの近い仲間です。フグ科とは別のハリセンボン科に分けられます。ふくらむと、体じゅうのとげがいっせいに立ちます。名前は「千本」ですが、実際のとげは約370本とされます。多くは、フグ科のような強い毒は持たないと考えられています。

ハコフグ ― 四角い体の仲間

ハコフグは、箱のように四角い体を持つ仲間です。硬い甲羅のような皮におおわれ、体はふくらみません。驚くと、皮ふから毒を出して身を守るとされます。黄色に黒い点のある幼魚は、観賞魚としても人気があります。同じ「フグ」でも、姿や身の守り方はさまざまです。

参考

  • Wikipedia(英語版)「Tetraodontidae」(分類・毒・膨張のしくみ・食性)
  • Wikipedia(日本語版)「フグ」「トラフグ」「ハリセンボン」(種類・食用・生態)
  • 各水産研究機関・保健所の資料(テトロドトキシン・無毒化研究・免許制度)

画像出典

サムネイル画像: Bruxton, Public domain, via Wikimedia Commons

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