フグは、危険がせまると体をまん丸にふくらませる魚です。多くの種が、体の中にテトロドトキシンという強い毒を持っています。日本では高級な食材として親しまれますが、調理には専用の免許が必要です。世界には多くの種類のフグがいます。
分類と学名
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:条鰭綱 Actinopterygii
- 目:フグ目 Tetraodontiformes
- 科:フグ科 Tetraodontidae(トラフグなど)
- おもな属:トラフグ属 Takifugu など
和名・英名
- 和名:フグ(河豚)
- 英名:Pufferfish(ふくらむ魚)
名前の由来
フグ科の学名 Tetraodontidae は、ギリシャ語の「4つの歯」に由来します。上下に2枚ずつ、くちばしのような丈夫な歯を持つことにちなみます。漢字の「河豚」は、ふくらんだ姿やブーブーと鳴く声を豚に見立てた名とされます。英名の pufferfish も、「ふくらむ魚」という意味です。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 種による。多くは数cm〜数十cm(50cmを超える種も) |
|---|---|
| 分布 | 世界の暖かい海が中心。淡水にすむ種もいる |
| 生息環境 | 浅い海・岩礁・干潟など。一部は川や湖 |
| 食べもの | 貝・エビ・カニ・藻など(丈夫な歯で殻を割る) |
| 毒 | 多くの種がテトロドトキシン(おもに肝臓・卵巣) |
| 人との関わり | 日本では高級食材。調理には免許が必要 |
なぜふくらむのか

水を吸って、ボールになる
胃をふくらませるしくみ
フグは、口から一気に水を吸いこんで体をふくらませます。ふくらむのは胃の一部で、ゴム風船のようによく伸びる作りです。フグには肋骨(ろっこつ)や腰の骨がなく、体を大きく広げられます。数倍の大きさのボールになることで、敵に食べられにくくなります。多くの種は皮ふにとげを持ち、ふくらむと外に立つものも。
危険が去れば、もとに戻る
ふくらんだフグは、危険が去ると水をはき出してもとに戻ります。ふくらんだままになってしまうわけではありません。ただし、水の外で空気を吸いこんでふくらむと、うまく戻れないことがあります。むやみに驚かせてふくらませるのは、フグの体に負担をかける行為です。ふくらむのは、あくまで最後の防御手段なのです。
泳ぎが遅いのを補う武器
フグは、体のわりに泳ぎが上手ではありません。小さなひれを細かく動かし、ゆっくりと泳ぎます。すばやく逃げられないぶん、ふくらむ体と毒が身を守る武器になります。動きは遅くても、その場で向きを変えるような細かい動きは得意です。じっくり獲物に近づいて食べる暮らしに、この泳ぎ方は合っています。
強い毒、テトロドトキシン

どこに、どれくらいの毒か
肝臓や卵巣に多い
フグの毒は、体のどこにでもあるわけではありません。多くは、肝臓や卵巣などの内臓にたまっています。種によっては、皮ふや筋肉に毒がある場合もあります。どこに毒があるかは、フグの種類しだいです。だからこそ、素人が見分けて食べるのはとても危険です。
青酸カリよりずっと強い
テトロドトキシンは、自然界でも指折りの強い毒です。同じ重さで比べると、青酸カリの約1000倍もの強さともいわれます(諸説あります)。この毒は神経に作用し、しびれや呼吸の麻痺(まひ)を引き起こします。今のところ、効き目を消す特効薬はありません。フグの毒が「こわい毒」として知られるのは、このためです。
毒はどこから来るのか
もとは海の細菌から
じつは、フグは自分の体で毒をつくっているわけではありません。毒のもとは、海の中にいる細菌がつくり出しています。その細菌を持つ生きものを食べることで、毒が体にたまっていきます。食物連鎖を通じて、少しずつフグの内臓に集まっていくのです。フグ自身は、その毒に強い体を持っているため平気です。
毒のないフグもつくれる
毒が食べもの由来なら、毒を持たせない育て方もできます。実際に、毒のもとを含まないえさで育てる養殖の研究が進んでいます。こうして育てたフグは、毒をほとんど持たないことが分かっています。「無毒のフグ」は、この考え方から生まれたものです。ただし安全の管理はきびしく、扱いには専門の知識が欠かせません。
だから、調理には免許がいる
フグを料理して出すには、専用の免許が必要です。毒のある部分を正しく取り除く、確かな技術が求められるためです。とくに毒の強い肝臓は、店で出すことが禁じられています。家庭で釣ったフグを自分でさばくのは、たいへん危険です。安全に味わうには、必ず資格を持つ人の手を通すことが大切です。
4本の歯と、貝を割る力
名前の由来にもなった歯
フグの口の中には、くちばしのような丈夫な歯があります。上下に2枚ずつ、あわせて4枚の板のような歯が並びます。この歯は一生のび続けるため、硬いものをかんで削る必要があります。学名の「4つの歯」も、この特徴から付けられました。じょうぶな歯は、フグの暮らしを支える大切な道具です。
おもなえさは、貝やエビ
フグは、貝やエビ、カニなどを好んで食べます。丈夫な歯で、硬い貝の殻もかみ割ってしまいます。海底の小さな生きものを探しながら、ゆっくりと食べ歩きます。種類によっては、藻などの植物を食べるものもいます。硬い殻を割れる歯こそ、フグの食を広げる強みです。
いろいろなフグ

トラフグ ― 食用の王様
トラフグは、食用として最も高く評価されるフグです。身のうまみが強く、料理店では高級食材としてあつかわれます。肝臓などに強い毒を持つため、調理には資格が欠かせません。天然ものは数が少なく、養殖もさかんに行われています。冬が旬とされ、鍋や刺身で親しまれてきました。
クサフグ ― 身近な毒フグ
クサフグは、日本の海辺でよく見られる小型のフグです。堤防釣りで、狙っていないのに釣れることも多い魚です。小さくても強い毒を持つため、食べてはいけません。初夏から夏にかけて、大群で浜に押し寄せて産卵する姿が知られています。身近ながら、あなどれない毒フグの代表です。
ハリセンボン ― とげの多い近縁
ハリセンボンは、全身のとげで知られるフグの近い仲間です。フグ科とは別のハリセンボン科に分けられます。ふくらむと、体じゅうのとげがいっせいに立ちます。名前は「千本」ですが、実際のとげは約370本とされます。多くは、フグ科のような強い毒は持たないと考えられています。
ハコフグ ― 四角い体の仲間
ハコフグは、箱のように四角い体を持つ仲間です。硬い甲羅のような皮におおわれ、体はふくらみません。驚くと、皮ふから毒を出して身を守るとされます。黄色に黒い点のある幼魚は、観賞魚としても人気があります。同じ「フグ」でも、姿や身の守り方はさまざまです。
参考
- Wikipedia(英語版)「Tetraodontidae」(分類・毒・膨張のしくみ・食性)
- Wikipedia(日本語版)「フグ」「トラフグ」「ハリセンボン」(種類・食用・生態)
- 各水産研究機関・保健所の資料(テトロドトキシン・無毒化研究・免許制度)


