ピラニアは、するどい歯をもつ南米の淡水魚です。「人を襲う獰猛(どうもう)な魚」というイメージで知られます。しかし実際の多くは臆病で、弱った魚や腐肉、木の実まで食べる雑食性です。もっとも有名なのは、腹の赤いアカハラピラニアです。
分類と学名
ピラニアは、一つの種ではなく、いくつもの属を含む魚のまとまりの呼び名です。すべてカラシン目に属し、観賞魚として人気のテトラとも近い仲間です。ここでは、代表的なアカハラピラニアを中心に紹介します。
分類階層
- 界:動物界 Animalia
- 門:脊索動物門 Chordata
- 綱:条鰭綱 Actinopterygii
- 目:カラシン目 Characiformes
- 科:セルラサルムス科 Serrasalmidae
- 属:ピゴケントルス属 Pygocentrus など
- 種:アカハラピラニア Pygocentrus nattereri(代表種)
和名・英名
- 和名:ピラニア(代表種はアカハラピラニア)
- 英名:Piranha(代表種は Red-bellied piranha)
名前の由来
ピラニアという名前は、南米の言葉で「歯のある魚」を指すとされます。数十種が知られ、腹の赤いものや黒っぽいものなど、姿はさまざまです。木の実や種を主に食べる、おとなしい仲間もいます。現地の先住民は、ピラニアのするどい歯を、刃物や道具として使ってきました。
大きさ・分布などの基本データ
| 大きさ | 全長 約20〜30cm(大きいもので50cm近く) |
|---|---|
| 体重 | 大きいもので3kgほど |
| 分布 | 南米(アマゾン川・パラグアイ川などの流域) |
| 生息環境 | 暖かい川・湖・氾濫原 |
| 食べ物 | 魚・昆虫・貝・木の実・腐肉など(雑食) |
| 寿命 | 10年以上になることもある |
| 保全状況 | アカハラピラニアは IUCN: LC(軽度懸念) |
するどい歯をもつ体
ピラニアの最大の特徴は、するどい歯です。深く平たい体つきとあわせて、見た目に迫力があります。全長は20〜30cmほどで、大きな種でも50cm近くにとどまり、イメージほど大きな魚ではありません。

かみ切る歯
三角の歯がかみ合う
上と下のあごには、三角形のするどい歯が一列に並んでいます。上下の歯がかみ合い、はさみのように肉を切り取ります。前に出た下あごと強いあごの力で、硬いものにもかみつけます。体の大きさのわりに、かむ力がとても強いことも分かっています。
抜けても生えかわる
ピラニアの歯は、すり減ったり欠けたりしても新しく生えかわります。歯はブロックのようにまとまって交換されることが知られています。いつもよく切れる歯を保つためのしくみです。
音を出す魚
ピラニアは、体の中の浮き袋をふるわせて音を出します。犬がほえるような低い音で、相手を威嚇するときや、餌を取り合うときに聞かれます。網でつかまえたときにも、こうした音を立てることがあります。こうした音は、水の中でよく伝わり、仲間どうしのやりとりの合図になっていると考えられています。
「獰猛」というイメージ
ピラニアには恐ろしい魚のイメージがありますが、その多くは誤解に基づいています。ふだんの姿は、イメージとはかなり違います。

群れは身を守るため
天敵から守る群れ
ピラニアは、しばしば群れをつくって泳ぎます。この群れは、獲物をおそうためではありません。カワイルカやカイマン、ピラルクという大きな魚など、ピラニアを食べる天敵から身を守るためだと考えられています。数が多いほど、一匹あたりが襲われる危険は小さくなります。群れは、数十匹の大きなものになることもあります。
協力して狩るわけではない
群れで大きな獲物をおそうように語られることもありますが、ふだんは協力して狩りをするわけではありません。多くのピラニアは、それぞれが小さな魚や虫、木の実などを食べています。集団でおそうのは、乾季に水が減り、餌が乏しくなったときなどに限られるとされます。血のにおいや水しぶきに引き寄せられることはありますが、群れが一斉に大きな獲物へおそいかかる場面は、実際にはめったに見られません。
ルーズベルトの逸話
囲いの中の演出
ピラニアの恐ろしいイメージが広まるきっかけの一つが、アメリカの元大統領ルーズベルトの旅行記です。牛が一瞬で食べつくされるようすが描かれました。しかしこれは、現地の案内人が飢えさせたピラニアを囲いに入れて見せた、演出だったとされます。
ふだんは腐肉も食べる
実際のピラニアは、弱った魚や死んだ動物を食べることが多い魚です。その役割は、陸のハゲワシに近いといえます。健康な大きな動物を進んでおそうことは、ふつうはありません。ふだんの川では、泳ぐ人がおそわれることはほとんどありません。人がかまれる例はまれで、多くは足元にいた個体を踏んだ場合などに限られます。
アマゾンでの暮らし
ピラニアは、南米の暖かい川や湖に住んでいます。季節によって、食べ物や暮らし方が変わります。水は茶色く濁っていることが多い環境です。ピラニアは目だけでなく、においや音、水の動きも感じ取って暮らします。おもに昼間に活動し、朝や夕方に活発に餌を探します。

雑食の食生活
ピラニアは肉だけを食べるわけではありません。魚や昆虫のほか、貝や木の実、水草なども口にします。雨季で水が豊かな時期には、植物や虫を多く食べます。落ちてきた果実や種をかじる姿も見られます。野生では、ほかの魚のヒレやうろこをかじって食べることも多いと分かっています。水没した林では、木から落ちた果実や種を食べ、種を遠くへ運ぶ役目も果たしています。餌の少ない乾季には、弱った魚などを狙う機会が増えます。
卵を守る繁殖
繁殖は、水がふえる雨季にさかんになります。雨季には森が水につかり、ピラニアは水没した林の中まで入りこみます。オスは浅い水草地の底に巣をつくり、メスがそこへ卵を産みます。メスが一度に産む卵は、数千個にもなるとされます。親は巣のそばを離れず、卵を守ります。ふだんはおとなしいピラニアも、巣を守るときには近づくものを追い払います。かえった稚魚は、しばらく水草の間に隠れて育っていきます。
近縁のパクー
ピラニアには、パクーと呼ばれる近い仲間がいます。パクーは同じセルラサルムス科の魚で、するどい歯ではなく、人の歯のような平たい歯をもっています。おもに木の実や種を食べる植物食で、大きいものは1mを超えます。同じ仲間でも、食べ物の違いによって歯の形が大きく異なります。パクーは日本でも飼われることがあり、大きく育つ魚として知られています。
人とのかかわり
ピラニアは、その姿と名前から、映画や物語にたびたび登場してきました。日本でも、観賞魚として飼われています。南米では食用の魚でもあり、スープや焼き魚にして食べられています。
飼育される魚として
アカハラピラニアなどは、観賞魚として流通しています。よく育つと30cm近くになるため、大きな水槽で飼われます。するどい歯があり、素手で扱うのは危険とされます。飼えなくなった個体が川や池に放されると、生態系を乱すもとになります。実際に、飼育個体が野外に定着した例も報告されています。群れで飼うと弱った個体が仲間に食べられることもあり、単独で飼われる場合も多い魚です。
いろいろなピラニア
飼育されるピラニアには、いくつもの種類があります。腹の赤いアカハラピラニアのほか、体の黒っぽい種や、鼻先の形が変わった種なども知られています。同じピラニアでも、種によって大きさや気性は違います。木の実を主に食べる、おとなしい仲間もいます。
参考
- Red-bellied piranha(en.wikipedia.org)分類・食性・群れ・発音・繁殖・ルーズベルトの逸話
- IUCN Red List「Pygocentrus nattereri」分布・保全状況
- FishBase「Pygocentrus nattereri」大きさ・生息環境
画像出典
- アイキャッチ・横の写真:H. Zell / Gregory Moine, CC BY-SA 3.0・CC BY 2.0, via Wikimedia Commons(Pygocentrus nattereri)
- 正面の顔:MatthewHoobin, Public domain, via Wikimedia Commons(Red-bellied piranha, Bolton Aquarium)
- 群れの写真:Cliff, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons(Red-bellied Piranha)


